F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点で2月18日~21日に行われた第1回F1プレシーズンテストの全チーム状況を分析。2019年からホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)を搭載するレッドブル、そして今年も激しい優勝争いが予想されるメルセデスとフェラーリはどのような状況だろうか。
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■メルセデス ☆☆☆
ベストタイム:6位/1分17秒857(バルテリ・ボッタス/C5) 周回数:1位(610周)
2019年も4日間ともに同じプログラムで、ルイス・ハミルトンとボッタスのふたりを午前/午後に起用。
3日目にフルレース走行を実施、最多周回数をこなした。4日目は2018年と異なり、新ピレリタイヤのC4とC5でショートラン(※C1タイヤが最もハード、C5が最もソフト寄り)。ハミルトンがC4の最速1分17秒977を出し、C5(ハイパーソフト)を装着も9コーナーでミス。タイムアップならなかった。非常に珍しい。
“本気モード”で攻めた次元でリヤのナーバス挙動が現れた。メルセデスの新車W10で最も配慮したのはリヤタイヤのマッチング改善だが、パフォーマンスランで課題が判明。これを次回いや開幕までにエンジニアがどう解決するか……。プレシーズンテスト1回目は、昨年対比で「マイナス発進」に。
■フェラーリ ☆☆☆☆☆
ベストタイム:8位/1分18秒046(シャルル・ルクレール/C3) 周回数:2位(598周)
初日テスト開始からわずか3時間半、速攻でタイムを記録したフェラーリの新車SF90。C3でセバスチャン・ベッテルが1分18秒161をマーク、昨年のPPタイム1分16秒173に1.988秒差。衝撃が走った。
翌日ルクレールは1分18秒046、それからはよりソフトなスペックを履かずファイン・セッティングに専念。
まるでメルセデスのような進め方に、技術者である新代表マッティア・ビノットの指導力を感じる。コース上のSF90は“オン・ザ・レール”挙動でセミロングランの平均ペースも安定。
新鋭ルクレールはセクタータイムがばらついたが自己修正し、落ち着いたデビュー。次回テストのパフォーマンスランを注視したい。
■レッドブル・ホンダ ☆☆☆☆☆
ベストタイム:15位/1分18秒780(ピエール・ガスリー/C3) 周回数:5位(475周)
このデータを見る限り、抜きん出た印象はないかもしれない。だがベストタイムはセミロングラン中に記録、まったくショートランをしていない。
最終日に15周スティント走行をフェラーリのルクレールと同じように実施、1分22秒台ペースは同等。
両車の燃料重量は不明だが、レッドブルRB15&ホンダ製パワーユニットのポテンシャルは評価できる。
テスト前半は昨年のカナダGP仕様リヤウイングで後半から新仕様に替え、さらなるエアロアップデートを次回に予定。それもあり、今回はまずホンダPUとの“融合性”を実走テストしたと思える。マックス君、お楽しみはこれからだ……。
■ホンダのライバル、ルノーは新パワーユニットを次回テスト
■ルノー ☆☆☆
ベストタイム:1位/1分17秒393(ニコ・ヒュルケンベルグ/C5) 周回数:7位(433周)
明らかにホンダPUを意識、19年新パワーユニットでのタイムにこだわり、C5でトップ。ニコ・ヒュルケンベルグのセクター1と2は2番手、セクター3が最速、しかしその後コース上にストップ。
最終日は周回が延びず計58周、ロングランに移行できない原因があった。トータル信頼性はもうひとつ、なお次回に新バージョンのPU(MGU-K改:運動エネルギー回生システム)を持ち込むようだ。
■ハース ☆☆☆
ベストタイム:13位/1分18秒563(ロマン・グロージャン/C3) 周回数:8位(384周)
3日目までは周回数が少なく、電気系トラブル対策に追われたものの最終日にふたりともプログラム完了。
C3でのベストタイムは最速ルクレールの0.5秒落ち、ポテンシャルの一端を示す。
次回、マイナートラブルなく進めたら、アルファロメオとの“フェラーリ分家争い”が見もの。
■マクラーレン☆☆☆
ベストタイム:10位/1分18秒431(ランド・ノリス/C4) 周回数:6位(445周)
前半2日間にC4を装着し一気に2番手タイムに躍進、話題になったが3日目から大幅なセッティング変更。
フルモデル・チェンジされた新車MCL34のシステムチェックなど、確認を重ねた。得意コースでカルロス・サインツJr.が次回、どこまで上げてくるか?
■レーシングポイント☆☆
ベストタイム:18位/1分19秒664(ランス・ストロール/C2) 周回数:9位(248周)
2018年マシンを新規定仕様に合わせたRP19、スペアパーツなどが充分ではなく走行も抑え気味。これから第2回目のプレシーズンテスト → 開幕戦オーストラリアとアップデートが2段階ありそう。今回はシェイクダウンに終始した。
■トロロッソ・ホンダは、Bリーグトップで戦える位置か
■アルファロメオ☆☆☆☆
ベストタイム:4位/1分17秒762(キミ・ライコネン/C5) 周回数:3位(507周)
ザウバー改め新生アルファロメオでキミ・ライコネンが3日目に一時トップタイム。高速セクター1が速く、好感触を得られた。255周したアントニオ・ジョビナッツィも学習中ながらC3で11番手タイム、中団チームでの争い“Bリーグ戦線”に名乗りを上げた伝統アルファロメオ。
■トロロッソ・ホンダ ☆☆☆☆
ベストタイム:2位/1分17秒637(アレクサンダー・アルボン/C5) 周回数:4位(482周)
ホンダPUの2チーム供給効果がさっそく反映された。本家は初ホンダ製パワーユニットの理解に没頭、2年目のトロロッソが実質的なオペレーションを行い、ロング&ショートランで有意義なデータを収集した。
3日目の1にダニール・クビアト、昨年フェラーリでシミュレーション担当した彼のノウハウが参考になったのではないか。
F1処女走行アレクサンダー・アルボンは2番手タイム、セクター1が最速21秒839で、昨年のハミルトンに+0.314秒、ガスリーとの比較だとマイナス0.280秒だ。昨年のスペインGP予選にあてはめるとアルボンは、BリーグのPP7番手タイムに相当。さらなる接戦が予想されるなか、ロングランに磨きをかけたい。
■ウイリアムズ ☆
ベストタイム:10位/1分20秒997(ジョージ・ラッセル/C3) 周回数:10位(88周)
2日遅れのシェイクダウンに論評は控え、超ハードワークで奮闘努力したチームワークを称えよう。テスト後も居残り金曜にフィルミングランを実施、第2回目テストの8時間×4日=32時間が残されたカウントダウン・タイムだ。