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アメリカはラッパーが殴り合うゲームを出すべきだーー『Def Jam』シリーズ続編への期待

2019年02月24日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

 日本でキムタクが殴り合うゲームが出ている今こそ、アメリカはラッパーが殴り合うゲームを出すべきだ。何の話かと言うと、早く『Def Jam』シリーズの続編を出してくれという話である。既に3作品が出ている同シリーズだが、今回はその中でも個人的に特に推したい『Def Jam: Fight for NY』(2004年)を中心に、同シリーズの魅力と今後への期待を語っていきたい。


(参考:人生を見つめ直すきっかけに……自分探しタップゲーム『ALTER EGO』が教えてくれること


 ……と、その前にまずDef Jamとは何か? を簡単に説明しよう。Def JamはHIP-HOP系ミュージシャンが集うレコードレーベルである。古くはLL COOL J、Public Enemyなどを擁し、現在も伝説的ラッパーのNasやスッカリお騒がせセレブとしてもおなじみのKanye Westと言った、有名どころが所属している。ざっくり言うなら、HIP-HOP、とりわけラッパーに強いレーベルだ。そして今回ご紹介しする『Def Jam: Fight for NY』はDef Jamの人たちがFightする、つまりラッパーが戦う対戦格闘ゲームである。もちろん、ここで言う「ラッパー」とは実在するラッパーのことだ。


 我々日本人には『たけしの挑戦状』(86年)という金字塔のせいか、「芸能人のゲームってヤベェな」という認識がDNAレベルで刻み込まれている。しかし、このゲームに関しては心配無用。開発は『バーチャル・プロレスリング』シリーズや、『プリパラ』シリーズを手掛けている日本のゲーム会社シンソフィア(当時の名前はアキ)であり、格闘ゲームとして極めて高いクオリティに仕上がっている。操作性はいいし、カッコいいものからギャグに振ったものまで、必殺技が決まった時はとにかく気持ちがいい。また昇竜拳をマトモに出せない筆者でも爽快にストーリーモードを全クリアできたので、たぶん誰がやっても楽しくプレイできるはずだ。主人公のキャラメイクも充実しており、対戦格闘ゲームとしてシッカリしているのは間違ない。そんなわけで単体のゲームとして高い完成度の本作であるが、やはり白眉は実在のラッパーが出てくる点だ。序盤で仲間になるICE T、ラスボスとして立ち塞がるスヌープドッグ! この業界での超大物である彼らと拳を交え、「お前やるじゃん」と認められると単純にテンションが上がる。ある意味での夢女子的な快感があると言っていいだろう。


 そんな『Def Jam』シリーズであるが、何故に今さら10年以上前の本作の話をしたかと言うと、去年の夏、Def Jamがシリーズ新作を匂わせるコメントが出したのに、今日まで何も続報がないからである。Def Jam公式Twitterが意味深に1作目に当たる『Def Jam Vendetta』(03年)の画像と、「今作るなら誰がいいかな?」的な呟きをしたのだ。これはもう作るしかないだろうと思っていたら、何もないまま年が明けてしまった。


 アメリカのDef Jam関係者がこれを読んでいる可能性も0ではないだろう。私は今、この場を借りてDef Jamの新作を作ってくれと叫びたい。シリーズの最新作は『Def Jam: Icon』(07年)で止まっている。正直『Icon』は微妙な出来であり、『Fight for~』のような完成度の高い新作をプレイしたい。ゲームの技術はあの頃よりさらに進化しているし、ラップのシーンも大きく変わった。ラップはポップチャートを賑わせ、面白い(キャラの立った)ラッパーが次々と登場している。「逆に今作らなかったら、いつ作るの?」というレベルだ。


 とにかく色々なラッパーとゲームの中で遊んでみたい。たぶん大物のEMINEMやKendrick Lamarも、頑張って頼めば引き受けてくれるだろう。EMINEMさんはスーパーパワーを得て警備員と格闘するMVを作っていたし、Kendrick Lamarもテイラー・スウィフトと組んだMVでは、楽しそうに謎の女スパイ特訓場の関係者を演じていた。こういうゲームに一定の理解はあるはずだ。あと50CENTにも声掛け必須。彼は『50セント: ブラッド・オン・ザ・サンド』(09年)というゲームに主演しているので、たぶん引き受けてくれるだろう(50CENTがライブ先の中東でギャラを盗んだ犯罪組織を壊滅させるアクションゲーム。なかなか面白かった)。


 また『Fight for』では女性ラッパーの数が少なかったが、そこのところの補強もお願いしたい。たとえばNicki MinajやCardi B、そしてNicki Minajと壮絶なビーフを繰り広げたRemy Maも呼んであげてほしい(師匠格のFat Joeは既に出ているし)。彼女らは全員ド派手な見た目で、それぞれのスタイルがある。格闘ゲーム映えするのは間違いないだろう。あと普通にLL COOL Jの参戦も期待したい……と、こういう話を始めるとキリがない。今は期待を込めて新作を待つしかない。もう向こうの人もツイートしたことを忘れているかもしれないが、それでも……アメリカのDef Jamさん、僕の声はキミに届いているかい?


(加藤よしき)