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ホンダ山本部長インタビュー:後編「今はフェラーリが速いですが、今年はF1の力関係が大きく変わるシーズンになるかもしれません」

2019年02月24日 10:01  AUTOSPORT web

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「今年は背水の陣の気持ちで臨む」と語ったホンダの山本雅史部長。F1専任となった今年、レッドブル・ホンダはどんなリザルトを残すのか。
2016年からホンダのレース活動全般を牽引し、F1でもトロロッソ、そしてレッドブルとの提携の立役者である山本雅史モータースポーツ部長が、4月1日付で部長職を離れることが明らかになった。ただし、山本部長はモータースポーツ部には残り、今後はF1活動に専念することになるという。前編のインタビューに続いて、後編では国内カテゴリーを離れることについての感想と、レッドブル側の開発の背景を聞いた。

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──山本部長が人事異動で部長職を離れてF1専任になることで、国内カテゴリーではホンダが弱体化してしまう懸念はありませんか。

山本雅史モータースポーツ部長(以下、山本部長)::レースというのは、かなり前の段階からチーム体制やドライバー選定など、ベーシックな部分を仕込んでおくものなんですね。その意味では少なくとも今年についてはもう出来上がっていますから、そんなに心配してません。

──新しくモータースポーツ部部長に就任する清水宏さんはモータースポーツに関しては門外漢ということですが、そうなると課長職のみなさんが情報を伝えて、アドバイスすることになるという形になるのでしょうか?
山本部長:そうでしょうね。その上で、清水が決断を下すことになります。

──改めて伺いますが、清水新部長はF1にはいっさい関わらない?
山本部長:いっさいというか、モータースポーツ部長としてのマネージメントはあくまで清水です。たとえば僕がF1で出張に行く時の決済などは清水が承認します。でも、F1活動を具体的にどうしていくかは、僕の裁量に任せてもらえると思っています。社長からも、そう言われています。

 清水はたしかにモータスポーツの経験はないですが、世界各地の現地法人の中では一番、F1を活用してくれている社長なんですね。もちろん、メキシコという場所柄もあります。3年前に初めて向こうで会った時も、「どんどんやりましょう」と言ってくれて、おおいに意気投合しました。非常に明るくて、アグレッシブに前に進んでいくタイプです。

──メキシコ駐在は3年間?
山本部長:いえ、6年はいたと思います。通常は3年ですから、かなり長かった。

──ホンダ社内で今年、レッドブルと組むことの反響を感じたりしていますか。
山本部長:すごくありますよ。たとえば出勤や退勤時にエレベーターで乗り合わせた際、知らない人からも必ず、「今年は楽しみですね」と、声をかけられますね。「ありがとうございます。応援お願いします」と返していますが、一方で今年結果が出せなかったら大変だということも重々承知してますから、背水の陣という気持ちでやっています。

──先日のロンドンでのFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)会議でレッドブルF1の(クリスチャン)ホーナー代表と会った際、「あとはホンダ次第だぞ」と言われたと聞きました。その時に比べると、今回のテストではチーム側も全然上機嫌ですよね。
山本部長:いや、特にそういうことではないんですよ。ロンドンでは僕から、「車体はどうですか?」と訊いたんですね。そうしたら「スケジュールがやや遅れてるけど、大丈夫」と答えた。「今まで以上にエイドリアン(ニューウェイ)が力を入れているから、それで遅れているんだ」と。で、そのあとに、「おれたちは完璧だから、あとはホンダ次第だ」と。でも、あくまで笑いながらですよ(笑)。とにかく今年は、本当に楽しみです。

──テストでは(マックス)フェルスタッペンの表情も明るいです。
山本部長:そうですか。それは、よかった。

──レッドブルにトロロッソ、両チームともに「ホンダはこの冬、すごくいい仕事をしてくれた」と口を揃えています。ある程度の外交辞令を差し引いたとしても、冬の間の開発の伸び代が大きかったということなのでしょうか。
山本部長:冬の間といいますか、去年の夏以降の進歩ということでしょうね。ホンダの考えた方向性が決して間違ってなかったというメッセージが、彼らにも届いたのだと思います。それが頑張ったという評価になったのでしょうね。

──あとはフェラーリやメルセデスとの、相対的な力関係ですね。
山本部長:そうですね。今のところ、フェラーリが速いですね。まだ実走が始まったばかりですが。今年はF1全体の力関係が、大きく変わるシーズンになるかもしれませんね。