2月13~17日、マレーシアのセパンサーキットで行われたミシュラン主催のスーパーGTメーカーテスト。シーズン前恒例と言えるこのテストでは、タイヤテストをはじめさまざまなメニューがこなされたが、2019年のGT500クラスの車両で注目のポイントと言える、フリックボックスに注目して3メーカーのマシンを撮影した。
2014年からDTMドイツツーリングカー選手権との共通規定が導入されたスーパーGT GT500クラス。2017年からはダウンフォース削減を目指してさらにその規定が改定されたが、外観においては基本的な理念は大きくは変わっておらず、“デザインライン”と呼ばれる、グリルから前後フェンダーと車体下部を繋いだラインから下の部分以外は、市販車の形状を保たなければならない。
この規定で争われた2017~18年を経て、2019年に向けて2018年12月にマレーシアのセパンサーキットで行われたテストから、3メーカーが新しいフリックボックスをトライした。フリックボックスは、前部バンパー開口部左右からフロントフェンダーに繋がる部分で、現行のGT500規定をはじめ、ハコ型のレーシングカーでは、非常に空力感度が高い部分と言われている。この部分でいかに効率的に空気の渦を作り、後方に流すかという重要なパーツだ。現段階では、2019年に向けて、エアロではこの部分だけを改良することができると言われている。
セパンや岡山で撮影することができた各車のフリックボックスを見ると、非常に細かい部分ながら、2018年までとは違いが見られる。3車のフリックボックスを18年モデルと比較してみよう。
■ニッサンGT-RニスモGT500
2019年に向けて捲土重来を期するニッサン陣営は、このセパンテストで3台が参加したが、テストではTEAM IMPULの12号車、KONDO RACINGの24号車、そして開発車両の230号車とも好調なタイムをマークしている。
今回のテストから3台ともに、2018年とは異なるフリックボックスを装着しているが、写真で比べてみると良く分かる。全体的にカナードが低い位置になり、フロントフェンダーへ繋がる傾斜は18年よりも急になった。また、18年まではあったこの部分の空気を外に逃がすような溝はなくなっている。
また、上から1枚目と2枚目の間隔は少なくなり、さらに下部にはもう1枚カナード状のものが追加されているのが分かる。
■ホンダNSX-GT
タイトル防衛を目指すホンダNSX-GTは、岡山国際サーキットでのメーカーテストでも確認できたとおり、フェンダーへ向けフィンを立てた新たな形状のものが投入されたが、セパンでは参加した4台がともに新しい形状だったものの、いくつかバージョンがあった様子だ。
また、岡山テストでは上部のカナードが3枚に分かれたものがあったが、セパンでは1枚のままののもの、3枚に分かれていたものと2種類があった。最終的な仕様はまだ確定していないのか、パーツがまだ台数分揃っていないのかは分からないが、開幕に向けてどう形が決まるのか、興味深いところだろう。
■レクサスLC500
レクサスは、岡山テストでも今回のセパンでも、カナードの形状やフリックボックス自体の形状は2018年モデルと変化がないように見える。ただ、気になるのは2018年まではなかった“線”がカナードの上下に入っていることだ。
どうやら、この部分には穴が開いていたのではないかと推測される。タイヤハウス前にも何かを塞いだような跡が見受けられる。今後開幕までにどう形状が変化するのか、それともしないのか……!? 楽しみにしたいところだ。
3車ともそれぞれのアプローチをみせるフリックボックス。これにより後方の空力がより活きたり、逆にナイーブになったりという変化もあるはず。もちろん空力だけではなく、タイヤやエンジン等複雑な要素が絡み合ってGT500の戦力は決まるが、外観上でも分かる部分だけに、開幕までに注目しておきたい部分だろう。