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“残念なところ”が最大の魅力? 『はじこい』永山絢斗演じる雅志に幸あれ

2019年02月19日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 深田恭子がこじらせ塾講師・春見順子を演じる『初めて恋をした日に読む話』(TBS系、以下『はじこい』)。東大を目指すピンク髪の生徒・由利匡平(横浜流星)、離婚を機に猛アタックを開始した同級生・山下一真(中村倫也)と共に、順子を巡る四角関係を繰り広げているのが、従兄弟の八雲雅志。演じているのは、現在、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』にも出演中の永山絢斗だ。


【写真】順子と匡平を前にした雅志


 永山は、2007年にドラマ『おじいさん先生 熱闘篇』(日本テレビ系)で俳優デビューし、2010年公開の初主演映画『ソフトボーイ』で「第34回 日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞。その後もNHK連続テレビ小説『おひさま』(2011年)、『べっぴんさん』(2016年)、映画『真田十勇士』(2016年)に出演するなど、役者としての歩みを一歩ずつ着実に進めてきた。


 『はじこい』で永山が演じている雅志は、順子の従兄弟。20年以上、順子に片思いを続けているが、順子が鈍感すぎるのか、従兄弟という関係性が邪魔をしているのか、両想いになるどころか、好意に気づいてもらうことすらできずにいる役どころである。


 雅志は、東大出身の超エリート商社マン。海外土産の趣味が悪いのは玉にきずだが、優しくて、顔も良くて、仕事もできて、好きな人を一途に思い続ける雅志は、誰がどう見ても優良物件。中学時代には「7秒見つめると、女はオレを好きになる」と悩んでいたほどで、モテ男であることは間違いない。


 にもかかわらず、第1話から順子には「イケメンではない」と否定され、「運命とか宿命って、意外と身近にあるっていうか」と告白をほのめかしても、「誰か紹介してくれるの!? ありがとう」と、お礼を言われてしまう。それどころか、第3話ではバックハグからの「オレ、お前が好きだ」という最強の告白を決行するも、本気に捉えてもらえないあり様。どんなに女性にモテても、本当に好きな1人からは見向きもされないという、なんとも切ない立場だ。


 キャバクラオーナーで順子の親友・松岡美和(安達祐実)による“恋の指南”に、眉間にシワを寄せて考え込んでみたり、大きく頷き納得してみたりと、どんな時でも雅志の胸の内は、すべてが顔に書いてある。それほどまでに感情をわかりやすく体現する永山も見事だが、それを一切読み取ることをしない順子もまた、すごい。


 順子から「話したいことがある」と誘われれば、多忙ながらも「今夜はたまたま空いてる」とニヤニヤ。「運気が良くなるように」とトイレ掃除までしたのに、順子と共に現れた恋のライバル・匡平に「この上なく、効率よく頑張れ」とアドバイスまでしてしまう、どこまでも“残念な男”雅志。決して派手ではないが、素直で真面目で温厚な彼の姿を見ていると、どうか幸せになってほしいと欲しいと願わずにいられない……と、言いつつも、由利のまっすぐで熱いアプローチや、山下のちょっぴりエロティックなアプローチにもキュンキュンしてしまうのだから、女というものは。


 思えば永山は、その穏健な印象があってか、これまでにも叶わぬ恋に徹していたり、三角関係に巻き込まれていたり、“いいヤツだけど報われない”役を演じることが多かった。果たして雅志の恋は成就するのか。有り余るビジネスセンスを生かして順子を口説き落とす姿を見たいが、それがまったく想像できないのが雅志の“残念なところ”であり、彼の最大の“魅力”でもある。雅志に全力でエールを送りながら、その行方を見守りたい。


(nakamura omame)