2019年02月18日 11:31 弁護士ドットコム
24時間営業のコンビニは問題客に接触する機会も多いといえます。弁護士ドットコムニュースでは、客からの暴言や土下座強要、セクハラなどといったカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する記事を複数公開しています。
【関連記事:家に泊まったら「セックスOK」なわけじゃない、「性的同意」のライン】
記事を受けて、経験者から複数の情報提供や書き込みがあったので一部を紹介します。
地方都市で、大手コンビニのフランチャイズ(FC)加盟店を経営する50代の男性は、暴言のカスハラ体験を話してくれました。
「お母さんが目を離したすきに、小さなお子さんが売り物の酒びんを割ってしまったんです。そしたら、お母さんは『なんで、子どもの手の届く所に酒を並べているんだ』と怒り出しました」
事故が起きたとき、男性は自宅にいましたが、スタッフから呼びされ、慌てて店舗に向かいました。母親は「子どもの安全を考える気がないのか」「今すぐ売り場を変えろ」とカンカンです。
謝罪しつつも、売り場のレイアウトは変えられないことを説明しましたが、「客に向かって何ほざいてるんだ」「本部に言って、お前をクビにしてやろうか」などの暴言を浴びせられ続けました。
翌日、クレームをうけた本部の経営相談員(OFC/SV)が店舗にやってきましたが、「お店で対応してください」としか言いません。FC契約上、実態はどうであれ、本部と店舗は対等な関係。それゆえに指示・関与できないというのです。
「住所と電話番号を示されたので、電話したのですが、同じようなクレームが延々と続きました」
最後は菓子折りを持って謝りに行ったそうですが、商品を割られた店側がどうして謝らなくてはならないのでしょうか。
「ほかにも酷い話はいくつかあります」と男性は話します。
「『客のタバコも覚えられないのか』と絡んで、新人の女性バイトを泣かせた男性客がいました。番号で言ってくれないと分からないでしょう。何のために番号があると思っているのか…」
この店に限らず、タバコの注文をめぐるトラブルで暴言を吐かれたという体験談は複数見られました。
ほかにも被害のコメントが多く見られたのはタバコやアルコール類を購入するときの「年齢確認」トラブルです。「いくつに見えると思っているんだ」と怒り始める客が少なくないそうです。
システム上、年齢確認は避けて通れないそうですが、「マニュアル対応」だとして文句を言ってくるわけです。さっさと画面をタッチすれば済む話なのに、時間が惜しくはないのでしょうか。難癖をつけたいだけとしか思えません。
年齢確認をめぐっては、ときおりコンビニのレジを破壊して警察のお世話になる人もいます。たとえば、2018年7月1日に兵庫県宝塚市、2017年5月31日に愛知県豊橋市などの逮捕事例があります。
コンビニでこの手の事案が起きるのは、便利すぎて客の感覚がマヒしているからなのかもしれません。
都市部にある大手コンビニの男性オーナー(50代)は、トイレ利用について、こんな話をしてくれました。
「近所で工事をやっていたんですが、作業員が泥だらけのままウチに来て、トイレで手や顔を洗うんです。おかげで掃除が大変でした。何か買っていってくれるならまだ良いのですが、ただ用を足すだけです」
男女が個室に入ったまま出て来ない、ウォシュレットの電源を抜いて、スマホゲームをする――。迷惑行為はとどまることをしりません。注意して、お客から逆ギレされたこともありました。
結局、一部の迷惑客のせいで、トイレは閉鎖せざるをえなくなりました。人手が足りていれば、相手を見極めた上で貸すこともできるでしょう。しかし、常にそんな余裕があるわけではありません。
すると今度は「なんでトイレを使わせないんだ」と客から詰め寄られるようになりました。ネットにクレームも書き込まれ、店は困っています。
紹介した2人のオーナーは、まだ客に対抗できる人たちと言えます。しかし、そんな人ばかりとは限りません。
コンビニオーナーとみられる40代の男性は、「神様(編注:客)の声が本部に行くと、こちらが悪くなくとも怒られます。だから私は神様に対して謝ることにしています。騒ぎが大きくならない様に」と記事にコメントを寄せました。
店舗担当の本部社員との関係などにもよるのでしょうが、実際、クレームが多くなると、本部から目を付けられ、契約更新などで不利になるのではないかと考えるオーナーもいるそうです。
しかし、オーナーが毅然とした態度を取れないとなると、その下で働く一般のスタッフはもっと苦しい立場に立たされます。
弁護士ドットコムニュースでも2月に取り上げた、コンビニのセクハラ事件(平成30年11月6日最高裁第三小法廷判決)は、市職員がコンビニ店員に「胸が揺れとる。何カップや」などと声をかけたり、胸を触ったりしたという事件です。
下級審は女性が笑顔で対応していたことから、「渋々ながらも同意」があったとしましたが、最高裁で一転セクハラが認められました。
この事件では、女性がオーナーに何度も相談していたのに、オーナーは商売に差しさわるとして、しばらく対応を見送っていたという経緯がありました。
弁護士ドットコムニュースのLINE@には、コンビニ専用の派遣会社などを通じて、この数年間で100店舗超で働いたという男性店員も声を寄せてくれました。彼もオーナーや本部が守ってくれないと感じています。
「深夜ワンオペになることが多いのですが、ある日、男性客を注意したところ、逆ギレされました」
「店長を呼べ」と繰り返し怒鳴るなど、あまりにも酷いので「通報します」と伝えたところ、客は「本部に言いつけてやる」と怒って帰って行ったそうです。
翌朝、本部からクレーム報告が届きましたが、書かれている内容は男性からすると、客にとって都合が良いように脚色されていました。
店を訪れた本部社員は、ヒアリングや防犯カメラをチェックすることなく、『客に向かって警察呼ぶなんて言っちゃいかんよね』と話したそうです。店側から客に連絡するよう伝えられたといいます。
「本部はクレームを受け付けますが、対応は店任せ。『まずは謝罪しろ』という方針なんです。そこは本部がヒアリングして、本部から返してほしいです」
男性はたくさんの店舗を見てきたからこそ感じることがあるといいます。
「正当なクレームで店が悪いこともありますが、暴言が出てくるのはおかしいじゃないですか。放置したら、店がなめられていくのは当然でしょう。だからスタッフが定着せず、派遣で人手不足を穴埋めすることになるんじゃないですか」
男性はある日、街中を歩いていたとき、携帯ショップでこんな張り紙を見かけたそうです。
「店内で大声で店員に怒鳴る行為を行う者は、業務妨害行為として110番又は警備会社に通報させていただきます」
コンビニにも貼ってほしいと男性は思いました。
「お客さんが求める過剰サービスに、本部が応えすぎたおかげで、今のような状況があると思う。店長やオーナーはもちろんだけど、本部がしっかりと考えを示してほしい」
(弁護士ドットコムニュース)