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世界最大級の楽器見本市『NAMM Show 2019』開催 注目新製品をピックアップ

2019年02月17日 15:41  リアルサウンド

リアルサウンド

 2019年1月24日~2019年1月28日のあいだ、カリフォルニア州アナハイムにて世界最大級の楽器見本市『NAMM Show 2019』が開催された。今年もさまざまな機材が発表され、会場を訪れた人だけでなく、ネットニュースを通じて世界中のプレイヤーやリスナーが新情報に興奮したことだろう。


(関連:KORG、Teenage Engineering…… 最新モジュラーシンセの動向を追う


 筆者も、Elektronから登場したコンパクトサンプラー「Model:samples」を予約したところだが、注目したい機材はもちろん他にいくつもある。というわけで、『NAMM Show 2019』で発表された楽器のうち、「これは!」と思ったものをチョイスしてみよう。


・MicroFreak
 ハードシンセの勢い衰えぬArturiaは、4ボイスパラフォニック可能なDCOとアナログフィルターを搭載した、ハイブリッドシンセをリリース。モジュレーションマトリックスやランダマイズ付きシーケンサーなども内蔵しており、デジタルなソースを有機的にモジュレーションできる。


 その有機性の要となるのが、接地面積に応じて電圧が変わる(プレッシャーCVも出力できる!)タッチ鍵盤だ。モジュレーションマトリクスでタッチ鍵盤をオシレーターにアサインしてやれば、接地面積に応じてピッチを変調させることもできるし、フィルターやLFOにアサインしても面白い。DCOツマミを回しながら鍵盤を触るだけで、どこまでも遊べるだろう。


・AKAI Force
 2017年リリースされたMPC Live、MPC Xに続く、AKAI第3のスタンドアローンマシン。7インチのマルチタッチスクリーンと8×8のマトリクスパッドで、PCいらずのトラックメイク、アレンジ、ライブ演奏、そしてDJプレイを実現させる。スクリーン右にあるクロスフェーダーが印象的だ。


 見慣れた4×4パッドではなくAbelton PUSHのようなルックスになったのには驚いたが、マルチに操作できるクリップスタイルになったことで演奏幅は一気に広がった。サンプリングのエディットはMPCユーザーには馴染み深いだろうし、パッドの操作感はAbletonユーザーにとっては取っつきやすいだろう。コンボジャックやファンタム電源など、端子類も手厚い。まさに、スタンドアローンだ。


・Fender American Acoustasonic Telecaster
 果たしてアコギなのかテレキャスなのか、リアクションに困るもののとても面白そうなギターがFenderより登場した。シェイプはテレキャス、ボディはホロウ。そこにアコースティック向けPUを手がけているFISHMANと共同開発した新しいアコースティックエンジンを搭載し、アコギとエレキの両方のトーンを融合したという。


 また、特許申請中のSTRINGED INSTRUMENT RESONANCE SYSTEM(SIRS)なる機構により、充分な音量も倍音的な「鳴り」も実現したとのこと。さらに面白いのは、アコギ弦もエレキ弦もOKというハイブリッドな仕様で、エレキ的な速弾きも想定されたヒールカットが施されている。試奏してみたいプレイヤーも多いのではないだろうか。


・IK Multimedia iLoud MTM
 iLoud MTMは、IK Multimediaの人気スピーカーiLoud Micro Monitorの後継として発表された。先代のiLoud Micro Monitorは非常に評価が高く、アマチュアだけでなくプロにも愛用者が多い。そんな人気モデルの後継機は、スタジオ用途まで見通したフラッグシップ仕様となった。


 構造は、3.5インチウーファーで1インチツィーターを挟んだMTMデザインを採用。ラウドさも音像の正確性もグレードアップしているようで、その響きには期待が高まる。また、自動音場補正システムARC™ Systemを内蔵しており、最適な音響特性を難なく得られる点も魅力だ。自動音場補正を手軽に味わえるという意味でも、ユニークなスピーカーといえる。


・Steinberg AXR4
 32bit Iinteger(整数)/384KHzという、凄まじい分解能で業界を驚かせたAXR4。まさに業界最高クラスのオーディオインターフェイスが登場したと言えるだろう。位置づけとしてはエントリークラスのURシリーズ、プロユースのUR-RT、その最上位であるスタジオユースに位置する。32bit float(浮動小数点)ではなく、整数であるという点に注意。


 YAMAHAのVCMテクノロジーでモデリングされたRupert Neve Designs譲りのSILK機能や、4つのプレミアムなDSPエフェクト、ソフト側でシーン設定可能なルーティングマトリクスなど、機能面の充実っぷりも抜かり無い。とかく、これだけのスペックをもったオーディオインターフェイスの登場は、これ以降の競合製品に少なからず影響を与えるだろう。


・Spectrasonics Omnisphere 2.6
 最後は、定番ソフトシンセのバージョンアップ報告で締めくくろう。9ヶ月ぶりのアップデートでより品揃えに磨きがかかった、Omnisphere。Roland Juno-106や、Alesis Andromeda、KORG Milogue xdなど、60を超えるハードシンセをサポートし、ライブラリも拡張された。


 特に強化されたのが、評価の高いアルペジエイターだ。ライブラリの強化や新機能の追加のほか、MIDIへの書き出しに対応した。アルペジエイターでMIDIを生成し、リージョンに貼り付けることができるのだ。作曲時には、大いに役立ってくれるだろう。


 NAMMで発表された機材の予約や発売も、これから順次始まる。ミュージシャンにとっては悩ましくも魅力的な季節がやって来たが、楽器店に足を運んだりレビューをチェックするなどして、逐次情報をチェックしておきたい。(ヤマダユウス型)