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「スクショも違法」の海賊版サイト対策 弁護士が指摘するネットユーザーへの影響と問題点

2019年02月15日 09:51  リアルサウンド

リアルサウンド

 文化庁の文化審議会著作権分科会が2月13日、海賊版対策をあらゆるコンテンツに広げ、ダウンロードを全面的に違法化する方針を決定。海賊版サイト『漫画村』以降の規制強化について、各メディアが大きく報じた。


(参考:漫画村がアクセス不可にーー白熱する“サイトブロッキング”論のポイントを弁護士に聞く


 海賊版の「ダウンロード違法」は、これまで音楽と映像に限られていたが、これが漫画や小説、写真や論文などすべてのコンテンツに拡大され、端末の画面を保存する「スクリーンショット」もその「ダウンロード」に含まれるとされる。一部ネットで拡散しているように「すべてのスクショが違法になる」というものではないが、今回の方針は一般のユーザーに対してどんな影響を与える可能性があるのか。エンタメ業界にも詳しい小杉・吉田・梅宮法律事務所の小杉俊介弁護士に聞いた。


 まず、「スクリーンショットができなくなる」という懸念について、小杉弁護士によれば「原則として『私的複製』は認められており、海賊版/違法にアップロードされたものをそれと知りながら保存しない限り、スクリーンショットが違法になるということはない」。しかし一方で、「こうした不安も含めて、今回の方針は消費者側の萎縮効果を狙ったものと評価されても仕方ないのではないか」と指摘する。


「2009年の著作権法改正により、私的使用目的であっても違法著作物をダウンロードすることは違法になりました(著作権法30条1項2号)。2012年には違法ダウンロードに対して刑事罰が定められましたが(著作権法120条第3項)、実際に摘発されるケースはほぼなく、やはり萎縮効果を狙ったものだと言われています。今回の方針もその流れのなかにあり、根本から方針転換した、というものではありませんが、海賊版サイトの運営元をなかなか規制できないから利用者を萎縮させる法律を作ろう、という発想ならば、批判されても仕方ありません。静止画などをダウンロードする行為全般が違法であるかのような定め方は規制範囲が広すぎ、実際の運用は結局現場の警察次第、ということになりかねず、『法の支配』という観点からも決していいものとは言えません」


 また、ネットで語られている警察の恣意的な運用に対する懸念にも、合理性があるという。


「恣意的な運用を恐れる人がいるのは、その実績があるからです。わかりやすいところでは、銃刀法違反。形式的には刃渡り何センチ以上で~という定義はありますが、簡単な刃物を持ち歩くのは珍しくないことで、警察が狙った人物を逮捕する方便として使われた例があることは否定できません。警察に抗議しに来た人のバッグの中を調べたら果物ナイフが入っていた、という理由で逮捕されてしまった件を実際に知っています。厳密に言えば著作権法に違反しているものをスクリーンショットで撮ってしまう、ということはかなり広くあることだと思いますし、著作権法もそのように運用されるようになってしまったら……という懸念を否定するのは難しいのではないでしょうか」


 もちろん、具体的な法案が出てこないうちは何とも言えない部分もあるが、リスクや正当性が十分に検討されないまま著作権法が改正されれば、多くの問題が出てくる可能性がありそうだ。


(編集部)