ACOフランス西部自動車クラブは6月15~16日、フランス・サルトサーキットで開催される2019年ル・マン24時間からセーフティカー(SC)および、フルコースイエロー(FCY)の運用方法を改訂するとしている。
2018年のル・マンでLM-GTEプロクラスのマシンがトップ争いを展開したのは序盤の数時間に過ぎなかった。レース序盤の4時間を迎えた段階でポルシェGTチームの“ピンクピッグ”カラーの92号車ポルシェ911 RSRが後続に1分以上のギャップを築くと、同マシンは大差を保ったままトップでチェッカーを受けたからだ。
このようなレース展開となったのはACOがコース上でのバトルを望み、1スティント14周、給油時間は35秒、さらに最初と最後のピットの長さまで細かく規定したことと、2番手以下のマシンにとっては不運としか言いようのなかったセーフティカーの導入が組み合わさったことが原因に挙げられる。
このことからACOは約4カ月後に控える第87回大会で、レースへの影響を最小限に抑えるFCYを最大限活用するとしている。
同時に従来のセーフティカーと、部分的にFCYのような制限速度を設けるスローゾーンを使用するとしているが、ACOのスポーティングディレクターを務めるビンセント・ボーメニルはトラック全体を80km/hに制限するFCYがより好ましい選択であることを確認した。
ボーメニルは昨年のレースについてチーム側と競技した結果、セーフティカーの導入によってクラス間で予想以上の優位性を得られないようにする安全対策の方針を変更したと説明している。
通常のサーキットよりも長い13.629kmで争われるル・マンでは、3台のセーフティカーが同時にコースに入りそれぞれが隊列を引っ張っていく。
2018年のポルシェの独走は、このセーフティカーラン中に92号車がピット作業を終えてすぐにコースに復帰できたのに対してライバルたちはピットイン後、ピットレーン出口のレッドシグナルに行く手を阻まれたことで生み出されることとなった。
「たしかに、GTEプロクラスの結果はレース序盤に導入されたSCランが大きく関係していた」とボーメニル。
「我々はこの問題を考慮し、2019年のル・マン24時間にFCYのようないくつかの新しい介入方法を取り入れることを思いついたんだ。だが、私たちはFCYをWECの他のレースとは異なる目的と考え方で使用することになるだろう」
「ル・マンではしばしばスローゾーンが用いられる。我々は近年の事例を研究し、フルコースイエローがあればセーフティカーの導入を回避することができたと結論づけた」
「短時間の作業でレースを再開させることができるインシデントにはFCYがもっとも適切な対応なんだ」
なお、ル・マン24時間でのFCYはそれ以外のレースとは異なり、基本的にはピットインが禁じられる。唯一許されているのはガス欠を回避することを目的とした5秒間の緊急給油のみとなっており、当該車両はレース再開後に通常の給油作業のためにふたたびピットに戻る必要がある。
「重大かつ複雑な状況ではSCの出動が必要となる」とボーメニル。
「この場合は(従来と同様に)3台のSCを使用した先導が比較的長い時間に渡って続けられる。レースにも影響するだろう」
「(SCを入れるほどでもない場合に出される)FCYではこれらの複雑な手順を簡略化し、可能な限り迅速に状況を解決してレースを再開させることが可能になるはずだ」
ACOはまた、SCラン中におけるピットアウト時の手順を変更し、レースが再開されたときにピットインしたクルマが直前まで属していたグループに留まれるようにしている。
「昨年、GTEプロクラスで起きたことは、レースの結果に決定的な影響を与えることになった」とボーメニルは言う。
「(昨年までは)ピット出口で次のSCの隊列を待つしかなかった」
「チームとの協議の末にこの手順は見直された。SCランの間にピット作業を行ったクルマは、次のSCの通過をピットレーン出口で待つことなくコースに戻れるように変更したんだ」
「これらのマシンがトラックに戻ればSCルールは通常と同じように運用され、SCの後ろには隊列とピットアウトしたマシンが並ぶことになる」