WTCR世界ツーリングカー・カップを筆頭に、日本でも2019年からスタートするTCRジャパン・シリーズなど、世界中で開催されるTCR規定ツーリングカー・シリーズの性能調整を行う2019年BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)テストがスタートし、その第1弾として1月28~29日にイタリア最大のカロツェリア、ピニンファリーナの風洞に各マニュファクチャラーのTCRマシンが集結した。
フェラーリの伝説的名車ディーノや、F40、F50、そしてエンツォをデザインしたピニンファリーナは、1972年にイタリア初の風洞設備を導入した企業としても知られている。
ピエモンテ州グルリアスコに位置するピニンファリーナ所有の風洞では、自動車デザインや開発作業に加えて、現在提携関係を結んでいるマヒンドラがフォーミュラEの開発作業に使用しているほか、サイクルロードレース用のロードバイクを開発するデ・ローザなども設備を活用している。
その風洞設備に12のブランドから16台のTCR規定ツーリングカーが集められ、ダウンフォースとドラッグを評価するため徹底的な初期値評価テストが進められた。その内容は全車ともにライドハイトを80mmに統一し、リヤウイングを0度、5度、-5度の3段階で評価するもの。
TCRを統括するWSC Ltd.から派遣された技術部門スタッフが監視するなか、各マシンにつき約1時間程度の所要時間で計測が進められた。
この風洞は1/1スケールとしては最先端となるローリングロードを備えた設備となっており、2019年からトラックテスト参加義務の発生する新規ホモロゲーション取得モデル、『ヒュンダイ・ヴェロスター N TCR』、『Link&Co 03 TCR』、『アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR』、『ラーダ・ベスタ・スポーツTCR』、そして『ルノー・メガーヌR.S. TCR』の5車種も無事に風洞テストを終えている。
TCR規定マシン全車は、続く2月上旬にはエンジン性能テストを受けるため、同じくモデナ近郊のORALエンジニアリングの所有するダイナモメーター・ベンチへと移動。こちらでも性能初期値の計測が行われた。
ORALエンジニアリングは、元フェラーリの技術者でランボルギーニのF1活動にも携わったマウロ・フォルギエリが参画する技術企業で、このBoPテストではダイノ内に各車両のエンジンをセットアップし、各マニュファクチャラーのエンジン技術者とともに最高出力、トルクカーブ、各回転数時のブースト圧などを計測。
エンジンはマシン搭載状態と同じワイヤリングでデータロガーとECUに接続され、基本数値を計測したのち6つの異なるエンジンマップもテスト。102.5%、100%、97.5%、95%、92.5%、そして90%の各状態でのアウトプットが算出され、これらの数値がブースト圧調整時のBoP設定に役立てられることとなる。
数日間にわたって行われるこのエンジンテストを終えると、BoPテストは最終段階のサーキット・テストへと進み、前述の5車種のみが2月17~18日にスペイン・バレンシアのサーキット・リカルド・トルモでの走行テストに臨む予定となっている。