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『3年A組』タイムリーなテーマを顕在化 心の隅に記録しておきたい、菅田将暉の重要な言葉

2019年02月11日 09:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 氾濫するSNSの投稿の中で第2部が幕を開けた日本テレビ系列土曜ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』。“殺人教師と人質の生徒”から、同じ信念を持った“共犯関係”ないしは“共闘関係”へと変化を遂げた30人の関係性。その変化のきっかけとなったのは、澪奈(上白石萌歌)を追い詰めたフェイク動画の作成を半グレ集団のベルムズに依頼したhunterという人物が、彼らが通う魁皇高校の教師だったという衝撃の事実だ。


参考:『3年A組』片寄涼太が語る、菅田将暉ら共演者と切磋琢磨する日々 「クルーとして誇りを感じてる」


 例によって柊(菅田将暉)は、同僚の教師たちの中にいるhunterに名乗り出るよう告げる。20時までに名乗り出なければ「教室を爆破する」。再び携帯電話とカバンを没収され戸惑う生徒たちの中、茅野(永野芽郁)だけはあることに気が付くのだ。それはその前日に柊が生徒たちに提案した「信じる・信じないゲーム」。メガネを掛けたときには“信じろ”で、外したときには“信じるな”。爆破を宣言した時の柊は、メガネを外していたわけだ。


 改めて今回のエピソードを見返してみると、さすがにメガネを外していたのは爆破宣言と携帯没収のくだりぐらいしかなく、次回以降のどんでん返しとなる伏線になるようなものは取り立ててない。しかし、逆の見方をするとメガネを掛けているときの発言はすべて真実というわけだ。茅野との美術準備室での対話で柊が語る「俺の目的は(犯人を捕まえた)その先にある」という言葉。そして、終盤でもメガネをかける仕草が印象的に映し出されていることから考えるに、ラストで武智(田辺誠一)がhunterであるという、柊の発言も信じて良いものかもしれない。


 そのようなちょっとした演出の遊びもさることながら、今回のエピソードはなかなかタイムリーなテーマを顕在化させていた。生徒たちのディスカッションによって犯人の最有力候補とされた水泳部の顧問・坪井(神尾佑)。彼にセクハラとパワハラを受けて水泳部を退部した過去がある水越(福原遥)は、結城(箭内夢菜)が没収されたはずの携帯電話を持っていることを知ると、坪井を告発する動画を撮影させ、SNS上に拡散させようとする。しかし結果的に、坪井が水越を退部に追いやった真実が明らかになると、水越は強い後悔と自責の念に駆られるのだ。


 その行動はすなわち、本ドラマの核となっている“澪奈を死に追いやったフェイク動画”と何ら変わりがない。見に覚えのない汚名を着せ、世間からの悪評を浴びせ、傷付け、場合によっては命さえも奪いかねない行動といえよう。「自分の言葉に、行動に責任を持て」という柊の言葉は、簡単に動画であらゆるものが記録でき、それを瞬く間に世界中に発信できる現代だからこそ生まれる、ある種の“兵器”をいかにしてトリートするべきかを問うているわけだ(奇しくも、若者の無軌道な動画投稿が大きな問題となっている最中ということも相まって、なおさらタイムリーに映る)。


 とはいえそのテーマ性に関してだけ言えば、すでに澪奈のドーピング疑惑を捏造したフェイク動画の存在だけでも事足りる。今回の動画の持つ意味は、また少し性質が異なるのだろう。悪意を持って相手を陥れるためのフェイク動画に対し、水越の動画は自分が知っているわずかな知識や一方的な解釈だけで、それが正しいと思い込んで結果的に相手を陥れてしまう、悪意のない動画だ。もしかすると現代ではそちらの方が多いのかもしれない。そういった点では、今回の柊の言葉は実に重要で、心の隅に記録しておきたいものだ。「上辺だけで物事を見るな。本質から目を背けるな。Let’s think」。(久保田和馬)