トップへ

EA発のバトルロイヤルゲーム『Apex Legends』好調にスタート フォートナイトの覇権を脅かせるか?

2019年02月09日 12:51  リアルサウンド

リアルサウンド

 海外の大手ゲーム・パブリッシャーのElectronic Arts(略称:EA)は、5日、基本プレイ無料の新作バトルロイヤルゲーム『Apex Legends』をリリースした。同ゲームはバトルロイヤルゲームで世界を席巻しているあのゲームに対して明確な差別化をしていることから、同社がこのジャンルにおける成功を強く望んでいることがうかがえる。


(参考:露骨な贋作キメラアプリ『フォートバトル行動ナイト』プレイレビュー


異なる能力による「チームプレイ」を重視
 『Apex Legends』のゲームシステムには、次第に狭くなるゲームエリアを舞台として生き残りをかけてプレイヤーどうしが戦う、という典型的なバトルロイヤル方式が採用されている。対して同ゲームのユニークな点は、異なる能力をもっているキャラクターでチームを組んで戦うところだ。


 同ゲームをプレイするには、プレイヤーは「レジェンド」と呼ばれるキャラクターを選ぶことから始める。レジェンドには防御シールドを張ることができる「ジブラルタル」、銃器の扱いに長けた「バンガロール」、そしてテレポーテーションが可能な「レイス」といったキャラクターが用意されている。プレイヤーは、レジェンド3人から構成されるチームを組んで戦うことになる。生き残るためには、レジェンドどうしの短所を補い長所を生かすチーム構成と戦術が求められる。フォートナイトにも二人でプレイする「デュオ」や四人でプレイする「スクワッド」があるが、チームを構成するキャラクターの能力に差異はない。


 同ゲームにはフォートナイトで採用されている「バトルパス」制度もある。バトルパスとはシーズンごとに装飾アイテムを獲得できる権利を購入できるシステムのことだ。シーズンの期間は、おおよそ3ヶ月間に設定されている。このバトルパスが、基本プレイ無料の同ゲームにおける主な収入源となる。


スタートは好調
 テック系メディア『PC GAMER』は、7日、『Apex Legends』が好調なスタートを切ったことを報じている。具体的には、リリース後24時間以内に250万人のユニークユーザが同ゲームにアクセスし、ピーク時には60万人のプレイヤーが同時接続していた、とのこと。また、テック系メディア『Tweak Town』は、海外では主流となっているゲーム動画配信サイトTwitchにおいて、同ゲームの動画がリリース後数時間のあいだに平均して34万回、ピーク時には50万回視聴されたことを伝えている。


 同ゲームのリリースに先立つ先月19日、EAは直近四半期の業績報告を行った。この業績報告を報じたテック系メディア『Tom’s Hardware』によれば、昨年11月20日にリリースされた同社の人気FPSシリーズの最新作『バトルフィールドV』の販売数は予想を下回っていた。こうした予想を下回った原因として、同社経営陣はバトルロイヤルモードを実装しなかったことにあるとして、開発陣を非難した。


 以上の顛末から、逆説的にも『Apex Legends』に並々ならぬ期待が寄せられていることが推測できる。というのも、『バトルフィールドV』には欠けていたがゆえに売上不振の原因ともなったバトルロイヤルモードが、『Apex Legends』ではまさに「顔」となっているからだ。EA経営陣は、この顔が業績回復に貢献することを期待していることだろう。


ライバルはもはや「文化」
 老舗ゲーム・パブリッシャーであるEAが、バトルロイヤルゲームで覇権をとったフォートナイトをライバル視しているのは、同ゲームがひとつのゲームジャンルのヒット作という範疇には収まらないほどに成功しているからだ。こうしたなかUS版Forbesは、6日、同ゲームの魅力を考察した記事を公開した。


 同記事は、同ゲームはプレイヤーどうしが生き残りをかけて打ち合うシューティングゲームを超えた存在になりつつある、と言う。今では同一のゲーム空間を共有すること自体が目的となる「ソーシャルネットワーク」の機能を果たしつつあるのだ。こうしたソーシャルな側面を象徴しているのが、先日開催されたゲーム内イベントであるバーチャルライブだ。このライブでは、実在の人気DJであるMarshmelloに扮したキャラクターがゲームステージ内に登場した。このイベントには1,000万人のプレイヤーが同時接続したと伝えられている。


 現状では「文化」に域に達しつつあるフォートナイトを脅かすゲームは、まだありそうにない。『Apex Legends』をはじめとして、この覇権ゲームに挑むゲームのリリースは今後も続くだろう。


(吉本幸記 )