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DEAN FUJIOKAは“ポストJ-POP”の頼もしい担い手に 最新作チャートインを機に考察

2019年02月09日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2019年2月11日付週間アルバムランキング(2019年1月28日~2019年2月3日・ORICON NEWS)


 2019年2月11日付の週間アルバムランキングはGOT7の3rdミニアルバム『I WON’T LET YOU GO』が首位を獲得。初登場としてはPoppin’Partyの1stアルバム『Poppin’on!』が4位にランクインしたほか、『あんさんぶるスターズ!』や『Fate/Grand Order』、『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』などスマホゲームやアニメ関連作品が多い。国内アーティストでは中島美嘉の豪華ベスト盤『雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE』が6位、DEAN FUJIOKAの3年ぶりとなる2枚目のオリジナルアルバム『History In The Making』が8位に登場。


(関連:DEAN FUJIOKAが語る、3年間の歩みと変化「自分の音楽の未来を作っていきたい」


 今回ピックアップしたいのは、DEAN FUJIOKAの『History In The Making』だ。本作にはロサンゼルスを拠点にグローバルな活躍を見せる若手プロデューサーのstarRoや、いまやJ-POPの屋台骨を支えるプロデューサーとしても名を馳せるマルチプレイヤー、mabanuaも参加している。


 俳優としても活躍するDEANがつくる音楽の魅力は、自分の美学をためらいなく突き詰める思い切りの良さにある。DEANは、好奇心の旺盛さとアンテナの鋭さゆえに、メインストリームからアンダーグラウンドまで、さまざまなエレクトロニックミュージックのエッセンスを貪欲に取り入れてきた。


 たとえば本作にも収録されている「Echo」は、ロンドンを中心に話題となったジャンル、WAVEのサウンドを織り交ぜたピアノバラード。奥行きを感じさせるうねるようなシンセと、トラップ調の緩急のついたリズムがDEANの歌声と見事にマッチしている。ヒットチャートや音楽番組に登場するポップスのなかでは群を抜いて攻めたサウンドメイクで、普通のテレビについたスピーカーでこの迫力を再現できるんだろうか? と驚く。


 彼の楽曲の醍醐味は、ダンスミュージックの構造を使いつつも、1曲のなかに壮大でドラマティックな展開を作り上げる手腕にもある。たとえば「Unchained Melody」は6分にも及ぶが、長さをほとんど感じさせない。徐々にビルドアップしていく展開が、EDM的な高揚感と物語のクライマックスを一致させていて、まるでウェルメイドなショートフィルムを見るようだ。また一方で、「DoReMi」の終盤で登場する言葉遊びは、腰砕けなほどユーモラス。ふと見せるこうした気負いのなさは、いまや珍しい“スター”のオーラを放っている。


 最後に一点。本作は日本語、英語、中国語のトリリンガルで歌われている珍しいアルバムでもある。サウンドだけではなく、言葉の面でも国や地域を横断するコスモポリタニズムを体現しているのは興味深い。世界と日本をポップミュージックのなかで接続しているという意味で、『History In The Making』も星野源言うところの“イエローミュージック”の実践と言えるかもしれない。DEANは近年、星野源と対談を行ったりラジオ番組で共演したりと交流を深めており、シンパシーを互いに抱いていることはたしかだ。日本のポップミュージック史へのリスペクトとオマージュを常に欠かさない星野とは対照的に、好奇心の赴くまま最先端のエレクトロニックミュージックへ躊躇なく飛び込んでいくDEANの姿もまた、“ポストJ-POP”の頼もしい担い手だ。(imdkm)