2019年02月08日 19:11 弁護士ドットコム
中学3年から、当時在校していた札幌市の公立中学の男性教師にわいせつな行為をされて、その後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、41歳の女性が2月8日、教師と札幌市を相手取り、約3000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
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提訴後、会見した女性は自分の実名を公表し、「今も教師は学校にいます。こういう問題があるのを知っていただき、安心して生徒が通えるようになってほしいです」と時折涙で声を詰まらせながら、その思いを語った。
訴えたのは、フォトグラファーの石田郁子さん。訴状などによると、1993年3月の卒業式前日、通っていた中学校の美術担当だった男性教師が、当時中学3年生で15歳だった石田さんを美術展に誘った。その際、キスをするなどわいせつな行為に及んだという。
卒業後もたびたび、石田さんを呼び出し、嫌がって抵抗したにも関わらず、わいせつな行為をした。その後、石田さんが大学2年生になる19歳まで、こうした行為を繰り返した。石田さんは性的被害を受けた後、精神的に混乱し、不安や生きづらさを感じるようになり、2016年2月にフラッシュバック症状が起きてPTSDを発症した。
石田さんは2016年2月から、札幌市教委に教師の行動を報告。その後、調査と処分を求めたが、札幌市教委は教師が否認しているとして、現在まで処分をおこなっていない。
石田さんの代理人である小竹広子弁護士、河邉優子弁護士によると、教師は調査の際に「高校時代に(石田さんと)進路相談やドライブに行ったことはあるが、性的な接触はない。当時から精神的に不安定で、あたかも高校時代に自分と性的なことをしたと妄想のような話を当時から何度も繰り返していた」と話していたという。
会見に臨んだ石田さんは、「自分が教師から性的被害に遭っていたと気づいたのは3年前でした。男性とお付き合いしたこともなかったので、それが普通の恋愛だと大人の先生に言われれば、疑うという発想がありませんでした。でも、一方的に呼び出されて、その日に何をするかを知らない状態でついていく。相手が先生だから言うこときいてしまっていました。卒業してからもその延長でした」と当時を振り返った。
石田さんは2015年、養護施設に通っていた16歳の児童が職員に性暴力を受けていた事件の裁判を傍聴したことをきっかけに、自分が経験したことが犯罪かもしれないと気づいてショックを受けたという。
実名を公表して被害を訴えたことについては、「被害者に対する偏見があるからです。私は普通の人間ですし、自分は悪くないと思っています。15歳から19歳まで被害に遭っていた自分を守れるのは、自分しかいない。堂々と出て話したほうがいい」と語った。
河邉弁護士は、「呼ばれて自分で行ったのでは、女性に非があるように言われますが、それが未成年に対する性犯罪の恐ろしさです。被害が被害とわからない未成年に教師という立場でおこなう。相手からすれば、嫌がっているように見えませんが、性犯罪に遭ったことが後からわかり、被害が出てくることもあります。まだまだ世の中に知られていないので、そうした実態をわかっていただければ」と話した。
札幌市教委は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「経緯を調べ、訴状をみてから対応を協議します」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)