2019年02月08日 17:51 弁護士ドットコム
住友重機械工業(東京都品川区)の子会社で働いていた男性(現在30代)が、月100時間をこえる長時間の残業や上司からの強い叱責などが原因で適応障害を発症したとして、横須賀労基署が2018年10月30日付で労災認定をしていたことがわかった。
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代理人の笠置裕亮弁護士が2月8日、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見し、明らかにした。
男性は2016年11月17日、当時住んでいた会社の寮の屋上から飛び降り自殺を図ったが、救急搬送され、奇跡的に一命を取り留めた。その後は会社に出社できなくなり、自宅からも出られなくなった。現在も精神疾患で休職中だという。
笠置弁護士によると、男性は2014年4月より住友重機に入社。同時に、航空機体部品などを製造する子会社の住重フォージング(神奈川県横須賀市)に出向し、材料管理などの業務に従事していた。
2016年5月以降、月を経るごとに業務量が増加。通常業務のほか、入社3年目に課される研究課題や外国の監査機関による監査の準備などに追われるようになった。月100時間をこえる残業、13日間休みなしの連続勤務を余儀なくされたという。
男性は長時間の残業をしていることについて、上司から毎週厳しく叱責されていた。ただ、会社は業務量の調整やフォローはせず、男性は上司に怒られないよう、実際より少ない残業時間を申告していたという。
会見では、笠置弁護士は男性の父親が寄せたコメントを代読した。
「この記者会見にあたって、息子にコメントを求めたがそれは得られなかった。会社への怒り、再発防止などのコメントぐらいはしたいだろうと、親は思うのだが。コメントできないほど、こころの傷がいまだに癒えていない。
過労は、本人にとどまらず家族にも、社会にも不幸をもたらす。労働者が働きやすい環境に、会社を社会を改善しなければ、若者に、日本に未来はない。
会社に真摯な謝罪と、具体的な再発防止策を求める」
4月からは大企業において、時間外労働の上限規制が始まる(中小企業は2020年4月から)。笠置弁護士は「管理職は必要に応じて業務量の調整をはかるべき。2度とこのような被害が起こらないようにしなければならない。形式だけ整えた時短対策では過労死の防止にならない」と警鐘をならした。
住友重機の広報担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「詳細を把握していないため、コメントできません」とした。
(弁護士ドットコムニュース)