2019年02月08日 16:01 弁護士ドットコム
金やプラチナを扱う「田中貴金属工業」(東京都千代田区)で働く20代女性が、上司からセクハラを受けPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、平塚労働基準監督署に対し労災申請をした。申請は2019年1月22日付。女性と代理人弁護士が2月8日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見し明らかにした。
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女性は「声を上げることは勇気がいります。ですが、これからの人生のために、自分の尊厳を守るために、このような被害を受けても声をあげられない人たちのために頑張りたい」とコメントを出した。
代理人の相曽真知子弁護士によると、女性は2011年に入社し神奈川県内の工場に配属された。2015年ごろから工場長から嫌がらせやパワハラを受けるようになり、別の男性上司からは飲み会後にしつこく誘われ、自宅で無理やり性行為をされたという。2016年9月ごろから休職し、適応障害の診断を受けた。
2017年11月ごろに職場復帰したものの、会社側は十分な調査と対応を行わないまま、女性の意向に反して休職前と同じ部署に戻したという。
2018年3月下旬ごろに行われた新入社員の歓迎会では、さらに別の男性上司からセクハラを受けたと主張。すすめられるまま日本酒などを飲まされ、ラブホテルに連れ込まれて体を触るなどの性的な行為を受けたという。
女性はその後、再び出社できなくなり、休職している。心療内科ではPTSDと診断され、今も病院に通って自宅療養を続けているという。
女性が所属する「よこはまシティユニオン」によると、ユニオンは2018年9月、親会社のTANAKAホールディングスに謝罪や損害賠償を求める要求書を提出した。
ところが、同年10月「歓迎会終了後の行為については、業務上の行為でも、業務に密接に関連した行為でもないため、弊社が安全配慮義務違反の責任や使用者責任を問われるものではない」などと回答があったという。
代理人の笠置裕亮弁護士は「セクハラは事業主の措置義務が規定されている。会社は慎重に調査したと言いつつ、女性に対してのヒアリングはしていない。対応が非常にずさん」と批判。民事訴訟も検討していると明らかにした。
刑事告訴については、女性が警察に相談した際に証拠が残っていないことなどから「刑事立件は難しい」と言われ、しない方向で考えているという。
女性は代理人を通じ、「一生抱えていくであろう傷を負い、それでも前を向いて生きていこうと思い会社との団体交渉を行いましたが、会社からの不誠実な対応にも精神的苦痛を受けました。社会からこういう被害がなくなることを願っています」とコメントを出した。
TANAKAホールディングスの広報部は取材に対し、「労災申請の内容を把握していないため、回答ができない」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)