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NEWSのライブはなぜ心を熱くするのか ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』から感じたこと

2019年02月08日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 人生には、ときに魂を震わせる楽曲との出会いがある。上手とか下手とか、カッコいいとかカッコ悪いとか、そんなことを吹き飛ばす圧倒的エネルギーを放ち、命を燃やすように熱唱する姿にグッと目頭が熱くなる歌。NEWSの4人が歌う「生きろ」は、まさにそんな1曲だ。


(関連:NEWSを応援せずにはいられない アリーナツアー『EPCOTIA』映像から感じた“愛される理由”


 最新アルバム『EPCOTIA』を引っさげて開催した『NEWS ARENA TOUR 2018 EPCOTIA』を成功させ、デビュー15周年を記念した『NEWS 15th Anniversary LIVE 2018 “Strawberry”』、そして初の単独カウントダウンライブ『NEWS DOME TOUR 2018-2019 EPCOTIA -ENCORE-』へ。華やかなトピックスが並ぶ一方で、小山慶一郎の活動自粛など、NEWSファンの心労も絶えなかった2018年。その裏側で、彼らはどんな想いを抱いていたのか。何を考えて生きたのかを連続ドキュメンタリー『RIDE ON TIME ~時が奏でるリアルストーリー~』(フジテレビ系)が追った。


 振り返れば、彼らの歩みはいつだってアップダウンの連続だった。デビュー時に9人だったメンバーも、半数以下になった。度重なる脱退にグループ解散の噂がつきまとい、そのたびに「自分に何があるのか」と問い続けてきた4人。その他大勢と同じ感覚でいてたまるかと、ジャニーズで誰も挑戦していない小説家という新たな道を模索してグループに貢献しようと考えた加藤シゲアキ。「リフティングをしてろ」と監督に言われたら何百回でもやり続けるほど負けず嫌いな少年だった手越祐也は、誰よりもうまくなろうと歌唱力を磨いた。誰よりもNEWSを愛し、アイドルとしての高いプライドを持つ増田貴久は、メンバーが着る衣装にまでこだわり抜いた。そして、「今も苦手で怖い」という歌うことにもMCからも逃げまいと向き合っていった小山。


 ようやくそれぞれの個性と努力が紡がれ、NEWSという織物になってきた。不器用で、繊細で、ひたむきで、強い4人のカラーが、バランスよく織り上げられているのを多くの人が感じていたはずだ。「イチゴのないショートケーキ」と揶揄されたころを笑えるくらい安定してきたと思った矢先に飛び込んできた活動自粛の衝撃。そんなときに生まれたのが「生きろ」だった。作詞作曲を手がけたのはヒロイズム。彼もまた長い年月、NEWSを見つめてきたひとり。4人を応援するすべての人の祈りの歌だからこそ、聴く者にまっすぐ届くのだろう。「自分がいろいろとあったとき、ちょうどこの曲に出会った」と振り返った小山は、音楽チームから「これを歌えるか? この歌詞を背負えるか? 背負えないならやめよう」と覚悟を問われたという。もちろん、小山の答えは「よし、この曲を背負って出る」だった。


 〈生きろ!/何万回 言ったって/何万回 聞いたって/負けそうにまたなるけど/いいさ 懸命に誓った/仲間の絆を 道しるべに〉『NEWS 15th Anniversary LIVE 2018 “Strawberry”』のエンドロールに合わせて、ファンから大合唱が巻き起こった。小山の誓い、NEWSの絆を、信じてこれからもついていくのだという、ファンからのラブソング。その歌声をステージ裏で聞いた小山は、ただただ涙を流していた。加藤も、この曲を歌うときには「毎回すり減らすように歌ってる」と語る。増田、手越も「言葉の力が強い分、生半可な覚悟じゃ歌えない」と同じ想いだ。アイドルという生きものは、ファンの愛で生かされている。きれいごとに聞こえるが、それは真理だ。


 だからこそ、ファンにドキュメンタリーで舞台裏を見せることに消極的だった増田。完璧な作品を届けたいというプロ意識ゆえの発言だ。一方で、見せるのであれば「変に良くしないでほしい」というのは、裏側も決して手を抜いていないという自信の表れでもある。本番ギリギリまで衣装の修正を行ない、そっと加藤の衣装に生年月日をペンで書き添えるなど、誰も気づかないようなところまで愛情を込めて創り上げる。そんな増田の姿勢を「神は細部に宿る」と表現した加藤。彼もまた、ライブ内で描かれるストーリーの脚本、キャラクターのキャストボイス、映像のフォントなど、メンバーが知らない細かなところまで手を尽くしていた。


 そして手越はひとり、何時間にも及ぶリハーサルを徹底的にこなし、40曲以上のセットリストを息切れせずに歌い通すというプライドを見せる。足りなければ、走り込む。そんな体育会系の負けず嫌いは、今も健在だ。そして小山は、3人のこだわりが飛び交う打ち合わせをじっと聞き入れ、日頃から3人の様子を観察。ライブ本番でメンバーが自由に動けるように取り計らい、そしてMCではファンが喜んでくれるようにあらゆる角度から話題を振っていた。それぞれが今できる最高のことを……メンバーも、スタッフも、そしてファンも。そこに集うすべての人が、全力でその場を楽しむ。だからこそ、NEWSのライブは、心に熱いものが流れ込んでくるのだと、改めて知ることができた。


 カウントダウンライブ終演後、「U R not alone」で感極まった増田は「泣いてないっす」と最後までアイドルの意地を見せる。手越は「泣き虫なんですよ、増田貴久は」と笑う。そして「歌も踊りもすべてが100点ではないけれど。NEWSとNEWSのファンが作り出せるライブってところでは、今できる最高のものを作れたかなと思います」とすべてを出し切ったアスリートのような感想を語った。加藤は改めて「(アイドルは)すごい職業だなって思う。だからこそ俺らも、もっと頑張らないといけない」と気を引き締め、「アイドルという仕事が好きか」と問われた小山は「好きですよ、そりゃ」と即答した。そして「これからもアイドルをやっていく?」という質問には、2人揃って「もちろん」と、力強く答える姿が印象的だった。


 〈生きろ!/敗北を知ったって/0(どん底)にいたって/またやり直せるだろ?/そう授かった命の全てかけて/燃え尽きるまで/生きていく〉。彼らを支えるファンやスタッフから授かったNEWSという命を「何万回でも立ち上がって、何万回でも戦って、何万回でもみんなに感謝」して生きていく、4人の覚悟の歌。これからも〈この歌をその夢を 信じてみよう〉。(文=佐藤結衣)