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『オンゲキ』音楽スタッフインタビュー ゲームと声優&アニメ文化を融合させた新たな挑戦

2019年02月07日 12:41  リアルサウンド

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 昨年夏に稼働を開始したアーケードゲーム『オンゲキ』から、『ONGEKI Vocal Collection 01』『ONGEKI Vocal Collection 02』に続き、アルバム『ONGEKI Sound Collection 01「Jump!! Jump!! Jump!!」』登場。既存の人気曲で遊ぶのではなく、あくまでもオリジナル曲で、キャラクターや声優の声の魅力と共に遊んでもらうことを主としたこのシリーズは、キャラクタービジネスが百花繚乱の時代で、どこを目指しているのか? SEGAの音楽チーム総合ディレクター小早川賢氏、キャラクター設定・監修の武田円氏、KADOKAWAの水鳥智栄子氏という、『オンゲキ』のキャラクターと音楽制作に関わる三者に、『オンゲキ』が贈る音楽の魅力について聞いた。(榑林史章)


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■ゲームユーザーと声優ファンの融合に新たなバリューがある


ーーでは最初に、それぞれどういったポジションなのか教えてください。


水鳥:KADOKAWA音楽制作課の水鳥です。『オンゲキ』では、オリジナルキャラクターソングのディレクションとプロデュースを手がけております。


小早川:主にゲーム制作の総責任者をしていて、世間的にはプロデューサーに近い形で関わっています。今回のお話をする以前、僕らも音楽ゲーム制作チームとして多くの曲を作ってきましたが、実は音源の展開について色々と課題を抱えておりまして、パブリッシングの面や音楽制作を強みとしている会社さんと手を組みたいと、様々な会社さんにお話をさせて頂いたのですが、その中でKADOKAWAさんが手を上げていただいたことがきっかけで、一緒にお仕事をさせて頂くことになりました。音楽面では、ゲームのリリースとそこと合わせての音楽展開など、ゲーム側と連動した音楽活動に関わっております。


武田:『オンゲキ』のキャラクターや世界観まわりを担当させていただいています。キャラクターソングはこういうのがいいとか、意見を最初に言い出す人です(笑)。キャラクターの設定も私が担当しています。


ーー近年、声優とキャラクターを絡めたコンテンツがたくさんあり、声優がリアルライブを行うことで人気を集めています。そういう状況において、『オンゲキ』はどういうところを目指しているのでしょうか。


小早川:『オンゲキ』は、アーケードゲームから発信するコンテンツということで、軸足が音ゲーというゲームジャンルにあることが特徴です。ゲーム展開されているキャラクターコンテンツも数多くあると思いますが、それらはキャラクターコンテンツをゲーム化しているんだと思うんですよね。オンゲキでは逆のアプローチで、音楽ゲームというゲームの特性を活かすようにキャラクターを作りました。


武田:音楽ゲームは楽曲のジャンルを重視する傾向があって、ロックならロック、テクノならテクノと、ジャンルが明確に分かれていることがほとんどです。『オンゲキ』は、そこに女の子のキャラクターを与えて、キャラクター性と音楽性をマッチさせる試みをやっています。つまり女の子のキャラクターごとに、違ったジャンルの音楽が割り当てられているという具合です。


小早川:それに弊社の音楽ゲームユーザーは、コンポーザーの名前に注目する方が多いのも特徴です。誰が歌うかと同じくらい、誰が作ったかも重要で、ジャンル名、コンポーズするアーティスト名、そしてキャラクターをワンセットにしてパッケージすることを意識しました。


ーーそれをアプリゲームではなく、アーケードゲームから発信していくところが新しい。KADOKAWAさんとしては、そういう話を受けてどんな印象だったのでしょうか?


水鳥:アーケードの音楽ゲームから発信するコンテンツで、ボーカルに声優を起用する、ある種アニメ的な『オリジナルキャラクターソング』が最初から全面的に出ているコンテンツはあまりなかったので、面白そうだなと思ったのが第一印象でした。彼女たちはやはりすごく声がかわいいので、音楽やゲームとの親和性もいいですし、実際にプレイしても曲の良さはもちろん、キャストの声の良さは際立って聴こえます。アーケードの音楽ゲームというなかでは、新しいアプローチだったのではないでしょうか。


ーーアーケードゲームのユーザーと、アニメや声優のファンでは、近いところもあるのでしょうか?


水鳥:じつは、あまりありませんね(笑)。


小早川:むしろ、距離があるお客さん同士だったと思います。だからこそ、そこを結びつけることで、新たなバリューというか魅力が生まれるのではないかと期待して制作しています。実際に『ONGEKI Vocal Collection 01』のリリースイベントをやった時は、声優さんのファンが多く足を運んでくださって、声優ファンの方に『オンゲキ』の音楽性を知っていただく場にもなりました。これを定期的に続けていくことで、いい相乗効果が生まれていくと思います。


水鳥:最初にイベントをやったときは、『チュウニズム』と『maimai』のファンの方が多かったのですが、回を重ねるうちに、「ゲームはやったことがないけど声優が好きだから行ってみた」という声も聞こえてくるようになりました。まだこれからではありますけど、上手く混じり合ってきているなと思います。


ーー各キャラクター設定や、そのキャラクターに対する楽曲を考えられる時は、どんな風に考えていったのですか?


武田:最初はあまり細かいところまでは詰めず、ざっくりとしたところを考えて進めていきました。この子はクール系のキャラクターで、じゃあ格好いい曲が合うだろうとか、この子は明るい子だからポップにしよう、と。


ーー例えばキャラクターの星咲あかりは、明るく前向きなキャラクターなのでアイドル的なポップソング、藤沢柚子は弾けた元気ナンバーみたいな感じですね。


小早川:そうですね。音楽ゲームというジャンルを作っていて感じるのは、オリジナル曲など、知らない音楽の魅力を伝えることはすごく難しいということです。今のお客様は、最初の数秒で魅力を感じなければ、触りたくなる、聴きたくなるところまで、なかなか進んでもらえない。特に音楽は、イントロがあってサビまでの時間を考えると最低でも30秒~1分は聴いてもらわないと魅力が伝わらないわけで、その時間をどう圧縮するかが、音楽ゲームを作る側にとって重要です。過去『チュウニズム』と『maimai』を制作して学んだのが、曲だけでなく絵でも音楽性を彷彿とさせることの大事さです。今回はそこからさらに踏み込んで、女の子のキャラクターという表現方法を使って、より速く直感的に音楽性を伝える手法を取りました。それは声優さん選びもそうで、声の魅力、キャラクターの絵の魅力、そしてキャラクターの性格の魅力によって音楽を伝えることに挑戦しているところです。


武田:開発初期のコードネームが、そのままジャンル名だったキャラクターもいますよね(笑)。


小早川:例えば「ふんわり子ちゃん」というコードネームだったら、ふんわりとした曲を作りましょうみたいな。藍原椿というキャラクターなんかは、最初は「ボカロ子ちゃん」と呼んでいたんです。それで、和風のボカロっぽい曲を作ろうと思って。


ーー実際に着物風の服を着ていて。きつねのお面を頭に付けているところも、ボカロの世界観である感じですね。


水鳥:そう、すごく分かりやすいんです。でもコードネームの「ボカロ子ちゃん」があまりにも馴染みすぎてしまって、内部ではキャラクター名でなかなか呼んでもらえないということもありました(笑)。


ーー世の中にはごまんとキャラクターがあるわけですけど、個々のキャラクター作りで意識することは何ですか?


武田:より特徴をはっきりさせることですね。アーケードゲームはワンプレイの時間が短く、キャラクターに接する時間も少ないです。そんな限られた中でもキャラクターの魅力が伝わるように、特徴をかなり盛りました。


小早川:椿は、今一番人気があるキャラクターですが、当初はここまで人気が出るとは思っていませんでした。それがここまで人気が出たのは、やはり見た目と性格がマッチしていて分かりやすかったからこそだと思っています。


武田:ただ「尖ったものだけだと疲れる」というようなご意見も聞こえているので、今後はバランスの取り方にもより注意を払おうと思っています。


小早川:特徴が尖ったキャラクターの人気がある一方で、安心感のあるテンプレート的な存在も求められているのは確かですね。でも、すでに出ている既存のキャラクターも、見た目や性格は尖らせているけど、基本的な特徴はテンプレに忠実だよね。


武田:そうですね。実験的なことはやっていないです。


水鳥:音楽もそうで、アヴァンギャルド=キャッチーではなくなるんですね。私は、音楽はキャッチーさこそが正義であると思っていて、そうでなければ覚えてもらえないし、歌ってもらえない。ツボは突きつつ尖らせすぎないという絶妙のバランスが、音楽面では重要です。2月にリリースする「ONGEKI Sound Collection 01 『Jump!! Jump!! Jump!!』の表題曲も、絶対みんなが好きだと言ってくれる、王道要素の強いものを目指して作りました。


■音ゲーのトレンドの最先端をゆく


ーーキャラクターの明確化という部分では、どんなアーティストにどんな曲を発注するかもポイントになります。『オンゲキ』はオリジナルの歌もの曲が多く、Elements Gardenの上松範康さん、livetuneのkzさん、Tom-H@ckさんなどアニメやボカロのシーンを飛び越えて、メジャーの音楽シーンでも活躍されている方がずらりと名前を連ねていますね。


小早川:最初は、僕らがリファレンスとしてTom-H@ckさんとか、いろいろなアーティスト名をポンポン出していったんです。あくまでもリファレンスだから、さすがにアサインはしないだろうなと思っていたら、KADOKAWAさんが本当に全員アサインしてくれてびっくりしました(笑)。それは僕らではできないことなので、KADOKAWAさんと組ませていただいて、本当に良かったと思っています。TeddyLoidさんなど、僕らはいちファンとして名前を挙げた方をどんどんアサインしてくださるので、とても心強かったです。fhánaの佐藤純一さんも、「まさか!」でしたし。


水鳥:ネームバリューのある方をなるべく多く入れたかったので、頑張らせていただきました!


ーーネームバリューという部分でも、1クールに放送されるアニメの主題歌が全部並んでいるかのような、豪華さとボリューム感がありますよね。ただアニメの楽曲を作られる場合とゲームの楽曲を作る場合では、作り方や制限の違いもあるんでしょうか。


水鳥:けっこうあります。アニメ主題歌は89秒という尺が決まっていますが、音楽ゲームの場合は1曲が2分20秒前後なんです。アーティストの方が普段作られている主題歌よりも長いので、じゃあその分は単純にサビを繰り返せばいいのかと言ったら、そういう簡単な問題でもなくて。「もう1個サビとは違った、オイシイ部分を足してほしいです」と、お願いをしました。


小早川:音楽に対する集中の仕方が、音楽ゲームの場合は根本的に違うんです。音楽ゲームは、1音も聴き漏らさないように音楽に集中するんですけど、普通の音楽をそこまで集中して聴くことはないですよね。しかもゲームに即した構成を求めるので、そこでご調整していただいた部分もありますし。


ーーイントロとか最初の音でジャンル感やイメージが伝わる曲が多い印象ですが、そこは意識されましたか?


小早川:そうお願いしたわけではないのですが、結果的にそうなりました。


水鳥:オイシイところを抽出していくと、そういう曲になることが多いということだと思います。


小早川:ゲーム的には、イントロとアウトロが盛り上がると、すごく作りやすくなるんですよ。例えばボカロ曲は、イントロが強い曲が多いのですが、それは曲の出だしで掴まないと動画再生数が伸びないからなんだと思います。お願いしたアーティストさんの中でボカロ出身の方は、やはりイントロから加速している曲を作ってくださったなと感じていますね。このあたりを言い換えると、「今風」ということにもなると思うんですけど。


水鳥:オリジナル曲は版権曲(著作権をゲームサイドが有していない楽曲)や移植(ある楽器の曲を他の楽器に編曲する)とは違って、まったくゼロ情報の状態でお客さんが聴くので、最初に興味を持っていただけないとすぐ切られてしまうわけです。ゲームをプレイする前のプレビュー画面の時に流れるのはサビが多いので、本当に“どキャッチー”でなければプレイしてもらえないことも多く、その点では、キャッチーさということも、非常に重要ですね。


ーー音ゲーの中でも、その時代ごとにどんなトレンドがありますか?


小早川:10年くらい前までは、音ゲーの世界ではボカロや東方の曲はタブーとされていました。オリジナル曲至上主義の市場で、版権曲や、ましてやプロの作らない音源、例えば同人音楽なんかとはとても相性が悪かったんですよね。それがこの5年くらいで、ボカロPさんや同人作家さんの曲が入ってきていて、それが今の音ゲーのトレンドになっていきました。それと、各社ともにアニソンの割り合いが急激に増えていることも、最近のトレンドですね。アニメやボカロなどサブカルチャーの音楽が、ゲームの世界でも強くなっているのが昨今の傾向だと思っています。


水鳥:アニソンは少し前に、BPMが速ければ速いほど盛り上がる風潮があって、音ゲーも先ほど話に出たように速いほうが譜面にも色々な可能性が広がるので、その部分ではすごく相性がいいんです。それで入れやすくなったのかもしれませんね。


小早川:そうですね。そういう流れがあったこともあって、もう少しアニソンのアーティストさんに寄った楽曲構成にしたいというのも『オンゲキ』スタート時には考えていました。そういう意味では、昨今の音ゲーにおけるトレンドの最先端を感じていただけたらうれしいですね。


ーーとは言え、トレンドばかりを気にすると曲が似通ってしまうおそれがあるわけですが、そこはどんな風に考えていますか?


武田:難しい話ですね。トレンドを抑えつつの差別化という意味では、リズムのバリエーションは意識しています。リズムを変えられれば、音楽ジャンルも変えられますし。


ーーまだ手を付けていないジャンルも?


武田:クラブに寄せた楽曲は、まだ少ないですね。まずはライブで映える楽曲を中心に作っているというのもありますが。


ーーリアルライブ展開することを、当初から考えていると。


小早川:ライブは、だいぶ意識していますね。


ーー確かにライブとクラブでは、楽しみ方が違いますからね。


水鳥:そうですね。だから楽曲の軸に、「コール&レスポンスがほしいです」と各アーティストさんに最初にお話しして、それで曲を作っていただいています。


小早川:それにライブ映えする曲は、音ゲーとしても取り込みやすいんです。音楽ゲームは時代と共に構成が変わって、ひと昔前であれば「キー音」と言って実際に音を奏でて演奏するゲームが多かったのですが、今は演奏する音とは切り離れて「音に合わせてリズムを刻む遊び」が主流です。そうなってくると、演奏する側というより、観客として楽しむみたいな遊び方の方が楽しみやすいんですよね。そんなこともあって、ライブで聴いてノレる曲をゲームにすると、すごく楽しいものができあがります。たとえば合いの手やコール&レスポンスの部分を意識したリズムを叩かせたりすると本当に楽しい。 “ライブ映え”=“音ゲーム映え”みたいな感覚を、最近は感じますね。


ーーゲームで遊んで良し、ライブでも盛り上がって良しと。


小早川:そういうことですね。そんなこともあってか、うちのプレイヤーさんはゲームで合いの手やコール&レスポンスに合わせて体を動かし慣れているので、ライブをやってもノリがすごくいいんです。


水鳥:みんなで練習してきたかのように、動きが揃いますよね。


小早川:イロドリミドリという別の音楽ゲームでやっているユニットのライブをやった時は、コール&レスポンスをセンタービジョンに流したのですが、音ゲーを遊んでいるようなインターフェイスにしたんですよね。そうしたら初めて聴く曲にも関わらず、全員ぴったり合わせてきた。「やっぱり音ゲーマーさんはすごいな」って思いました。そのあたりの面白さは、『オンゲキ』のライブでも踏襲していきたいなと思っています。


■『ラブライブ!』は目指すべき目標


ーーそんな『オンゲキ』の音楽を一気に楽しめる「『ONGEKI Sound Collection 01『Jump!! Jump!! Jump!!』』が、2月27日にリリースされます。表題曲の「Jump!! Jump!! Jump!!」は、5人のキャラが歌っています。


小早川:「Jump!! Jump!! Jump!!」は、それまで作ってきたキャラクターの特徴と音楽ジャンルを意識したものとは「違う」コンセプトで作りました。みんなで歌う曲、全員そろって歌って盛り上げたいなと。


水鳥:ユニットでもなくて、ASTERISM(アステリズム)の3人、⊿TRiEDGE(トライエッジ)と生徒会から一人ずつの5人が歌っていますけど、最初は13人全員で歌うという案だったんです。だから音源では5人ですけど、オンゲキシューターズの13人の誰が歌ってもおかしくない曲になっているので、ライブではメンバーの組み合わせを変えて歌ってもいいし。


武田:次に出る「オンゲキ PLUS」というバージョンのテーマ曲にしようというのがあって。それでみんなで歌える曲にしたかったのと、ライブで毎回オープニングやエンディングを飾れるような楽曲をイメージしました。


小早川:13キャラクターという個性に加えて、5ユニットという個性、それに加えて全員集合という3つ目の個性が作れたかなと思います。1キャラクターに1つの音楽ジャンルを当てるという、かなり濃い目で作ってきたキャラクター・音楽の個性を組み合わせることで、今後もバリエーションをより広げていきたいと思っています。また、新しいユニットも検討しています。


ーー今回のアルバムではインスト曲も多数収録しています。


小早川:はい。ちなみに、「Jump!! Jump!! Jump!!」とインスト曲は考え方が別で。インストは、昨今の音ゲーとしてみんなが喜んでくれる作家さんを集めました(笑)。


水鳥:マスタリングエンジニアさんも「聴き応えがある」と何度もおっしゃっていました。他のポイントとしては、「Jump!! Jump!! Jump!!」の声優ごとのソロミックスが5パターン収録されていることです。この概念は、今までの音ゲーにはなかったもので、そもそもソロミックスというのはアニメのキャラソンの文化なので。最後に「Jump!! Jump!! Jump!!」の5連発がくるのは、音ゲーのCDでは画期的です(笑)。曲は同じですけど、声が違うので、意外と聴けるんですよね。


小早川:そうですね。単体でも聴けるのですが、アルバムとしてはインストのバリエーションがあるので、なおさら受け入れられやすいですね。


ーーアーケードの音ゲーにはなかったチャレンジを次々やっている。


小早川:はい。音楽ゲームとしての音楽、声優を含めたアニメ要素を取り入れた音楽、それらが1つに入った集大成的なアルバムになっていると思います。ユーザーさんの反応もすごく楽しみです。


ーーまた、KADOKAWAさんとしては、声優とキャラクターの融合という部分で『ラブライブ!』という成功例がありますが、『オンゲキ』でも『ラブライブ!』のようなマルチメディア展開を見込んでいますか?


水鳥:そうですね。弊社の大きな特長として、社内にさまざまな部署があって、社内だけでマルチメディア展開が完結できたり、完結までいかないにしてもたくさんのヒントをもらえるところにあります。それは一長一短ではありますが、メディアミックスについての知見は各部署豊富ですので、さまざまな展開が考えられると思っています。


ーー『ラブライブ!』や『ガルパ(バンドリ! ガールズバンドパーティ!)』とか、正直意識はされますか?


武田:意識はしています(笑)。ただ、あくまでも目指すべき目標という感じで捉えていますね。弊社は、キャラクターやコンテンツ作りが弱いと感じるところが正直あって、その部分で見習うべきと言うか、追うべき背中がそこにあると思っています。


水鳥:既存の音楽ファン、ゲームファンはもちろんですけど、声優ファンも取り込んでいきたいという目標があって。こういう音楽ゲームの中ではなかなか珍しいと思うんですが、良きタイミングでサントラを1枚だけドカンと出すのではなく、最初からキャラクターソングをすべてフルサイズで制作し、『ONGEKI Vocal Collection 01』とか『02』とシリーズ化してCDをリリースしています。特定の声優さんのファンが、そのCDだけでも買っていただけるように、比較的安価で手を出しやすいものを意識して取り組んでいます。


ーーゆくゆくはアニメ化みたいなことも考えているのでしょうか?


小早川:キャラクターコンテンツをやる上で、キャラクターの表現が最適化された一つの形がアニメだと思っています。なので、アニメをやることは、適正なことだと思っています。ただ、アニメはキャラクターの表現であると同時に、ストーリーを表現するためのプラットフォームでもあると思っているので、じゃあどういうストーリーのどういうアニメが『オンゲキ』にとって最適なのか。その形を模索しながら検討したいと思っています。


水鳥:アニメのお客さんとゲームのお客さんは違うので、そこで無理をしてアニメをやっても意味がない。両方の層に重なっているユーザーがもっと増えてくれれば、やる意味もあるかなとは思いますけど……。だからもしやるとしたら、アニメを観たいと思ってくれる音ゲーユーザー層が増えたタイミングでしょうね。


ーーでは最後に、今後の展開と目標を教えてください。


水鳥:ライブを念頭に置いてスタートしたと話していますが、実際のところはまだゲームイベント内や、リリースイベントなどのフリーライブしかやっていないんですね。今後は、興行という意味でのオンゲキライブを作っていきたいです。それを実現させるための楽曲たちですので、その本来の目的を達成したいですね。


小早川:豪華なアーティストさんを迎え、コンテンツも気合いを入れて作り、声優さんもフレッシュな方に出ていただいて……。最初はバラバラだったピースが、今ひとつにまとまりつつあります。それらがキュッと圧縮されたものがライブであり、それこそが『オンゲキ』の魅力の集合体だと思っています。こればかりは地道にやるしかないのですが、1回来てくれたお客さんがちゃんとリピートしてくれて、その回数を重ねることで広がっていけるようにしたいです。


武田:ほとんど言われてしまいました(笑)。でも、いままでキャラクターソングを聴かなかったユーザーさんにも、届くものにしていきたいですね。クラブ系の音楽など取り入れる方法もあるのかなと思いますし。キャッチーさは保ちつつ、チャレンジも続けていきたいです。


水鳥:今のバージョンに入っているオリジナルソングは、アーティストさんのネームバリューに頼っているところも大きいので、今後はアーティストさんのネームバリューに頼らずともオリジナルキャラクターソングとしての純粋な魅力を感じていただけるようにすることも課題のひとつですね。


小早川:『オンゲキ』というブランドがもう一段階上がることが、次の課題です。逆にアーティストにとって『オンゲキ』に楽曲を提供することがネームバリューに繋がるものにしていきたいですね。(榑林史章)