2019年02月07日 11:21 弁護士ドットコム
ファミリーマートが3月から始めると発表した「ファミマこども食堂」。地域の子どもと保護者を対象にした、イートインスペースでの食事会と職業体験を柱とする企画だ。
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多くの場合、運営はイートインスペースを持つフランチャイズ(FC)加盟店が担う。ただでさえ仕事が多いと言われるコンビニ業界だけに、さらなる負担の発生を懸念する向きもある。
本部にファミマこども食堂について聞いた。
ファミマ本部によると、こども食堂は2018年度に5店舗(東京、神奈川、埼玉)でトライアルを実施した。この5店舗には、本部の直営店のみならず、加盟店も含まれている。
報道では「全国約2千店で始める」(朝日新聞)などと伝えられているが、より正確に言うと、この数字はイベントに必要な要件を満たした店舗数だという。
各加盟店は参加を断ることもできるので、実際にどの程度の参加があるかは未定。ただし、ある程度の規模になる手応えはあるようだ。
開催頻度は、各店舗の判断による。
こども食堂での実施プログラムは、トライアルを参考に本部側が考える。加盟店がゼロからつくるのは大変という配慮からだ。
ただし、コンビニ経営では、地域密着が重要。各店舗でのアレンジは歓迎するという。
本部によれば、こども食堂では、店舗スタッフだけでなく、本部側の社員も運営に加わる。たとえば、本部側の社員が司会役となり、食事中の会話を盛り上げるといった形が考えられるという。
提供されるメニューは、特別なものではなく、一般に販売されているものだ。
トライアル時は、小さめの弁当やサラダ、スイーツ、飲み物に加え、「ファミチキ」など店内調理の惣菜が提供されたという。費用はすべて本部持ち。
参加費の「こども(小学生以下)100円、保護者(中学生以上)400円」は運営費に充てるが、提供商品を見ても利益は出そうにない。
「持続することが大切なので、加盟店の負担ができるだけ小さくなるよう、本部も伴走していく」(本部)
参加が自由ということであれば、加盟店側の負担に配慮しながらつくった仕組みと言えそうだ。
加盟店のオーナーはどう考えているのか。コンビニ加盟店ユニオンの執行委員長で、ファミマオーナーの酒井孝典さんに聞いた。
「報道で初めて知り、本部に問い合わせました。こども食堂について、加盟店にはまだ、正式なお知らせは来ていないようです(2月5日現在)」
実施すると、加盟店にどんな負担があると考えられるか。次のような答えがあった。
「参加者を放っておくわけにもいかないので、加盟店側も人をつけて対応することになりそうです。その分の負担は発生するでしょう」
「地域貢献をどう考えるか。直接の利益はありませんが、地域の人との交流が増えれば、固定客になってくれるかもしれないという面もあるでしょう」
ちなみに、酒井さんの店にもイートインスペースはあるが、本部から打診があっても、「スタッフの負担と人件費がかさみそうなので(ファミマこども食堂は)できません」。
酒井さんの労働時間は月300時間を超える。残業換算すると約120~170時間。それでも年収は300万円に届かないという。
ファミマこども食堂をめぐっては、2月1日の報道発表以来、ネットで議論が繰り広げられている。
反対派は、コンビニの賃金の低さをとりあげ、こども食堂の前に処遇を改善すべきなどと批判。一方、賛成派の意見は大雑把に言うと、やらないよりやった方がよいなどというものだ。
ただし、本部によると、ファミマこども食堂は「子どもの貧困」対策ではなく、「地域の活性化」を目的としたもの。地域の大人との交流が生まれることで、防犯などの効果が生まれることにも期待しているという。
結果として、貧困家庭の子どもが利用する機会になれば望ましいにしても、いきなり貧困層にアプローチできるとは考えていないそうだ。
その意味では、俗にいう「子ども食堂」のイメージとは違った形での社会貢献を目指すものと言えそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)