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クリント・イーストウッド監督・主演作『運び屋』脚本家が明かす、『グラン・トリノ』との関係性

2019年02月07日 11:01  リアルサウンド

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 3月8日公開のクリント・イーストウッド監督・主演作『運び屋』より、脚本を務めたニック・シェンクのインタビューが公開された。


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 イーストウッドが自身の監督作としては『グラン・トリノ』以来、10年ぶりの主演作となる本作。「今のハリウッドには自分が演じられる作品がない」と言い、一時は俳優引退をほのめかしたこともある名優の心を動かしたのは、前代未聞の“アウトロー”の実話だった。


 イーストウッドが演じるのは、仕事一筋で家庭をないがしろにした挙げ句、事業の失敗で家財の一切を失ってしまった孤独な老人アール・ストーン。イーストウッドは撮影時、モデルの人物レオ・シャープと同じ87歳だった。一度に13億円相当のドラッグを運び、やがて全米の警察だけでなく、巨大麻薬組織からも一目置かれる存在となる。


 今回、イーストウッドのために『運び屋』のオリジナル脚本を執筆したシェンクが、史上最高齢の運び屋を題材にした理由、脚本家デビュー作となった『グラン・トリノ』との共通点について語った。


 脚本の基になったのは、2014年に『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された『シナロア・カルテルが雇った90歳の麻薬運び屋』という記事。前代未聞の実話に登場するレオ・シャープという存在を知ったシェンクは、その素顔に驚き、「麻薬組織の連中は彼を大いに気に入り、気前よく酒や料理をふるまい、自由に行動させた。私はそこからストーリーを練っていった」と、誰もが凄腕の運び屋とは思わなかったシャープを主人公に、イーストウッドのために脚本の執筆を進めた。脚本を読んだイーストウッドは、アールのキャラクターについて「私の年齢の設定で展開させてみると楽しいだろうなと思った」と、監督だけではなく、自ら主演することを決めた。


 シャープの実話にインスパイアされた『運び屋』の主人公アールは退役軍人だ。「私はこのアールという人物が、『グラン・トリノ』のウォルト・コワルスキーと表裏の関係にあると気づいた」とシェンクは指摘する。「『グラン・トリノ』のためにリサーチをしたとき、多くの退役軍人と会ったが、彼らの多くはふたつのタイプに分かれているようだった。ひとつは、ウォルトのように世の中に対して怒りを抱えている人たち。もうひとつは、そんな怒りは隠し、チャーミングでほかの人々をすぐにくつろがせるような人たちだ。それが、私にとってのアールの基盤になった」と語る。


 友人たちに軽口でジョークを飛ばし、カントリーソングを歌いながらドライブを楽しむかと思えば、麻薬組織のギャングにも物怖じせずに向き合う。イーストウッドが人生を楽しむかのように演じるアール・ストーンだが、家族との関係は思わしくない。外交的に振る舞うアールの行動は、「すべて友人や仕事仲間たちに向けられたもので、彼の別れた妻が映画の中で言っているように、アールの楽しい側面はほかの人たちがとってしまい、彼女や家族にとってのアールは、いつも家から逃げ出したくてたまらないような男だった」と分析した。(リアルサウンド編集部)