2019年02月05日 09:51 弁護士ドットコム
「男子は幼いころからエロいからなるべく女湯に来ないでほしいねん」。そんなメッセージを込めた漫画が1月26日、Twitterに投稿された。投稿したユーザーは女性で、「女湯にいる男児が苦手」という理由を実体験をもとに漫画に描き、大きな反響を呼んでいる。
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女性は、3歳の幼い男児でも女性の体に興味を持って触れたり、「ガン見」したりしているのを見て、「様々な事情で息子さんを女湯へ連れて行く方がいらっしゃると思いますが、(中略)気にする女性はたくさんいるのではないかと」として、「パパは息子さんを男湯に連れてって‼︎無理なら家族風呂や内風呂のご利用を…なにとぞ‼️」と訴えた。
この投稿に対し、ネットでは同意や批判などさまざまな意見が寄せられた。意見のひとつは、「条例で決まっている上限の年齢を守ればよい」というもの。実は、銭湯などの公衆浴場で、異性の入浴が許される年齢の上限は、各都道府県の条例で定められている。しかし、近年では、独自ルールによって条例よりも低年齢に設定したり、身長で制限したりしている浴場も少なくない。なぜなのだろうか。
各都道府県で定める条例は、10歳以上の混浴を禁じているところが多いが、ばらつきはある。その中で、年齢が低いのは京都府で、条例で「7歳以上の男女を混浴させないこと」とする。これは、7歳は就学年齢であり、自分の身の回りのことはできるとの判断からだ。
一方、「最高齢」は北海道。北海道の「公衆浴場法施行条例」によると、「12歳以上の男女を混浴させないこと」(編集部注:11歳まで)とある。しかし、北海道公衆浴場業生活衛生同業組合では2015年10月から、独自にルールを設けて男女の混浴は「9歳まで」としている。条例よりも2歳も引き下げて設定、全国に足並みをそろえている。
その理由について、組合は、「昨今、男女とも子どもの成育が早く、組合にも混浴についての問い合わせや苦情が何件か寄せられたこともあり、北海道公衆浴場問題協議会で『12歳以上の混浴について』見直しを求めたところ、北海道浴場組合内の内規で定めてもよいとの回答をもらったことから、理事会において決定し、設置しました」と説明する。
その北海道内の公衆浴場の安定的な経営を話し合う公衆浴場問題協議会の議事録によると、2015年4月の会合で、組合側からこんな議題が上げられている。
「今までは条例では北海道は12歳ということで、 12歳を超えて混浴をさせてはならないということになっているんですけれども、最近、子どもさんの発育が非常に早いものですから、 12歳になると、男の子でも女の子でも親と一緒に、例えば男の子が女性の方に入る、あるいは女の子が男性の方に入るということになると、他のお客さんから指摘を受けることがある、あるいは好奇な目で見られてしまうことがあってですね、我々としても非常に苦慮しているところなんです」
「お客さんから問い合わせがあって、何歳までは良いんですかとなると、条例ではこうなっていますということしか、あとは親御さんの判断にお任せしますということでやっているんですけども、営業している者からすると、非常にはがゆいところがあるものですから、他府県を調べてみたら、少し年齢を下げてきていることもありますので、出来れば、条例ですので、この協議会の中でご審議をいただいて、年齢を下げていただくことをご検討いただけないかなと思って提案をさせていただきたいと思います」
話し合いの結果、独自に年齢を引き下げることに問題はないとされ、現在に至っているという。
他にも、条例で定められた年齢よりも低年齢の制限を独自に設ける浴場は少なくない。たとえば、東京都の条例では、「10歳以上の男女を混浴させないこと」としている。しかし、海外からの観光客も多く、都内有数の浴場である「東京お台場 大江戸温泉物語」(江東区)では、「9歳以上または身長120cm以上のお子様は、各男女性別の浴場をご利用ください」と明記。低年齢に設定しているだけでなく、身長にも上限を設けている。
また、神奈川県の条例でも「10歳以上の男女を混浴させないこと」とあるが、神奈川県厚木市の「東名厚木健康センター」はサイトのQ&Aで、「小学生の男の子は女性風呂に入れますか?」という質問に対し、「お子様の混浴は、7歳まで、なおかつ身長110cm以下とさせていただいております。ご了承ください」と明記している。
男児の混浴を女性客が気にするというだけでなく、子ども自身が性犯罪に遭うのを未然に防ぐ目的もあるようだ。大阪府狭山市の「スパヒルズ」は、「男女の混浴は性犯罪の低年齢化に伴い当店では115cm未満のお子様に限らせて頂いております」(サイトより)としている。
このように、条例以上に厳しい独自ルールを実施している浴場は枚挙にいとまがない。背景には、条例自体が数十年前に設置されたものであり、現在の社会状況とズレが生じていることがあるようだ。各都道府県では、浴場や利用客の声を聞くとともに、条例の見直しが求められている。
(弁護士ドットコムニュース)