2019年02月04日 10:31 弁護士ドットコム
勤務先の閉店にともない、娘が退職届を書かされることになったーー。慌てた母親から弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
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母親によると、退職届に「一身上の都合により退職」(自己都合退職)という文言を書かされているのだそうです。
お店を閉めるぐらいですから、会社の経営があまりよくないのかもしれません。しかし、それなら「自己都合」ではないはずです。こんなときどうしたら良いのか、鈴木徳太郎弁護士に聞きました。
――労働者にとって、会社都合と自己都合はどう違うのでしょうか?
「労働者にとっては、会社都合の方が『失業給付金』を早く受け取れ、支給期間の最大期間も延びるといった点から、会社都合退職が良いと言えます。
また、会社に退職金規程があれば、会社都合の方が退職金の額が上がることが多いです。法律的な観点からは、会社都合退職のデメリットは特にはないかと思います。
ただ、会社都合は解雇や退職勧奨などを意味します。
転職先によっては、これらの退職理由を気にするといった事実上のデメリットはあるかもしれません(この辺りは転職先の文化にもよるのでしょうが、会社都合であることが採否の決定打となることはあまりないのではないかと思います)。
また、会社都合とすることを会社側が嫌い、協力を得られないこともあるかと思います」
――デメリットはあまり気にしなくて良いとして、なぜ会社は協力を拒むのでしょうか?
「ひとつには会社都合退職だと会社に責任や非があるかのようであるため、自己都合とすることが考えられます。
また、最初に説明したように、会社に退職金の支給規程があれば、会社都合により退職した場合の方が、より退職金が高額となることが多いということも考えられます。
なお、雇用保険(失業給付金)の保険料については、自己都合であるか会社都合であるかによって会社の負担額が変わる訳ではありません」
――仕事を続けたい場合もあると思います。その場合はどうしたら良いですか?
「会社に希望を伝えるのが一番かと思います。今回のケースでは、店舗の閉鎖によるリストラが原因のようですが、会社に他の店舗がある場合、そちらでの勤務を希望する旨などを伝えるのが良いでしょう。
ただ、会社の所有する店舗数にもよりますが、他に勤務に適した店舗がないのであれば、退職する方向で考えた方が良いかとは思います。
会社の経営状況が悪い中でのリストラであるならば、退職勧奨を拒んでも、今度は合法的に整理解雇を受ける可能性が大きいかと思います。また、会社が倒産する可能性もあるでしょう」
――その場合は、会社都合退職を求めるべきだと。
「ええ、会社都合退職であることは強く求めた方が良いでしょう。会社が応じないのであれば、会社都合としても会社に不利益な点はない旨を説明することまではしても良いかと思います。
それでも会社側が会社都合とすることを拒む場合には、争う労力やそれに費やす時間と会社都合退職となることによるメリットを天秤にかけながら会社と交渉していくことになるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 徳太郎(すずき・とくたろう)弁護士
多摩地区・府中市の弁護士。個人の案件については、相続問題の他、交通事故や倒産事件を多数取り扱う。近時は労働問題の相談も多い。会社関係の事業承継なども取り扱う。
現在、第一東京弁護士会多摩支部副支部長、府中市情報公開・個人情報保護審議会委員を務める。
事務所名:鈴木徳太郎法律事務所
事務所URL:http://www.fuchu-lawoffice.jp/