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Aqours、劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!』OP&EDで初の1位 生音で届ける“リアル”な感動

2019年02月02日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2019年2月4日付週間シングルランキング(2019年1月21日~2019年1月27日・ORICON NEWS)


 最新のオリコン週間シングルランキングはAqoursの『僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!』が74,413枚を売り上げて1位、Shuta Sueyoshi feat. ISSA『Over“Quartzer”』が28,348枚で2位、SKE48『Stand by you』が15,475枚で3位という結果となった。


(関連:Aqours、結成3年半で得たパフォーマンスの“輝き”とは? 『紅白歌合戦』初出演の注目点を解説


 1位を獲得した『僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!』は、劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』のオープニングテーマとエンディングテーマを収録したもの。Aqoursは『ラブライブ!サンシャイン!!』に登場する9人組グループで、昨年末の『NHK紅白歌合戦』にも企画コーナーで出演している。オリコンによればAqoursが1位を獲得するのは今回が初、また『ラブライブ!』関連のキャラクター名義によるシングル1位も今作が初だという。今回はその内、「僕らの走ってきた道は…」の方に注目したい。


■豪華な演奏陣で表現する回想の物語
作詞:畑亜貴
作編曲:EFFY(FirstCall)
ドラム:吉田太郎
ベース:黒須克彦
ギター:tasuku
ストリングス:真部裕ストリングス
テナーサックス:竹上良成
トランペット:小澤篤士、川上鉄平
トロンボーン:高井天音


 この曲は、これまでグループの辿ってきた過去を回想するような歌詞と、そのストーリーを音楽面から支える作りによって成り立っている。つまり、この曲のタイトルにもなっている“僕らの走ってきた道”とは、すなわちAメロで歌われる“0から1”の作業であり、“仲間と励ましあって”、“語り合った毎日”である。だからこそ、今作で求められるのは、ひとつひとつの楽器がまるで生きているキャラクターかのように録音されることで、それらが絡み合って、調和し合い、最終的には立派なグループへと成長した姿を、ダイナミックな演奏を通して提示することである。


 ピアノの独奏からゆったりと幕が開けるようにイントロは始まる。作詞は畑亜貴、作編曲はEFFY。両者とも1stシングルから関わり続けているAqours楽曲には欠かせない存在だ。そこから少しずつ仲間が増えるようにして楽器が合流し、豪華な演奏陣を従えてAメロへ向かう。なんてことないように見えるイントロだが、前述したポイントを踏まえれば、このイントロこそこの曲の最も言いたいことが詰め込まれているとすら言える。何者でもなかった主人公に少しずつ仲間が集まってくるような作りだ。2度繰り返される〈そうです!〉から始まるブロックは、1回目の日常的で穏やかなアレンジから、2回目のリズムが躍動するアレンジへと変化する。サビ直前でドラムが合流し物語が一気に加速。疾走感を増したところでサビへイン。ピアノのソロから始まった今曲も、サビの頃には全員集合して大団円を描いている。


 楽曲の世界観に豊かな情緒を肉付けしている弦の演奏はaikoやいきものがかり、近年はfhánaや北川勝利楽曲など、多くの作品へ参加している真部裕ストリングスによるもの。また、弦や金管隊によるオーケストレーションのみでなく、ドラムやベースといったバンド陣を加えたことで、楽曲に“走ってきた”感が加わっている。ドラムはTHE ALFEEやDIMENSIONなどと活動経験を持つ吉田太郎。ベースはQ-MHzとしても活躍中の黒須克彦。彼らの繰り出す決して目立ち過ぎない、けれどもしっかりと楽曲にグルーヴを与える演奏は、楽曲の肝といっても過言ではないだろう。迫力ある金管隊の存在も豊穣なサウンドを作り出すのにひと役買っている。


 こうした豪華な生音の録音は楽曲の世界観を表現する上で欠かせない。単に劇場版のテーマソングだから大掛かりな演奏にしようという意図ではなく、演奏が“生きている”からこそ聴く者はそこにストーリーを見出し、想像し、感動するのだ。キャラクターソングは主人公が架空の存在であるがゆえに打ち込みだけで作られることも多く、そうした場合、往々にして印象が“架空の音楽”止まりで終わってしまう。しかし、架空の存在だからこそ生の音で、生きた演奏を施すことで、聴く者にリアルな感動が届くのだ。(荻原梓)