はてな匿名ダイアリーに1月23日、「近い将来、東京都民は負け組となるだろう」とのエントリーがあり注目を集めた。「すでに東京の優位性はほぼ幻想と化している」と主張する投稿者は、近い将来多くの日本人が「別に東京じゃなくてもよくね?」と気付くときが来ると予想している。
昔なら東京でしか出会えなかったモノや人は、インターネットがその壁を低くしているし、東京でしか得られない「(文化的な)体験」も、「徐々に仮想空間に移行していくだろう」と断言。
「数十年後、地元に残り、少ない支出で両親の手厚い補助を受け、家庭や資産を築いてきた地方民と、孤独で資産のない東京都民との格差が浮き彫りになるだろう」
と、持論を展開した。(文:okei)
「美術館や音楽ライブ…東京でしかやってないことバカにならんほど多い」
ネットの普及によって、在宅や地方で仕事をする人は増えている。都会を捨てて地方に移住し、精神的な余裕が生まれた人もいるだろう。だからといって、東京の価値をそんなに下がったのか。追記によれば投稿者は、東京から妻の実家近くに戸建てを購入し、地方へ移住した人だった。
この投稿へのブックマークは700を超え、ほとんどの人が違和感や異論を唱えている。
「むしろ会うことの価値が上がって都内にいる人の価値が上がりそうな気がしてるけど」
といった、ネット社会だからこそリアルのコミュニケーションの大切さを説く声が多い。
また、両親の補助を受け「家庭や資産を築いてきた地方民」という部分にも、現実的ではない、という指摘が出ていた。確かに、地方が豊かなところばかりなら、ふるさと納税は必要ない。地方が両親と協力しあって生きていけるという前提もおかしいし、数十年後の東京都民が孤独で資産がないと決めつけているのも傲慢に感じる。
「文化的な体験が仮想空間に移行していく」という点にも納得いかない、という人が多かった。
「いやそれ重要だぞ。美術館だとか音楽ライブや伝統芸能やスポーツだとか…東京でしかやってないこと、バカにならんほど多いでしょ」
「教育」に関してもネットでは格差を埋めないという指摘もある。「体験」にお金を払う時代とも言われる中で、投稿者の主張はほとんど共感を得られていない。
「労働者にとって東京の利点は少なくなってる」との声も
一方で、全面否定はしないコメントも上がっている。仕事は数十年前とは状況が変わってきているからだ。
「確かに時間を切売りする労働者にとって東京の利点は少なくなってる。製造業が強い中京圏の方がマシかも知れない」
製造業に限らず、IT系も地域差はあまり関係ない。例えばシステム開発を行っている企業「ソニックガーデン」は、本社オフィスを持たず社員の半数以上が地方在住で在宅勤務をしている。スキーが趣味で長野に移住した社員もいるそうだ。こういった会社は今後も増えていくだろう。生活インフラさえ整っていれば、自然の多い所で子どもを育てたいというコメントも散見された。
投稿者は、地方と言っても限界集落のことを言ってないし、「いま生まれた赤ん坊が大人になって世の中を回していく時代を想定している」と説明を繰り返し、主張を覆す気はなさそうだった。むしろWeb会議が当たり前というネット民からこんなにも共感が得られないことを不思議がっていた。
言いたいことは分かるのだが、共感されないのも無理はない。地方(地元)に住むメリットが大きくなって、東京の優位性はそれほどでもなくなると思う、という主観的な内容を、わざわざ「負け組」いう言葉を使って説明しても反感を買うだけだろう。地域性に拘るより、自分のアイデンティティをしっかり持っていれば、それでいいのではないだろうか。