トップへ

Spotify、特定のアーティストを「ブロック」する新機能導入へ? その背景とメリットとは

2019年02月01日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 Spotifyが、“特定のアーティストをブロックできる”機能をiOSアプリでテストしていることを明らかにした。同機能は、ユーザーが特定したアーティストの楽曲を再生しないように設定できるというもの。Spotifyアプリのアーティストページから「このアーティストの曲を再生しない」をタップするだけで、該当するアーティストの楽曲をブロックすることができる、サブスクリプションサービスとしてはありそうでなかったブロック機能。Spotifyが同機能を導入した背景には何があったのだろうか。デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。


(関連:Spotify、“直接音源をアップロードできる”新機能で音楽シーンに与える影響とは?


「同機能ができた背景には、2018年にSpotifyが行ったヘイトコンテンツ対策があります。この対策は、“ヘイト行為をした”もしくは“ヘイト行為への疑惑がある”アーティストに対して、Spotify手動でプレイリストから削除し、プロモートを行わないとしたものです。しかし、Spotify手動で検閲することに対して多くのアーティストやレーベルが反対し、Spotifyはそのポリシーを撤回しました。そうした経緯を経て、Spotifyは“ユーザー手動”の新機能を導入しようとしているのです。


 ブロック機能を使用すると、該当アーティストの楽曲再生をブロックできるだけでなく、プレイリストやラジオにもレコメンドされなくなり、ライブラリにお気に入りとして入れていた場合であっても排除されます。あらゆるところからブロックしたアーティストの楽曲が再生されないようになるんです。R・ケリーの騒動などによって近年では“このアーティストの楽曲はレコメンドされたくない”という声がSNSで見られるようになっており、そうした世の中の流れを汲んで生まれた機能だと思います」


 昨今問題になっているアーティストのヘイト行為から生まれたというブロック機能。同氏は、ブロック機能についての課題や期待についても述べた。


「同機能に関して、“各アーティストのブロックユーザー数はレーベルにも共有されるのか”、“ブロックしたユーザーの属性(国籍や地域など)はどのように細分化されるのか”など、まだ明らかになっていない点も多いです。また、同機能はアーティストをブロックできる一方で、プロデューサーや作曲家をブロックすることはできません。アーティストだけでなくプロデューサーなどによるヘイト行為も発生しているため、Spotifyがこうした課題へどのように向き合っていくのか注目していきたいです。


 ブロック機能を利用すれば、ユーザーに合う音楽がより明確化されてマッチングしやすくなると思います。さらにレコメンデーションの効果も上がるため、各ユーザーに合うプレイリストが出てくるというメリットも期待できるでしょう」


 ブロック機能は、単にアーティストをブロックするだけでなく、活用すればより自分好みの音楽に出会える側面もあるという。元々優れたレコメンド機能で人気の高いSpotify。ブロック機能導入は、他社との差別化を明確にさせる大きな一手になるかもしれない。(北村奈都樹)