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「消滅都市」新垣樽助&西村太佑、吹き替えでも活躍するふたりが向き合うアニメの世界【インタビュー】

2019年01月31日 19:02  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

西村太佑さん、新垣樽助さん
全世界でプレイされている人気アプリゲーム『消滅都市』が、TVアニメ化。昨年2018年末には、4月よりTOKYO MXほかにて放送されることが明かされた。
メインキャストは、ゲームと同じくユキ役・花澤香菜さんとタクヤ役・杉田智和さんで、アニメ!アニメ!では、ふたりからはじまるリレーインタビューを行なっている。

第2弾の今回は、エイジ役・新垣樽助さんとギーク役・西村太佑さんにインタビュー。タクヤに大きく絡むキャラクターを演じているふたりは、自身のキャラクターをどう見ているのだろうか? ふたりが思う『消滅都市』とは?
[取材・構成=松本まゆげ/撮影=小原聡太]


『消滅都市』

2019年4月よりTOKYO MXほかにて放送開始予定

■名前がついた! 名前が変わらない! 命名悲喜こもごも
――おふたりは、ゲームがリリースされた2014年から『消滅都市』に携わっています。当時、ご自身のキャラクターにはどんな印象を持っていましたか?

西村
最初、セリフの数はそんなに多くなかったんですが、印象に残っているのはギークの「怖いんだ」というセリフです。ヘタレで弱虫で気弱というところが強調されているからこそのセリフで、ギークの印象そのものでした。

そこから、実はオタクでタクヤが大好きということがわかってくるんですが、弱いという印象は強かったですね。
そして、他人とは思えなかったです。自分と似ているなと思って。

――性格が、ですか?

西村
顔ですね(笑)。そういうところから膨らましていくことができたので、すごく入りやすかったです。

新垣
エイジは、ゲームでは名前がなくて「研究者」というキャラクター名でした。
最初に設定やセリフを見ていたときは、ゲームをスタートする前に主人公を送り出す人。いつもホームで待っている人なんだというイメージでした。

なので、“ホーム感”が出るように温かく演じようかなと思いましたが、白衣を着て疲れている印象もあって(笑)。
究明したい事柄に対してストイックなキャラクターなのかなという認識も合ったので、温かく演じたいんだけどかさを出しすぎてもいけないという塩梅が難しかったですね。

セリフ自体少なかったので、送り出すときのひと言にどういうものを込めようかなと現場ですり合わせて演じていたのを覚えています。


――ご自身と似ているころはありますか?

新垣
特にないですね(笑)。セリフの数は少ないけど、さっき言ったような自分が込めたいものは明確に合ったのでそれをやるのに必死でした。

――そうして向き合ったキャラクターが、アニメにも登場します。

西村
アニメ化すると聞いて、素直に嬉しかったです。ギークはどう動くんだろう、どれだけ俊敏に動くんだろうと楽しみでした(笑)。

新垣
僕はまず、研究者に名前がついた!という嬉しさがありました(笑)。「わぁ~名前がある! 俺の役エイジっていうんだ!」って。「エイジ」という名前自体もなんとなくしっくりきましたし。

西村
そういう変化があるので、ギークも名前がついたりするのかな?って気になっていたんですけど、そこはもう「ギークはギークで」と。
ギークの場合、ギークという愛称で親しまれていたのでそのままで良かったですね。
→次のページ:おなかが減るアフレコ現場

■おなかが減るアフレコ現場
――アニメになって表情がついたり動いたりすることで、キャラクターの輪郭がはっきりするという話はよく聞きます。それによって芝居に変化はありましたか?

西村
その前にゲームのフルボイス収録やドラマCDなどがあって、セリフ回しや世界観がなんとなく広がっていたんです。
そこからアニメになり、絵と合わせる作業や人と合わせる作業が加わったので、よりリアリティある会話になったなとは思いますね。

新垣
変化というよりは、多面的にやったほうが良いというのはありましたね。
例えば、出している言葉が100%自分の言葉じゃないという会話がある場合、そこで人間らしさというか、人間としての存在感を出せる思うんです。それに会話するし動きますし。

ひらべったくのっぺりするのは嫌じゃないですか。立体感を出すためには一言一言にどういう感情を乗せるか。
ため息やセリフ前の吸う息ひとつでも変わってきますからね。

――繊細なお芝居が求められるんですね。1話のアフレコを行なう段階では、絵が完成していたと聞きました。

新垣
ゲームやドラマCDのときは、自分が作ったキャラクターの“間”で演じていたところがあるんです。
アニメでは絵を描いた方と演出家の方の意図が合わさったところに僕らの演技を乗っけていくので、絵が完成している場合はそこにさらに難しさは感じましたね。

西村
基本的にシリアスな物語なので、芝居も全体的に淡々としているんです。
そんな世界観の中で、ポスターのギークがすごくイケメンに写っているから(笑)、「演技変えなきゃいけないかな?」って不安に思った瞬間はありました。


西村
でも、実際のアフレコでは「明るく」だったので。おっちょこちょいでテンションが高くて、みんなを助ける大きな力を持っているというイメージで臨んでいました。

――ギークの明るさに救われるところはありますよね。

西村
コミカルで場を温める存在ですからね。どんなに暗い流れでも、ギークはポッと明るくするような微笑ましいトーンを心がけていました。

――そこがアニメでもアクセントになりそうですね。では、演じるキャラクター以外に好きなキャラクターっていますか?

新垣
ストーリーのなかではほぼ絡みがないんですけど、ソウマですね。
ソウマって、お姉ちゃんを持つ弟じゃないですか。僕にも兄と姉がいて、「子ども扱いするな!」という経験があるんです。「弟だから」と扱われるのを嫌うというか。

そこは「わかるわかる」とすごく感情移入してしまいます。キャラクターとしても魅力的だし、お芝居もすごく好きだったので。
収録のとき、ソウマがしゃべるシーンは気になっていましたね。

西村
設定上、ギークはタクヤ愛がすごいんですよ。なので、どうしても入り込んじゃってタクヤが好きですね。
杉田さんに対しても、それは伝えていたかも。収録のときも杉田さんと席が隣だったので、どうしてもタクヤ愛は大きくなっちゃいますね。


――アフレコはすでに終わっているそうですが、現場の雰囲気はいかがですか?

西村
楽しく話をしながらやってました。直前まで盛り上がってるんだけどマイク前に入るとスッと切り替わって。

――例えばどんな話を?

新垣
夕方の収録だったので、おなかが減ってくるんですよ。
だから自然とご飯の話になっていました。あのお店のあれが美味しいとか、差し入れなら何が良いとか言い合って、どんどん自分たちの空腹を深めていっていました(笑)。

で、「おなか減ったね~」って帰っていく。打ち上げも中打ちと全部録り終えたあとの2回やりましたね。おいしいビールを飲ませていただきました(笑)。

西村
そうでしたね。キャストさんみんな集まってできました。ああいう場で腰を落ち着けて、お酒を飲みながらできる話だったと思います。
現場でもそうですけど、杉田さんが場を和ませるひと言を発してくれるんです。ムードメーカーですね。

■過去の共演歴は人気海外ドラマ!
――おふたりと言えば吹き替えでも活躍されていますよね。アニメのアフレコと外画の吹き替えにはどんな違いを感じますか?

西村
吹き替えは向こうの役者さんが演じていらっしゃる“表情と呼吸”があるので、そこにある音を何度も聞いて合わせるというやり方ですね。
あちらの役者さんが日本語を喋っているように、自然にやれるようにという心がけはあります。絵ではない、生身の人が喋っているわけですから。


――対するアニメは、生身の人間ほど表情が動かないから誇張する必要がありますよね。

西村
それはありますね。で、自分発信じゃないですか。吹き替えの場合は向こうの役者さんの演技があって、それをこちらで当てていくんですけど。

新垣
そうですね。感覚としては、1回完成してるものを壊さないように日本語にする日本語吹き替え版と、僕らが最後に声を入れて完成するアニメという。
声を入れるという意味では同じですが、役割が違う気はします。

演じるうえでも、キャラクターの情報を読み取って壊さないようにする吹き替えとキャラクターを自分で作るアニメ、役作りのプロセスも違いますね。

西村
違いこそあれ、どっちも楽しいですね。

――吹き替え作品では、共演歴はありますか?

新垣
ガッツリ共演するのは、今回がはじめてですよね?

西村
そうですね! 最初はゲームなので収録もバラバラでしたし、イベントで一緒になってようやくという感じでした。
ただ、僕は一方的に『HAWAII FIVE-0』(ハワイ・ファイブ・オー/アメリカのTVドラマ。新垣さんはシーズン7までメインキャストとして出演)を観ていたので、ゲストで呼んでもらったときは「うおーー! 樽助さんだーー!」って思ってました。

新垣
ありがとうございます(笑)。


――では、今回ガッツリ共演されてお互いのお芝居をどう見ていましたか?

西村
僕はもう完全に、低い声でぼそっとしゃべる樽助さんが「渋いなー!」「こんなに低いトーンがいけるんだ!」と思っていました。ボソッとひと言発する感じが渋いんですよ。

新垣
恐縮です! 僕は西村さんのギークを見て、タクヤとの友情に対しても大好きなアイドルに対してもすごく情熱的だなぁと思っていました。だって、演技している最中も汗かいているんですよ。

西村
そうですね(笑)。

――まさに熱演ですね。

新垣
そういう、西村さんの情熱的な演技がすごく好きだなと。
ゲームの収録は別だし、ドラマCDでも1度一緒にやっただけだったのでアニメのアフレコを毎週続けていくうちにわかってきました。

しかもずっとそのテンションを保てるんです。自分も演じる側なので大変なんだろうな、テンションを上げなきゃ絶対できないもんなっていう感覚はあるんですよ。
それをずっとやってらっしゃるのですごいなって思います。

西村
汗かいた甲斐があります(笑)。

→次のページ:イベントでギークファン増加中?

■イベントでギークファン増加中?
――『消滅都市』には、「だから、生きていく。」というコピーがあります。「悲しいことも乗り越えていく」という意味が込められているようですが、おふたりにはこれまでにあった一番悲しい出来事と、それを乗り越える方法を聞きたいです。リアルなお話でも、軽いお話でもどちらでもかまいません。

西村
僕、両親が他界しているんです。早くに亡くなってしまったのが母で、そのときはまだ声の仕事をそんなにできておらず生前に作品を観せてやりたかったなっていう思いが強かったですね。

その数年後に父親が他界したんですが、父には自分のやっている仕事を応援してもらえて、ビデオに録って見てくれていたので、作品に関われて、ひとつの作品を残しているのが恩返しできているのかなって思います。
映画やアニメを観るのが好きな両親だったので。


――西村さんがこのお仕事に就いたのも必然的ですね。

西村
実は母方が歌舞伎の家系だったんですが、その事実を知らぬうちから目指していましたね。20代の頃にはじめて知ったんですが、確かに両親の血が流れているんだなと思いました。
そういうこともあり、親に仕事の報告ができることが僕にとって乗り越えるものになっていますね。

新垣
この歳になるとどうしても悲しいことが人の死なので、僕もそういった話になりますが……実は「樽助」という名前は芸名で、祖父の名前なんです。
祖父は僕が生まれる前に亡くなっていたんですが、おばあちゃんは僕が声優の仕事を始めてからも存命で。

おばあちゃんは、僕がどんな仕事をしているのかよく理解していなかったんですが、出演した番組を「観てね」って報告したんです。
そうしたら、僕がどの役で喋っているのかはわからなかったけど、エンドロールに自分の旦那さんの名前が出てきて。「びっくりした」って言いながらすごく喜んでくれました。


――素敵なお話ですね。

新垣
それが、僕が仕事をするモチベーションになっていますし、おじいちゃんの名前を背負っているからには名に恥じない仕事をしなければと決意もできるので、それが原点になっています。

数年前に祖母も他界して、僕の中の柱がひとつなくなってしまい結構落ち込んでしまったんですが、おばあちゃんが喜んでくれたようにお客さんに喜んでもらおう、外に恩返しを向けていこうと思うようになりました。
乗り越えることはできないかもしれませんが、ずっと抱えているのも良いんじゃないかなと思いますね。

――貴重なお話、ありがとうございました。最後に、2019年4月からTVアニメが放送スタートしますが、おふたりが思う『消滅都市』の魅力を聞かせてください。

新垣
ストーリーももちろん魅力的なんですけど、それを盛り上げる音楽にすごく力を入れているな、という印象です。アニメになっても、シーンを盛り上げる効果音やサウンドはお客さんも期待しているところですよね。

西村
それはありますね。カッコいいんですよね。

――あの世界にしかない音楽なんですよね。

西村
そうですよね! 入り込んでしまうのはあの音楽あってこそだと思います。それにイベントに出演したとき思ったのは、お客さんの盛り上がりもすごい。

新垣
熱量がすごいんですよね。こちらも負けないようにしないとって思うくらい。

西村
僕も盛り上げようと、ギークに入り込んで衣装も合わせたりしているんです。そうしたら、(客席に)ギークの格好をしている集団がいて!(笑)

――『消滅都市』ファンも入れ込んでいますよね。そこも作品の魅力かもしれません。アニメも楽しみです。

西村
PVを観ただけでも、こんなふうにキャラクターたち動いて躍動的になっているんだって感じられて楽しみが増しますね。
そこに音楽が入って、SEが入って僕らの声が入ってという段階を経ると、ゲームとはまたぜんぜん違った「そこを飛び出した立体の世界」があると思います。

あと、台本に「手ブレ」って書いてあるシーンが結構あったんですよ。手ブレのようにブレている映像になるってことですよね。
どんな感じなるんだろう、と思いますしぜひ楽しみにしてもらいたいです。

新垣
まず、ゲームをプレイ済みでアニメを楽しみにしている方に。会話をしていないときの動きや会話を経ての仕草など、ゲームでは描かれていない場面がアニメでたくさん描かれています。
きっとキャラクターから違う印象を受けると思いますし、生活感も感じられると思います。
こんな家に住んでるんだ、こんな御飯食べるんだっていうのがわかって、またキャラクターの魅力につながるはずです。

そして、ゲームをプレイされたことない方には、名前くらいは聞いたことがあるかもしれない『消滅都市』は、すごく奥深い世界観で、魅力的なキャラクターたちがいるんだっていうのをまず知っていただけると思います。
そうしてゲームをやってまた新しい世界を知れるはず。ぜひ、楽しんでください。

『消滅都市』
【TV Animation Staff】
原作:消滅都市(WFS)
監督:宮 繁之
シリーズ構成:入江信吾
キャラクターデザイン:下谷智之
音響監督:本山 哲
音楽:川井憲次
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:マッドハウス

OP主題歌「答」
歌:阿部真央
作詞・作曲:阿部真央
編曲:akkin

ED主題歌「With Your Breath」
歌:SPR5(CV:社本 悠、岩井映美里、直田姫奈、大西亜玖璃、園山ひかり)
作詞:太田彩華、俊龍
作曲:俊龍
編曲:山口高始

【Cast】
ユキ:花澤香菜
タクヤ:杉田智和
アキラ:中村悠一
ソウマ :朝井彩加
エイジ:新垣樽助
キキョウ:愛美
ギーク:西村太佑
ユミコ:中恵光城
コウタ:高橋 信
スズナ:佐倉綾音
ヨシアキ:松岡禎丞
ツバサ:島崎信長
ルイ:KENN
スミレ:日岡なつみ
リョウコ:黒沢ともよ
ユウジ:???
ケイゴ:???
シュンペイ:???
ホムラ:社本 悠
ナミ:岩井映美里
ハルカ:直田姫奈
レナ:大西亜玖璃
ユア:園山ひかり
(C) Wright Flyer Studios/消滅都市製作委員会