オダギリジョーの長編初監督作品『ある船頭の話』が、9月から東京・新宿武蔵野館ほか全国で公開される。
オダギリジョー自身が長年温めてきたオリジナル脚本を映画化する同作。橋の建設が進む山村を舞台に、川岸の小屋に住んで黙々と渡し舟を漕ぐ日々を送る船頭・トイチの前に1人の少女が現れたことから、トイチの人生が大きく変わっていく様を描く。
主人公のトイチ役を演じるのは柄本明。トイチのもとに遊びに来る村人の源三役を村上虹郎が演じる。撮影は1月11日にクランクアップを迎えた。
撮影監督は『ブエノスアイレス』『恋する惑星』『花様年華』といったウォン・カーウァイ作品で知られるクリストファー・ドイル。衣装デザインは黒澤明監督『乱』で『アカデミー賞』衣装デザイン賞を受賞したワダエミ、音楽はアルメニア出身のジャズピアニストで、映画音楽に初挑戦するティグラン・ハマシアンが手掛ける。
■オダギリジョー監督のコメント
人が生きる上で、便利な物が増えていくのは必然だと思います。しかし同時に、文明の発展の陰で消え行く物も多いのではないでしょうか。便利になっていく一方で失ってしまう大切な何か。
資本主義が競争社会を生み出し、いつの間にか変わってしまった『幸せ』の定義。
一人の船頭を通して見つめる『本当に人間らしい生き方とは?』美しい日本の原風景を季節と共に切り取り描きたいと思っています。
■柄本明のコメント
オダギリジョー監督に船頭の役を頂きました。
一生懸命演りました。見て頂ければ幸いです。
■村上虹郎のコメント
灼熱の日差しに焼かれながらも、雄大な川の上で柄本さんが漕いてくださる舟にたくさん乗りました。
これでもかと言わんばかりの魅力的な集団の一員として、両極の季節を跨ぎ、夏はあの生き物とあんな事をして、冬はただただ寒くて死にそうで。
柄本さんとは、この頃作品でお逢いし過ぎて毎度なんだよお前って煙たがられ、この作品でもずっと話しかけている役なのでそろそろ嫌われそうですが、時々話す英語がいきなりすぎたり、急にぽろっと哲学が出てきたり。とても贅沢です。
容赦無く移りゆく景色と時間を優美に描くオダギリさんの脚本が、どう彩られているのか。おたのしみに。