トップへ

新田真剣佑×北村匠海×高杉真宙が語る、『十二人の死にたい子どもたち』で受けた同世代からの刺激

2019年01月30日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 直木賞候補として話題になった冲方丁のサスペンス小説を実写映画化した『十二人の死にたい子どもたち』が1月25日より公開中だ。堤幸彦が監督を務めた本作では、安楽死を求め廃病院の密室に集まった12人の未成年たちが、13人目の死体を発見したことによって奇妙な出来事に遭遇する模様が描かれる。


参考:『3年A組』『十二人の死にたい子どもたち』は“スター候補”だらけ? 2作品の若手俳優を一挙紹介


 今回リアルサウンド映画部では、クスリや医療機器に詳しい推理好きのシンジロウを演じた新田真剣佑、学校で人気者の爽やかな青年・ノブオを演じた北村匠海、そして安楽死の集いの主催者・サトシを演じた高杉真宙にインタビューを行い、平成生まれのキャストだけの現場の雰囲気や、今回共演した互いの印象などについて語り合ってもらった。


ーー今回の作品は何と言ってもキャストの豪華さが大きな話題となっています。


北村匠海(以下、北村):12人集まるとやっぱりすごいんですよ。その中にまっけんや真宙くん、(杉咲)花ちゃんたちがいて……。これだけのキャストが集結することなんて、この先もうないんじゃないかというぐらいです。同世代の同じラインで頑張っているみんなが集まるのだけでも単純にすごいので、このラインナップは刺激的でした。


高杉真宙(以下、高杉):匠海くんもまっけんくんもそうですが、僕は今回意外と初めましての方が多かったんです。堤監督も含め、いつかご一緒したいなと思っていた方ばかりでしたし、こうやって一気に集結して一緒に仕事ができるとは思ってもいなかったので、楽しみな分、緊張もすごかったですね。「どうしようかな」と思うことも長い時間ありました。ただやっぱり、撮影自体はとても充実していましたね。


新田真剣佑:(以下、新田):芝居でぶつかれる12人が集まったので、やっていてとても気持ちがよかったですね。しかも監督が堤さんという。その空間はとても居心地がよかったですし、堤ワールドの中で生きられたのは幸せなことでした。


ーーそれぞれの印象はどうでしたか?


北村:真宙くんは共通の友人が多いんですけど、共演自体は意外と今回が初めてで。僕はもともと『乾き。』の真宙くんがすごく好きだったので、共演も楽しみにしていました。実際に共演してみて分かったのは、お芝居のブレなさ、信念や意思がすごく強くて、ものすごくストイックだということ。サトシのニヤついた顔など真宙くんの細かいジャブが、かなり映画に効いていると思います。


高杉:僕も共通の友人から匠海くんの話はいろいろ話を聞いていたので、ずっと会いたいなと思っていたんですよ。なので今回初めてご一緒できるのがすごく嬉しくて。ノブオという役はどんなふうになるんだろうとずっと思っていたんですけど、匠海くんのノブオには何ひとつ違和感がありませんでした。そのナチュラルさや台詞回しの独特な感じが歌を歌っているようで、すごく心地よかったです。


北村:まっけんとは何回か共演してますけど、「シンジロウそうくるんだ!」という意外な感じで、やっぱり面白いなと思いました。僕が台本を読んだ印象だと、テンション的にはシンジロウは真宙くんが演じたサトシみたいな感じかなと思ったんです。


高杉:そう思ってた!


北村:でも監督の中でバッチリとハマっていたし、いざ現場に入ると、ちゃんとシンジロウとしての存在感に説得力があって。そこでまっけんのことを改めてすごいなと思いました。


高杉:僕は正直、まっけんくんがこんなにフレンドリーな方だとは思っていなくて……(笑)。


新田:(笑)。


高杉:いや、でも本当に壁を感じさせない方なんだなと思いました。僕はどちらかと言うと人見知りな方なので、こんなに素敵に距離を縮めてくれる方はなかなかいないなと。そのまっけんくんの人柄が、シンジロウのリーダー感にも繋がっているのかなと思いました。匠海くんが言っていたように自分が想像していたシンジロウとは全然違う印象だったんですけど、「これがシンジロウだ」と思わせる説得力を現場で感じましたし、サトシとしてはシンジロウが回してくれる安心感がありました。


新田:真宙くんはとてもシャイだろうなと思っていたので、その殻をぶち破ってやろうと最初から思っていました(笑)。同級生だったり出身校が同じメンバーだったりが集まって、嬉しかったですね。


ーー撮影で印象に残っていることは?


新田:(橋本)環奈ちゃんが坂ちゃん(坂東龍汰)に怒ってた記憶しかない(笑)。


一同:(笑)。


北村:僕も坂東には怒ったよ(笑)。


高杉:みんなに怒られてる(笑)。


北村:同い年なんだけど、すっごい無邪気なんだよね。自分にはない、年相応なエネルギーがあって……。


新田:匠海はおじさんだもんね。


北村:おじさんになっちゃたので……(笑)。


新田:(北村を指差して)おじちゃんじゃん、(自分を指差して)おじちゃんじゃん、(高杉を指差して)おじいちゃんだからね。


一同:(爆笑)。


新田:この3人でいると本当におじいちゃんの集まりみたいな(笑)。


北村:あと、花ちゃんがすごかった。昔から知り合いで今回久々に会ったんだけど、半端ない女優さんだなと。現場でのスタンスが本当にストイックだし、終盤の花ちゃんとまっけんがぶつかり合うシーンなんかは、「この2人、ヤバいな」と素人みたいになっちゃって(笑)。


新田:あれは気持ちいいシーンだった。あとは(萩原)利久だね。利久がすっげーよかった!


北村・高杉:あ~よかった!


新田:この中で一番難しい、細かいところまで芝居をしなきゃいけない役だったと思うんだけど、やりすぎることなく、本当にいい塩梅で芝居をしていて。見ていてすごく気持ちよかった。


北村:この役は難しいよね。でも、役に悩んでいる素ぶりは全くなかったよね?


新田・高杉:なかったなかった。


北村:本読みの時からもう既に出来上がってて、天才なんだなって。


高杉:確かにずっと変わってなかったね。


北村:本読みってどこか探り探りのところがあるけど、利久はスッと1歩目から……。


高杉:もうゴールだったもんね。


新田:スタート、ゴール! みたいな(笑)。あと、一番笑ってたのは(吉川)愛ちゃんだね。


北村:そうそう。明るい髪の毛の2人(坂東龍汰と吉川愛)がすごく太陽みたいで。


新田:この中でずっと笑顔でいなきゃいけない愛ちゃんは辛かったと思うよ。あと(竹内)愛紗ちゃんもよかった。


北村:いいよね。


新田:とてもよかった!


ーーキャストの皆さんが“全員平成生まれ”というのも大きなポイントですよね。


北村:珍しいですよね。しかも本当に12人(+1人)しかいないですから。エキストラさんもいなければ、場所のシチュエーションも2、3個しかない。


新田:上映時間2時間のうち、1時間半は密室だからね(笑)。


高杉:ワンシチュエーションと言っても過言ではない。


北村:僕はこういう密室ゲーム系の映画が好きなんですけど、今回は本当に言葉でしか戦えない、ほとんど会話劇のようで。各々が自分の口から出る言葉で同世代のみんなと駆け引きしていく感じは、僕個人としても面白かったです。


新田:派手な動きがない分、言葉での展開がすごいから、今まで全く経験したことのない新しい現場だったね。


高杉:確かに今まで経験してきた現場とは全く違ったかも。


新田:また現場の雰囲気もそんな感じなんだよね。本当に密室のようで……。


北村:病室がちょっとどんよりしていて……。しかもずっとスタジオにいるとだんだん空気も薄くなってくるから、本当にそういう場所なのかなと思っちゃって。


新田:今その場に行ったら空気の重さに押しつぶされてしまいそう。その時はそれに打ち勝つものを持っていたんだなと思うと、それはすごいことだなと。


北村:ただ、現場の空気としては、ワイワイする人もいれば自分自身のお芝居に集中する人もいる感じだったよね。明るい太陽のような子もいれば、月のような子もいる。同じ世代の役者が12人も集まると、やっぱり各々の個性がすごくて。それがお芝居だけじゃなくて楽屋や休憩中の過ごし方にも出ていたんじゃないかな。


高杉:スタッフさんが明るかったから、そこには救われたよね。


新田:救われたね。それは結構大きかったと思う。


高杉:もしスタッフさんもピリピリしてて怒号も飛び交う感じだったら、もう現場にいられなかったかも。


新田:監督は“天の声”システムでね(笑)。


北村:撮影が始まる時と終わる時ぐらいしか姿が見えないという(笑)。


高杉:声だけで聞くとどんな風に思っているのかわからないけど、現場に来るとジョークを飛ばしたりニコニコしてたよね。


新田:基本的に天の声でコメントとか言わないじゃん。だから、たまに芝居が終わって言ってくれる「素晴らしい!」っていうの嬉しくなかった?


高杉:嬉しかった!


北村:ハンコを押された感じがしたね。


ーー若い同世代だけの現場だと、「こいつには負けないぞ!」というようなライバル心が芽生えたりもするのかなと思ったのですが、意外とそういう感じではなかった?


高杉:僕もこれだけ同世代が集まるとそうなるのかなと思っていたんですけど、実際は全然そんなことなくて。自分自身のことで精一杯な部分もあったんですけど、それぞれに対しての尊敬の部分が大きかったですね。


北村:お互いの芝居のいいところをちゃんと見て、みんなで一緒にいいものを作っていこうという意識が強かったです。


新田:チームとなっていい作品を作ろうという思いがあったので、お互いに刺激を与えて刺激を受けた現場でした。誰かが誰かの足を引っ張ることもなく、みんなで上に上がっていく一方だったから、撮影もスムーズにいったんだと思います。


北村:結果的にお互いのいいところを引き出せたよね。


新田:芝居をしていて本当に気持ちがよかった。まあセリフは苦だったけど(笑)。


北村:シンジロウは1年分ぐらい喋ってるからね(笑)。


高杉:あれは本当に大変だよね。


新田:2018年、あそこが一番喋りました(笑)。


(取材・文=宮川翔)