2019年のWRC第1戦モンテカルロで優勝し、同大会6連覇を達成したセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が、競技最終日は「完走できるかどうか怪しい状況だった」と明かしている。
2017~18年の2シーズンに渡り在籍したMスポーツを離れ、今季は古巣シトロエンへ合流したオジエ。シリーズ開幕戦モンテカルロでは、昨年もシリーズチャンピオンを争ったティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)と接近した優勝争いを繰り広げた。
SS13~16の4SSが行われた競技最終日に4.3秒リードで臨んだオジエだが、この日は思うようにペースを挙げられず、SS15終了時点でリードが0.4秒まで削られてしまう苦しい展開に。
僅差で臨んだ最終SS16、オジエは2.2秒差でヌービルを抑えてフィニッシュ。モンテカルロ6連覇を遂げるとともにチーム移籍初戦を白星でスタートさせた。またシトロエンにとってもブランド創立100周年のメモリアルイヤー初戦を勝利で飾ると同時に、WRC通算100勝の節目となった。
しかし、このときオジエのC3 WRCはアクセルが戻らない症状が出ており、「完走できるかどうかも怪しい状態」だったという。
オジエはWRC公式サイト『WRC.com』に対し「いくつかの場面でアクセルから完全に足を離していても、スロットルが戻らない症状が出ていた」とコメントしている。
「このトラブルのせいでマシンが完全にストップしてしまうか、あるいはコースオフしてしまうか、とにかく難しい状況に追い込まれたし、ストレスも感じていた。完走できるかどうかも怪しかったからね」
「気分良く運転できる状況ではなかった。(移動区間で)マシンを少し修復したんだ。トラブルを完全に改善できたわけではないけど、スロットルが戻らなくなる症状は治すことができた」
「代わりにアクセルのレスポンスが悪くなってしまったけど、少なくともまともに運転できる状態にはできたんだ」
オジエとコンビを組むコドライバーのジュリアン・イングラシアも「最終ステージを走る前、エンジニアに『僕たちにできることはないか』と尋ねられたから、『ロウソクに火をともして祈ってくれ。あと念のためレッカー車とけん引用のベルトも準備しておいてくれ』と伝えた。全力でアタックするつもりで、何が起きても不思議ではなかったからね」と当時の状況をふり返っている。
シトロエン・レーシングの指揮を執るピエール・ブダールは「今回の勝利はセンセーショナルかつ、象徴的なものになった」と述べた。
「ラリー・モンテカルロのような伝統的、かつ大会の大部分がフランス国内で行われるシリーズ初戦で勝利し、WRC通算100勝目を手にしたことは我々にとって大きな意味を持つ」
「それにセバスチャンとジュリアン、シトロエンの組み合わせでの通算勝利回数を8に伸ばすこともできた。彼らともう一度タッグを組むと決めたとき、新たな歴史の1ページを刻めると確信していたが、初戦からこういった結果を出すことができるとは思っていなかったよ」
シトロエンは過去2シーズン苦戦を強いられてきたが、今回の勝利で2019年シーズンを最高の形でスタートさせたことになる。しかし、オジエのチームメイトであるエサペッカ・ラッピはエンジントラブルにより競技3日目にリタイアしており、オジエを襲ったトラブルも含め、シトロエンには迅速な信頼性向上が求められそうだ。