2019年もピレリ・スーパー耐久シリーズは、「SUZUKA S耐 春の陣」として鈴鹿サーキットで幕を開ける。新たなシーズンには、ドライバーラインアップに変化があれば、新チームの参入、話題のニューマシンの登場と、未知なる要素によってこれまでとは異なる刺激的なレースが期待できそうだ。
開幕ラウンドは、全クラス混走で、50台以上のマシンが一斉にコースを疾走する。スーパー耐久シリーズは、クラスごとに速さが異なり、いたるところで抜きつ抜かれつの連続となる。5時間にも及ぶ長丁場であっても、決して見飽きることはないはずだ。
鈴鹿サーキットでは、さまざまな観戦スポットがある。この長さを有効に活かして1カ所に留まって観戦するのではなく、いくつかのスポットに移動してみることをオススメしたい。きっと、いつもとは違ったレース観戦を過ごせることだろう。
耐久レースといえば、「久しく耐える」というとおり、以前ならマシンやパーツをいたわったり、燃費を考慮したりするペース配分が必要とされたが、現在のスーパー耐久はそんな消極策では勝利はおぼつかない。近年のレベル向上は著しく、積極的に攻めていかざるを得なくなっている。
実際、2018年に総合優勝を飾った浜野彰彦/星野一樹/藤波清斗組のY’s distraction GTNET GT-Rは、昨シーズンに導入されたばかりのFCY(フルコースイエロー)をうまく活用。
認められているピットストップを行ってマージンを稼いだことで、一躍トップに浮上した。その後、激しいバトルを繰り広げ、いったんは後続車両の追突によって順位を落としてたが、諦めず攻め続けていった結果、逆転を果たすこととなった。
また、ST-3クラスでは、堀田誠/阪口良平組のmuta Racing ADVICS IS350 TWSが、ゴール間際の後続車両による追撃を、コンマ5秒差で退けたのも圧巻の一言だった。
最初のピットでタイヤを左側の2本だけ、次に4本交換、最後は無交換としてタイムロスを最小限として、マージンを稼いで逃げ切ることができた。
こうしたピット戦略もタイミングと合わせ、勝敗を大きく左右する要素になっている。トップチームの流れる作業、素早いドライバー交代は芸術の域にも達しているので、是非とも注目してほしい。
■2018年は鈴鹿ウイナーがシリーズチャンピオンに
2018年の「SUZUKA S耐 春の陣」のリザルトを振り返ってみると、ポール・トゥ・ウインを飾ったのは、7クラス中2クラスだけだった。
スーパー耐久は、AドライバーとBドライバーのタイム合算で決勝レースのグリッドを決める、独自の予選システムを採っているため、絶対的な韋駄天ドライバーがいようとも、必ずしもポールポジションが獲れるとは限らない。
むしろ、ふたりともトップではないのに、ポールポジションが獲れることもある。だから予選と決勝のリザルトが直結しにくいともいえるが、上位陣の実力は、それだけ伯仲しているという見方が正しいだろう。
その一方で、開幕戦の全クラスのウイナーが2018年のクラスチャンピオンに輝いていることには、少なからず驚きを覚えた。
開幕戦から、いきなり5時間もの長丁場を戦うことが大きく影響を及ぼしていると考えられるほか、2018年はコントロールタイヤがピレリに改められたことも影響しているだろう。
最後までハイペースを維持できる体制をいち早く築き、なおかつ従来のタイヤとは異なる特性を完璧に把握できていた強みが、シーズンを通して活かされたからではないだろうか。
タイヤへの把握は、どのチームも1年間の活動によって、かなり進んだに違いない。さすがに引き続き開幕戦全クラスのウイナーが、そのままチャンピオンということはないだろうが、スタートダッシュがタイトル争いに効くことは間違いないはずだ。
そのスタートダッシュを決めるのは、どのチームだろうか?
まだエントリーが確定していないが、ST-Xクラスに関しては、Y’s distraction GTNET GT-Rが体制不動での参戦が濃厚。鈴鹿の相性はチームのみならず、とりわけ星野に関してずば抜けて高く、スーパー耐久鈴鹿戦では2年連続で優勝を飾っている。
また同じく不動での継続参戦が濃厚な、ST-2クラスでDAMD MOTUL ED WRX STIを走らせるTOWAINTEC Racingには、記録更新をかけたシーズンの初戦ともなる。
ST-1クラスとST-Xクラスをまたいで連覇の記録は、2008年から13年までのPETRONAS SYNTIUM TEAMが6連覇をしているが、昨年ですでに連勝記録は並んでおり、同一クラスでは記録を更新。7連覇となれば、前代未聞の快挙達成となる。
一方、鈴鹿では初成立となる、ST-Zクラスにも注目したい。GT4車両で争われるクラスは2018年、成立したのが3戦だけで、いずれも孤軍奮闘となっていた。
しかし、2019年はすでにKTMカーズジャパンがKTM X-BOWでの参戦を表明、ENDLESS SPORTSがメルセデスAMGを東京オートサロンで展示するなど、複数の参加が確実になっている。
GT4車両はもともとジェントルマンドライバーをターゲットとしているだけに、アクティブ&セーフティが特徴とあって、耐久レースとの相性は抜群。コストパフォーマンスにも優れることから、さらにエントリーを増やす可能性もあろう。何よりバトルが見られるのが嬉しいところ。競い合う中で見せる、本当の戦闘力を楽しみにしたいものだ。
他のクラスも盛り上がり必至だ。国内ビッグレース最初の開催となる3月23~24日が今から待ち遠しい。