2019年01月28日 19:02 弁護士ドットコム
上司から強い叱責やセクハラなどを受け適応障害を発症し、「復職可能」なのに強制的に退職に追い込まれたのは不当だとして、男性(27)が勤務先のNEC子会社とその指定医を相手取り、地位確認や慰謝料などの支払いを求める訴えを1月28日、横浜地裁に起こした。
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男性は提訴後に横浜市内で開いた会見で、「弱い人を排除することは到底許されない」と悔しさをにじませた。
被告のNEC子会社は、映像装置の製造・開発などを手がける「NECディスプレイソリューションズ」(NECDS、東京都港区)。男性は大学卒業後の2014年4月、NECDSに入社した。
訴状などによると、男性は入社1年目の忘年会で、出席者の前で部長とお尻の大きさを比べさせられたとして、「セクハラであり、強い精神的ショックを受けた」と主張。
また、入社2年目の2015年4月から業務内容が広がった一方、経験がまだ乏しく、他社員に比べて仕事に時間がかかる状態だった。このため「サービス残業」により職場の期待に応えようとしたが、無許可での残業だったため、上司から3度ほど強い叱責を受けたという。
男性は「やむを得ずサービス残業をしているにも関わらず、理解されず、叱責をされたことに対し、ショックを受けると共に職場に対する強い失望を抱くようになった」としている。
以降、毎日の仕事が始まるのがつらくなり、週1回程度、朝礼時に涙を流すこともあった。2015年9月以降になると症状が悪化し、業務中に涙が止まらなくなることもあったという。
2015年12月、男性は突然、従業員4人に押さえこまれ、職場から強制的に追い出されたと訴えている。あらかじめ会社が呼んでおいた両親の車で、男性は実家に帰ることに。会社から両親のもとに「息子さんが泣いていて、会社で対応しきれない」などと電話があったという。
翌日、男性は親が予約したメンタルクリニックを受診し「適応障害」と診断された。2016年1月になって、男性について「復職が可能な状態であると判断する」との医師の診断書が会社に提出されたが、会社は男性が職場に戻ることを認めなかった。
会社は、会社の指定医が「能力発達に元々特性があり、業務に支障をきたす人」と診断したことに着目。復職を認めないまま、休職期間の満了をもって「自然退職」の扱いにしたという。
会見で、男性の代理人を務める川岸卓哉弁護士は「精神疾患が急増しているなかで、どう患者の復職を支援していくかは大きな課題。会社は1度適応障害を発症した労働者を強制的に追い出して、しかも複数人の医師が治ったと言っているのに復職を認めなかった」。
男性は「会社には『病気を治すための休職制度はある』と言われたが、実際に休んだ結果、『お前が戻る場所はない』と言われた。裏切られた気持ちがとても強い」と怒りをあらわにした。
NECDSの広報担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「本日似たような問い合わせを受け、(提訴について)把握しました。詳細については、まだよくわかっていません」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)