WTCR世界ツーリングカー・カップを最高峰に、地域選手権や各国国内選手権など多数のリージョン選手権を抱えるTCR規定ツーリングカー・シリーズ。その全体を統括するWSC Ltd.は、2019年シーズンに先立ち各車のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)テストの実施方法を変更すると発表。2019年の性能調整に向けたトラックテストに参加するのは、TCR規定の認可を新規取得したモデルに限定するとアナウンスした。
従来、シーズンインを前に行われていたBoPテストは、そのシステム導入のモデルケースとなったGT3規定同様に、年度ごとに指定されたひとつのサーキットに全車種を集め、統括団体の選出したドライバーがそれぞれのステアリングを握って各シチュエーションの走行を担当。性能調整に向けたベースデータを収集する方法が採用されていた。
しかし2019年に向けてはTCR規定車種数の増大と、データ分析技法の進化、エンジンブースト圧調整などBoP調整方法の多様化などを受け、2019年に新たな公認を取得する車両のみがテスト参加の対象とされた。
そのモデルは1月に北米デトロイトでワールドプレミアとなった『ヒュンダイ・ヴェロスター N TCR』を筆頭に、『Link&Co 03 TCR』、『アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR』、『ラーダ・ベスタ・スポーツTCR』、そして『ルノー・メガーヌR.S. TCR』の5車種が指定されている。
このうち、中国・吉利汽車(ジーリー)グループのブランドである『Link&Co 03 TCR』と、先のヒュンダイ製新型クーペモデルのみがブランニューマシンとなっており、前車は現在ジーリー・グループ傘下、ボルボの元ファクトリーチームとして活動したポールスター・シアン・レーシングが今季のWTCR投入を目指して開発・投入するモデルとなっている。
残る3車種は、このオフシーズンの間に大幅な改良やアップデートが施されたEVOモデルとなっており、新たに2019年の追加公認を行ったことでBoPテストへの参加が決まった。
このBoPテストは2月17日にスペイン・バレンシア近郊に位置するサーキット・リカルド・トルモで実施され、新たに認定された各車の性能は「既存のTCR各車のパフォーマンスシートと追って比較調整される」こととなり、静的チェックの形で全車の性能調整が実施される。
さらにこのBoPにはサーキット・テスト以外の項目も含まれ、エンジン出力、最大トルク、ブースト圧の各エンジン性能は2月初旬にイタリア・モデナ近郊のORALエンジニアリングの所有するダイナモメーター・ベンチで計測され、ダウンフォースとドラッグの車体空力性能は1月28~29日にイタリア・ピエモンテ州グリルアスコの著名な自動車工房“ピニンファリーナ”の所有するウインドトンネルで計測評価が行われる。
このBoPテストによって確定した性能調整の初期値は、TCR規定を採用するすべてのカテゴリーで採用されなければならず、開幕時点では全シリーズが統一したBoPスペックを用いる。その後は、トラック上のパフォーマンスや各シリーズのレギュレーションに従って、シーズンを追うごとにサクセスバラストやブースト圧調整などが、各選手権規則によって追加されていくことになる。