2019年01月27日 10:52 弁護士ドットコム
「会社の昼休みにホットプレートで焼肉したらめっちゃ怒られた」。こんな体験談がネットの掲示板に投稿された。
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投稿によると、火災報知器が鳴らないように、窓を開けて焼肉をしようとしたところ、注意をされたという。結局、居づらくなって、退職することになってしまったそうだ。
投稿者は「あかんなら服務規程に書いとけや」と憤っているが、一般的な服務規程に照らし合わせると、投稿者の行為はどこに問題があるのか。杉浦智彦弁護士に聞いた。
「昼休みは労働から完全に解放されている時間です。たとえば、昼休みに会社を抜け出して買い物に行くことも原則として自由です。
しかし、休憩時間だからといって、なんでも許されるわけではありません。事業所内にいる場合は、たとえ休憩時間といえども、職場の秩序を乱してはいけません。
労働者が守るべき職場の秩序を定めているのが、就業規則のなかにある『服務規程(服務規律)』と呼ばれるものです」
一般的な服務規程にはどのようなことが書かれているのか。
「服務規程には、『遵守事項』として、守るべきものが列挙されています。一般的な服務規程には『許可なく仕事以外の目的で会社の施設を使うな』とか、『酒気を帯びた状態で仕事するな』という具体的な事項だけではなく、『労働者としてふさわしくないことをするな』みたいなことも書かれています。この遵守事項に違反すると、懲戒事由に該当しますので、処分されることになります」
ホットプレートでの焼肉の場合、どうなのか。
「ホットプレートでの焼肉は、火災報知器が発動しなくても、どうしても煙が出て臭いが充満したり、油が飛び跳ねたりします。投稿者の行為に対して怒った人がいたように、やはり、仕事に集中できなかったり、打ち合わせに支障が生じたりして、嫌な気持ちになる従業員もいるのだろうと思います。
たとえ『社内で許可なく焼き肉をするな』ということが服務規程に書かれていなくとも、そのような他の従業員の気分を害し、仕事に支障を生じさせる点では、許可なく焼き肉をすることは、『労働者としてふさわしくない』ということで、服務規程違反になるのではないかと思います。
以上のとおり、今回の焼肉は、服務規程に違反し、懲戒事由に該当します。ただ、初めて発覚した場合であれば、懲戒処分としては、せいぜい戒告(≒叱られる)が限度で、減給や解雇などは行き過ぎでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
杉浦 智彦(すぎうら・ともひこ)弁護士
神奈川県弁護士会所属。刑事弁護と中小企業法務を専門的に取り扱う。刑事事件では、特に身柄の早期解放に定評がある。日本弁護士連合会中小企業法律支援センター事務局員としても活躍。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:http://www.ypartner.com/