トップへ

『3年A組』上白石萌歌演じる景山澪奈とは何者か? 放送重ねるごとに深まる謎を探る

2019年01月27日 06:12  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 菅田将暉主演ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)が毎週日曜夜22時半より放送中だ。本作は、卒業式の一週間前に、3年A組担任の柊一颯(菅田将暉)が、クラスの生徒全員を人質にとって教室に立て籠る学園ミステリー。主演の菅田が、生徒を人質にとる謎だらけの美術教師役を演じ、数カ月前に突然この世を去ったかつての学園のスター「景山澪奈」(上白石萌歌)の“死の真相”について、1人の教師が29人の生徒を人質にとり、最後の授業を行う。


 回を重ねるごとに、景山澪奈とはいったいどんな人物だったのか、そしてクラスの生徒との関係性が浮き彫りになっていく。1話毎に各クラスメートから見える「景山澪奈」像はそれぞれ異なることが分かってくるのがこのドラマの楽しみの一つ。そこで今回は、現在3話まで放送されている中で、各回の中心生徒であった永野芽郁、川栄李奈、鈴木仁らが演じるクラスメートから見える景山澪奈という人物をまとめてみたいと思う。


 このドラマの最初の鍵となるのが、永野芽郁演じる茅野さくらと、川栄李奈演じる宇佐美香帆との複雑な三角関係。当初、茅野は、水泳部のスターである景山の熱狂的なファンだった。盗撮とも言える、大量の景山の写真を持っているところを本人に見つかってしまうも、景山の素晴らしい“エロさ”を必死に伝え、「面白いね、友達にならない?」と言われて以来、2人で買い物に行ったり、腕を組んで下校をしたりする親友となる。


 ある時「私のことどう思う? 私はさくらに似ていると思う」と言う景山に対し、茅野は「澪奈は、天上天下唯我独尊。『私は私。文句ある?』タフネスの代名詞じゃん。方やいつもビクビクしながら周りの顔色を伺う(私は)風見鶏、まさに月とスッポン。澪奈は最強」と答える。すると景山は「良かった、私は強くありたいと思ってたから。そう見えてたならいいんだ」とどこか寂しそうに笑いながら答え、景山が本当の自分を偽っているかのようにとれるシーンがある。景山は周囲からのイメージと実際の自分とのギャップに苦しんでいたのかもしれない。


 景山のドーピング疑惑の報道から、クラスでは景山に対するイジメが始まる中、茅野は景山から「私とさくらは違う。だからもう二度と話しかけないで。さくらとは友だちになれない。」という手紙をもらう。涙が滲んでいたその手紙はSOSであったにも関わらず、それ以来景山を避けるようになった茅野は「澪奈が自殺したのは私のせい」という結論に達するも、自殺の理由を景山から直接聞いたと言う柊は不正解を言いわたす。おそらく手紙に関しては、別の理由の危険があったのか、もしくは茅野がいじめの巻き添えになることを遠ざけるためだと推測される。景山は、友達を思いやりながらも自身の辛さ・孤独を打ち明けられずにいたのだ。


 一方、宇佐美香帆(川栄李奈)は、景山と茅野が仲良くなる以前からの友達。学校の帰り、宇佐美はてんとう虫のマークが入ったハンカチを景山にプレゼントしたあと2ショットの自撮りをし「この画像アップするね。またフォロワー増える」と言う。それに対し景山は「なんで私と一緒にいるの?」と質問。宇佐美は「そりゃ自慢の友達だし。やっぱ全国レベルって偉大だわ」と言うと、フォロワー数を稼ぐために利用されていると思ったのか、ハンカチを返し景山は一人去っていく。この場面でも、友人が自分の“中身”を見てくれないことへの景山の孤独が伝わってくる。


 そしてある時、宇佐美が一緒に帰ろうと誘うと、「先約があるから」と茅野と一緒に腕を組んで帰っていく。クラスでは影で「奴隷」と呼ばれる茅野と一緒に帰ることは自分への当て付けかと思い、宇佐美は景山を憎むようになる。


 SNSで執拗に悪口を書き込む、景山の水着を切り裂く、自宅の窓ガラスを割る……など散々嫌がらせを行い、ドーピング疑惑の元ネタである、捏造された景山の動画をネットに上げたのも宇佐美だ(本人は制作には関わっていないが)。


 嫌がらせに気づいた景山は「もうやめて」と懇願するも、宇佐美は「なら死んでよ。あんたが死んだらやめてあげる」と抑えきれない感情が爆発。それが自殺の原因だと考える宇佐美だが、柊は「景山はお前を恨んでいなかった。むしろ自分のせいだと言ってた。何も言わず香帆を拒んで、ちゃんと伝えていれば良かった。友達が欲しかったって。私は香帆とは本当の意味で友達になりたかったって」と言い聞かせる。そして茅野は景山からもらったてんとう虫のマークが入ったハンカチについて「私の大切な友達が好きなキャラクターなんだ」と言っていたことを告げ、「澪奈はずっと友達だと思っていたんだよ、あなたのこと」と言い、本心を知った宇佐美は泣き崩れる。


 景山の友人であった宇佐美も茅野も、景山の本心に気づけなかったのだ。『3年A組』は、たとえ友人であっても、その人が何を考えているのか全てを分かることはできないと説くかのようだ。だが、例え全てに気づけなくても、景山は2人を決して憎んでいなかったことが同時に分かる。


 そして第3話では、鈴木仁演じる里見海斗がフェイク動画を撮影をしていたことが判明。その理由は、景山に告白を断られた逆恨みだった。ただ、里見は動画を撮影しただけで、編集はしていないと主張。撮影を指示したのが誰か、それを究明するのが第4話となっている。


 大抵、物語の序盤はミスリードを誘う伏線が多いため、茅野や宇佐美にまだ秘密がある可能性もある。今のところ聖人のように扱われている景山だが、1話で景山の表と裏を表現したような2枚の肖像画があったことで、クラスメイトの知らない何らかの「闇」があったことも予想される。ただこのドラマは、景山の謎以上に柊の謎が深いだけに、自殺の原因はドーピング疑惑でなく、もっと深い何かがありそうだ。今後どういった形で関係を繋いでいくのか、物語を見守って行こう。


(文=本 手)