森達也が著書『A3』全文を無料公開した。
ドキュメンタリー監督で作家の森達也。オウム真理教を題材にした1998年公開のドキュメンタリー映画『A』、その続編『A2』といった作品や、ゴーストライター騒動の渦中にあった佐村河内守を題材にしたドキュメンタリー『FAKE』などで知られるほか、『放送禁止歌』『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい:正義という共同幻想がもたらす本当の危機』といった多数の著書も発表している。
『A3』は2010年に刊行されたノンフィクション。オウム真理教事件の裁判を題材にしたもので、東京地裁で著者が傍聴した麻原彰晃の「異常な裁判」を端緒に、オウム事件以降の日本社会を浮き彫りにした作品だ。『第33回講談社ノンフィクション賞』を受賞。
無料公開はnoteで実施。公開に至った想いを綴ったテキスト『「A3」無料公開にあたって』もあわせて発表した。その中で森は、版元と編集者、文庫本の解説を書いた斉藤美奈子、イラストレーターの山本重也らの理解と協力を得て、無料公開実現に漕ぎ着けたことを明かしている。
『「A3」無料公開にあたって』は以下のように結ばれている。「僕の転機はオウムだ。地下鉄サリン事件をきっかけに映画を撮り、本を書き、そして今がある。でも興味の焦点は、実はオウムそのものではなく、オウムによって激しく変化した日本社会だ。そしてその変化は、今もまだ続いている。むしろ加速している。だから間に合う。まだ間に合う。遅すぎることは絶対にない。事件は地続きで今に続いている。読んでほしい。知ってほしい。気づいてほしい。その思いで公開します」。