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NHK大河『いだてん』題字&ポスターは横尾忠則、タイトルバック絵は山口晃

2019年01月25日 18:11  CINRA.NET

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横尾忠則が手掛けた『いだてん』のポスタービジュアル
■宮藤官九郎脚本、近現代が舞台の異色の大河ドラマ

宮藤官九郎脚本のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』が、1月からスタートした。

日本初のオリンピック選手・金栗四三役を中村勘九郎、1964年の東京オリンピックを組織委員会事務総長として成功に導く田畑政治役を阿部サダヲが演じ、ダブル主演を務める本作。「日本で初めてオリンピックに参加した男」「日本にオリンピックを招致した男」――この2人を主人公に据え、明治時代と第2次世界大戦後の東京を行き来しながら物語は進行する。

舞台は近現代で、合戦シーンもない。森山未來とビートたけしがそれぞれの時代で演じる古今亭志ん生の語りを通して2つの時代を繋ぐという異色の大河ドラマ。中村勘九郎、阿部サダヲ、綾瀬はるか、生田斗真、勝地涼、役所広司、森山未來、神木隆之介、松尾スズキ、ビートたけしといった豪華キャストが次々登場し、宮藤作品ならではの軽妙なテンポで話が展開していく。

■題字とポスタービジュアルは、1964年東京オリンピックのデザインチームの一員でもあった横尾忠則

オリンピックという題材や落語を用いた展開など、大河ドラマファン、キャスト・製作陣のファン以外にもアピールする点の多い本作だが、宣伝ビジュアルやタイトルバックに参加している美術作家たちにも注目したい。

放送開始前から発表されている通り、本作の題字とポスタービジュアルのデザインを手掛けたのは横尾忠則である。

番組の担当プロデューサーは横尾の起用理由について「1960年代に感じるとてつもない時代のうねりや高揚感を“今”の感覚で表現できるのは横尾忠則さんしかいませんでした。1964年東京オリンピックのデザインチームの一員であり、現在に至るまで世界を刺激し続けてきた横尾忠則さんのエネルギーが『いだてん』には必要でした」と明かしている。

『いだてん~東京オリムピック噺~』では、日本が初めてオリンピックに参加した1912年のストックホルムから、1964年の東京オリンピックが実現するまで激動の半世紀が描かれる。1964年の東京オリンピックに実際にデザイナーとして携わっていた横尾は、番組オフィシャルサイトのインタビュー内でマラソンや落語をテーマに取りいれた宮藤の脚本の独自性や、主演の1人・中村勘九郎に賛辞を送りつつ、「正直『これは僕の仕事だな』と思いました。ほかの人に依頼されなくてよかったですよ」と述べている。

題字は「いだてん」の平仮名4文字の上に、3本足の紋様を1つずつ配した大胆なデザイン。ドラマのタイトルバックでは実際に4つの3本足がくるくると回転している。「三脚巴」「トリスケル」と呼ばれる、古代からヨーロッパに伝わる紋様を取り入れ、足の速い神様「韋駄天(いだてん)」を表現しているのだという。

金色の背景が印象的なポスタービジュアルにも回転するイメージが用いられている。こちらは日本初のオリンピック選手であるマラソンランナー・金栗四三役を演じる中村勘九郎のランニングフォームが円を描くように何重にも重ねられたデザインだ。走る中村勘九郎の様々な表情と無数の足の中央に、横尾が「あえて入れた」という、『いだてん』の時代にはないはずのペットボトルを持った勘九郎の姿が目を引く。

■タイトルバックには山口晃が描いた東京の街並みの絵

ドラマのオープニングを飾るタイトルバックは、東京の街並みを描いた絵と、1964年東京オリンピックの映像や当時の街の様子、そして特撮の怪獣のようなスケールで登場するキャストや選手たちの映像がコラージュされている。映像を彩るテーマ曲を手掛けるのは『あまちゃん』でも宮藤官九郎とタッグを組んだ大友良英だ。

この映像内に登場する東京の俯瞰図のような絵の作者は、画家の山口晃。伝統的な日本の図像と現代的なモチーフを混合させ、大和絵のようなタッチで描いた絵画作品で知られる。タイトルバックでは、『いだてん』の物語にゆかりのある東京の街並みを山口が緻密に描いた。

番組の担当プロデューサーは山口の起用理由について「タイトルバックには、歴史の積み重なりを感じさせる東京全図を盛り込みたいと考えており、これまでの一連の作風から、山口さんがうってつけと考えました。番組の演出・制作・美術のそれぞれの主要スタッフが山口さんのファンだったこともあります」と語る。

タイトルバックの絵では、街並みだけでなく愛嬌ある姿で描かれた人物たちも見どころの1つ。山口の作品は映像を見ていると巨大な絵のようにも感じられるが、原画のサイズは160cm×260cmとのこと。時間や空間を超えて古今東西のモチーフを描く山口の絵は、2つの時代を行き来する『いだてん』のイメージにもぴったりだ。

■タイトルバック映像を手掛けたのは映像作家の上田大樹。市川崑『東京オリンピック』の本編未使用映像も

山口の絵を含むタイトルバックの映像を制作したのは映像作家の上田大樹。ミュージシャンのPVや、いきものがかり、Mr.Childrenらのライブの映像演出、演劇作品の劇中映像などを数多く手掛けている。1月17日に発表された『第26回読売演劇大賞』のノミネーションではナイロン100℃の舞台『百年の秘密』、劇団☆新感線の舞台『メタルマクベス』disc1~3(脚本は宮藤官九郎)の映像でスタッフ賞の候補に選出された。

またこのタイトルバックでは、市川崑監督による1964年東京オリンピックの公式記録映画『東京オリンピック』のために撮影されたフィルムから、映画本編では使用されなかった部分を初めて4K化して使用。時代を超えた映像作家のコラボレーションも実現している。

番組プロデューサーはタイトルバックの制作イメージについて次のように語る。

「オリンピックという切り口から日本の歩んだ近現代を描くドラマですので、スポーツ表現に加え、東京という街に歴史が積み重なっているイメージです。大友良英さんのサンバ調のテーマ曲とも相まって、楽しく面白いタイトルバックになるよう、映像作家の上田大樹さんが製作してくださいました」

全50話、1年間にわたって放送される大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』。物語はまだ始まったばかりだが、毎回流れる題字やタイトルバックにも改めて目を凝らしてみると新しい発見があるかもしれない。