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スバル、社員自殺は「労災」 11歳の長女「パパいじめられ、想像すると悲しい」

2019年01月24日 16:22  弁護士ドットコム

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スバル群馬製作所の男性(当時46、埼玉県)が2016年に自殺したのは、上司の厳しい叱責や過労でうつ病を発症したためだとして、太田労働基準監督署が労災認定していたことがわかった。遺族の代理人が1月24日、東京・霞が関の厚生労働省で会見し明らかにした。


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●「指導とはほど遠い怒声」何度も

代理人の玉木一成弁護士によると、労災認定は昨年8月3日付。男性は1994年入社で、直近はスバル群馬製作所(群馬県太田市)で環境アセスメントや苦情の未然防止などを担当していた。2016年12月19日午前7時40分ごろ、製作所の建物7階屋上から飛び降り、死亡した。


遺族のもとへは2017年1月、製作所に勤める従業員の「匿名有志」から手紙が届き、「上司によるパワハラがあり、長時間労働が常態化していた」旨を明かされたという。


手紙には、「日頃から課長席の前に立たされ、業務関係で幾度も大声で叱られ、7Fの同僚皆の目の前で課長よりパワハラと呼ばれるような説教を受けていた」との記載があった。昇格試験のためとして、指導とはほど遠い怒声を何度も浴びせられていたという。


さらに、残業(時間外労働)を隠ぺいするため、午後5時になるといったん退社手続きをし、そのうえで「席に戻り遅くまで仕事をすることが当たり前のようになっている」とも記されていた。


このため記録上は実働8時間で、残業がないことになっていた。ただ、帰宅前に家族に送ったメールの時間などから推定すると、うつ病の発症前1カ月は残業が「124時間31分」、2カ月が「100時間39分」だったとみられるという。


●労基署、「うつ病」認定

労基署では、男性は亡くなる前に「うつ病」を発症したことを認定。人格や人間性を否定するような発言は認められないものの、課長の机の前で立った状態で数十分にわたり指導・叱責を受け、その状態は特に厳しかったことも認めたという。


また、長時間労働については、遺族側が主張する時間とは差があるものの、亡くなる前の2016年11月14日~12月13日には105時間程度の残業があったことを認定したという。


●長女「胸が苦しくなる」

労災認定は昨年8月だったが、このタイミングでの会見になったのは、労基署に対し、労災認定のもととなる詳細資料の開示請求をしていたため。遺族に資料が開示されたのは昨年末だったという。


会見では、玉木弁護士が、男性の長男(13)と長女(11)が寄せたコメントを代読した。


長男は「パパがいなくなって、さみしくて、今は何も考えられない。会社はパパがいなくなった原因を認めて、二度とこういうことが起こらないようにしてほしい」。


長女は「パパが上司にいじめられている様子を想像すると悲しくて、胸が苦しくなる。会社や上司はこの状況から早く脱したいと思っているだろうが、私は、このような気持ちから死ぬまで一生逃れることができない」と訴えた。


亡くなった男性は実母に向けて残した遺書で、「現状を克服する方法が見つかりません。すべて終わりにするしか、できることがなくなってしまった」と心境をつづっていたという。


●スバル「ご遺族の気持ちに寄り添い、真摯にお話し合いを」

玉木弁護士によると、スバル側は遺族に対し、示談交渉の姿勢を示しているという。遺族は交渉の行方次第で、損害賠償を求めて民事訴訟を起こすかどうか決める方針だ。


スバル広報は取材に対し、次のようにコメントした。


「当社としましては謹んで、故人に深く哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。そして、労災認定されるような事態を防げなかったことに対しては、大変遺憾に思います。


また世間をお騒がせし誠に申し訳ありません。当社としては、適切な勤務時間管理などにより長時間労働の抑制に努めており、管理職に対する教育研修等を通じ、適切な業務指導を行うよう、徹底しております。


今後も従業員の健康確保により一層の配慮をしてまいります。引き続き、ご遺族の気持ちに寄り添い、真摯にお話し合いをしていきたいと考えております」


(弁護士ドットコムニュース)