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満島真之介、豪快さと繊細さを兼ねそねえた“ただならぬ”演技 『いだてん』で飛躍の1年に?

2019年01月24日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 1月6日からスタートした大河ドラマ『いだてん~東京オリンピック噺~』(NHK総合)。これまでひときわ目立っているのが、実際に存在した「天狗倶楽部」の面々ではないだろうか。


 胸にTNGと書いた白いダボダボの野球のユニフォーム、何かあるとすぐ脱ぎ、ビールの栓は歯で抜く。お近づきの印に目上の人にも見境なく酒を薦め、それを断るといきなり胴上げを始める暑苦しい軍団。しかしその実態は、当時実在した名家のトップエリート集団なのであった。


 「天狗倶楽部」の中でも、長髪で白い歯が印象的で、ユニフォームの上に黒い羽織を羽織り、高下駄を履いた吉岡信敬のインパクトはすごかった。彼は「早稲田のヤジ将軍」と言われており、役所広司演じる嘉納治五郎を見て、「嘉納治五郎じゃん」とタメ口で話しかけ、「背負い投げかけてくれよ」とひとり盛り上がり、嘉納を困惑させる。


 この吉岡信敬を演じているのが満島真之介だ。姉の満島ひかりが多くの人を感動させていると感じて自分も俳優を志し、2010年に舞台でデビュー。多くの人に知られることとなった初主演作映画『風俗行ったら人生変わったwww』では、佐々木希演じるヒロインに恋する遼太郎を演じた。


 その映画の冒頭から、汗だくで街の中の電柱に貼られた風俗の広告のシールを凝視する姿の気迫からただならぬものを感じさせた。


 満島は、現代の若者、それも何かしらの悩みを抱えている青年を演じることが以前は多かった。『風俗行ったら~』は、人とのコミュニケーションがうまくいかず、パニックになったら過呼吸になってしまう症状を持ったキャラクターであり、映画『オーバー・フェンス』では、職業訓練校に通う、やはり他人とうまくコミュニケーションを取ることができない青年を演じた。


 NHKドラマ10『紙の月』の原田知世演じる主婦で銀行員のヒロインの、どこかぽっかり空いた心に知らず知らずに共鳴してしまう大学生の役も印象的で、筆者はこちらが満島真之介の持つイメージとして強いのかと思っていたときもあった。


 しかし、最近はどちらかというと、「天狗倶楽部」の吉岡のような、突き抜けたキャラクターのイメージが強くなってきているのだ。


 昨年放送された『田中圭24時間テレビ』(AbemaTV)の中のドラマ『くちびるWANTED』では、語尾に必ずロドリゲスとつけて喋る俳優役を熱演。白い歯で不敵に笑うその姿からは、やっぱりただならぬものを醸し出していたし、この企画の中でも、もっともインパクトを残したひとりになったのではないだろうか。


 そもそも、この「どこかただならぬ」役の原点は、方向性は少々違うが、初主演の『風俗行ったら~』でも感じられていた。そのほかにも、2018年の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)でも、やはりただならぬ雰囲気の元サッカー選手を演じていたし、映画『君が君で君だ』に至っては、好きな女の子が好きな“ブラピに成りきる男”を演じたのだ。そして、満島がただならぬ雰囲気を出すときのポイントは、白い歯を見せて全力で笑っているのに、笑っていないような雰囲気と汗だった。


 2018年から2019年にかけては、この「ただならぬ」感が前面に押し出された作品が多く、見ているものを惹きつけ、大いに話題となっている。だが、満島は『紙の月』のような繊細な役も、また2015年のドラマ『恋愛時代』(読売テレビ系)のような、どこにでもいる普通の人もうまく演じられる役者でもある。『いだてん』のような振り切れた役も楽しいが、繊細だったりごく普通の青年だったり、今後もさまざまな満島真之介の顔を見ることができたらと思う。(西森路代)