STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権で5度のタイトルを獲得し、2018年はSTCCと並行して新設TCR UKでもドライバーズチャンピオンを射止めた名門ウエスト・コースト・レーシング(WCR)は、2019年のSTCCシリーズ参戦を見合わせることを発表。今季は地元のポルシェ・カレラカップ・スカンジナビアのプログラムを推進するとともに、その他のTCRシリーズでの活動を検討するという。
スーパー2000規定やTTAでの時代も含め、通算52勝を挙げ5度のSTCCチームチャンピオンに輝いたWCRは、わずかなブランクを経て2018年にTCR規定2年目となったSTCCにカムバック。3度のSTCC王者経験者であるフレデリック・エクブロムをエースに、アンドレアス&ジェシカのバックマン兄妹を擁してフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRの3台体制でシリーズを戦った。
しかし、このSTCCプログラムは期待したほどの成果を挙げられず、WorldRX世界ラリークロス選手権王者、ヨハン・クリストファーソンのファミリーチームである古豪クリストファーソン・モータースポーツ(KMS)や、セアトとクプラ・レーシングのファクトリーサポートを受ける新興PWRレーシングに水を開けられ、ファルケンベリでエクブロムが記録した2位が最上位となっていた。
その一方でチームは欧州域内の他シリーズでは目覚ましい成功も収め、BTCCイギリス・ツーリングカー選手権ドライバーのダン・ロイドをエースに据えたTCR UKでは、開幕6連勝を決めて初年度のドライバーズタイトルを獲得。
さらにTCRヨーロッパのシーズンフィナーレとなるスペイン・バルセロナ戦では、バックマン兄妹に加えて、イギリスでスバル・レヴォーグGTをドライブする2017年BTCCチャンピオンのアシュリー・サットンを起用するなど、あらためてその存在感をみせつける活躍を演じた。
「チームのクルーとパートナーのモチベーションや“レース勘”を維持するため、国内のポルシェ・カレラカップのプログラムは維持するつもりだが、昨季の成功を受け今季は活動計画を次のステージに移行する必要があると判断したんだ」と語るのは、WCR代表のディック・ジョンソン-ウィグロース。
「我々のチームが正しいリソースを使用してより公正な環境で競争できた場合、TCRヨーロッパ決勝のように欧州でトップを争うチームであることが証明できたと思う。それゆえ2019年はオプションとして、このTCRフィールドでよりコンペティションレベルの高いシリーズに挑戦するべく、スウェーデン(STCC)以外の選択肢を模索する必要があると感じたんだ」
この決断により、昨季はSTCCでエースを務めたエクブロムはそのレーシングキャリアを終える公算が高まり、大ベテランは自身が運営する運輸業に本腰を入れる考えであることを表明した。
「僕はこの新しい生活が気に入っているし、もう(シリーズを追って)あちこちに旅をする生活は終わりにする時期なのかもしれないね」と、地元紙NA(Nerikes Allehanda)の取材に答えたエクブロム。
今年で48歳になるエクブロムはF3000やインディカーで活動したのち、1998年にSTCCへ参戦。その初年度に見事ドライバーズタイトルを獲得したが、そのときの所属チームこそ、このWCRだった。
「WCRがSTCCから離脱することはかなり前から聞かされていたし、僕はレースを離れてノーマルな仕事をスタートさせていて、それを心底楽しんでいた。ここまで何年にもわたって数々のレースカーをドライブしてきたしね」
しかし、同時にエクブロムはレースキャリアの幕を完全に下ろしたわけではなく、2019年のSTCCやその他のカテゴリーに対してもオープンな状態であるとも付け加えた。
「もちろん、条件が正しいことを確認できてSTCCで勝つための環境が整っているのなら、その提案に“ノー”とは言わないと約束できる。しかし、現時点ではそうしたプログラムは見当たらないけどね」
同じく2018年はWCRに所属したアンドレアス&ジェシカのバックマン兄妹は、2019年に向けそろって強豪ターゲット・コンペティションに移籍することを発表。TCRヨーロッパをメインプログラムに、ヒュンダイi30 N TCRをドライブすることが決まった。
「2018年は自分自身の期待値をはるかに上回る成果が手にできた。そのリザルトを得て、このチームに移籍できたことは本当にハッピーだし、2019年が楽しみだよ」と語るのは、TCR UKでランキング3位に入り、クロフト戦では勝利も挙げた兄のアンドレアス。
一方、同じくUKシリーズではブランズハッチ戦で2位表彰台に上がりランク4位に続いた妹のジェシカも、「ドライバーとしてさらに成長できるチャンスに興奮している」と意気込みを語った。
「本格的なレースキャリアとなる2018年をスタートさせたときには、1年後にこうして強豪チームのシートを獲得できるなんて想像もしていなかった。しかもヨーロッパ・シリーズで最高レベルのドライバーたちと戦えるなんて夢のようだし、この成長機会を最大限に活かしたいと思っているわ」