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『トレース~科捜研の男~』船越英一郎を懐柔できるのは小雪だけ? 唯一無二のポジションを確立

2019年01月21日 15:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2000年代のクールビューティーな女優の代表格である小雪は、年齢を重ね、結婚・出産を経験し、最近はクールながらも優しさも滲み出る役柄が似合う役者となっている。今シーズンの月9ドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)では、錦戸亮演じる主人公・真野礼二の暴走をフォローし、新木優子演じる新人研究員・沢口ノンナの成長を温かく見守る法医科長役を好演。小雪ならではのポジションを確立したと言える。


参考:<a href=”https://www.realsound.jp/movie/2019/01/post-305622.html”>『トレース~科捜研の男~』錦戸亮の心の扉を開くのは新木優子? 月9連投で新たな挑戦へ</a>


 小雪のキャリアのスタートは、高校3年生(1995年)の時に応募したファッション雑誌『non-no』(集英社)の読者モデル。その後、専属モデルとして活躍し、170cmの身長と凛とした佇まいで、2000年にはパリコレにも参加するほど注目される。モデルと並行してドラマ初出演を果たしたのが、1998年の織田裕二と香取慎吾の共演で話題となった『恋はあせらず』(フジテレビ系)。日本のトップモデル役としてヒロインを演じ、世間がイメージする美しくワガママな”これぞトップモデル”という存在感を既に見せていた。


 ただ、『恋はあせらず』出演は、新進気鋭のモデルがドラマに抜擢されたパターン。女優としてその存在感を発揮したと言えるのが『池袋ウエストゲートパーク』 (2000年・TBS系)だ。長瀬智也をはじめ、窪塚洋介や山下智久など、次世代を担う役者たちが集結し出世していったこのドラマで小雪は、マコト(長瀬)の実家である真島フルーツのパート従業員になり、後に組長の愛人と判明するミステリアスな役を演じる。この時代の小雪が演じる役柄は、若くしてどこか達観しているような、知的でプライドが高い役が多い印象だが、同世代が集まったこのドラマだからこそ、他とは一線を画すクールな魅力が発揮され、他の役者と同様に女優としてステップアップした作品だと言える。


 クールビューティーすぎるが故に、『池袋ウエストゲートパーク』での役柄のように、どうしてもどこか訳ありであったり、ミステリアスな役にキャスティングされることが多い小雪。しかし、彼女自身が年を重ねるにつれ、『僕と彼女と彼女の生きる道』(2004年・関西テレビ)では、シングルファザーの娘の家庭教師として、母親代わり的な役割を演じていたり、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでも、知人の子どもの面倒を見る役柄など役の幅を広げている。


 30代に入ると、映画『探偵はBARにいる』(2011年)では、密かに復讐を狙うクラブのママ役や、『リーガルハイ』2期(2013年・フジテレビ系)では、交際相手を殺害した美しすぎる死刑囚など、役柄はさらに拡大。目的のために女性の武器を使うも、本音の感情は最後まで抑え、何を考えているか分からない妖艶さと怖さを巧みに演じ、人間らしい悲哀を表現していく。


 そして現在放送中の『トレース~科捜研の男~』では、クールながらも心が広く、若手の行動に理解のあるチームリーダーで、捜査員たちから一目置かれている美人法医科長・海塚律子を演じている。真野のライバルであり、頭の堅いベテラン刑事・虎丸(船越英一郎)をクールに受け流し懐柔する役割は、小雪だからこそ説得力がある。


 原作となる『トレース~科捜研法医研究員の追想~』(古賀慶)では、小雪の役は男性で癒し系ポジションだっただけに、当初小雪が演じることでどうなるかと心配された。しかし、真野をクールにフォローし、時には母親のように優しく見守る役は、原作とは違う解釈で楽しめ、今までのキャリアの中で培ってきたハマり役となっている。なお、新人法医研究員役の新木優子は、現役の『non-no』専属モデルであり女優としても活躍……という、まるで小雪を“トレース”するようなキャリアを歩んでおり、その成長を見守る役という関係性も実に面白い。


 小雪という役者は、役に染まるというより、本人に合った役柄がオファーされ、それに見事に応える役者だ。他とは一線を画すその魅力は、年齢を重ねると共に母親役、上司役など役の幅を広げ、今では唯一無二の存在感のある役者になったと『トレース~科捜研の男~』を観て、改めて感じさせる。 (文=本 手)