フォルクスワーゲンは1月19日、電気自動車(EV)で初のパイクスピーク総合優勝を達成した『フォルクスワーゲンI.D. R』を使い、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおけるEVのレコードタイム更新に挑戦すると発表した。
フォルクスワーゲンのフル電動レーシングカーである『I.D. R』は18年6月、アメリカで開催されたパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにおいて、歴代最速タイムでEV初の総合優勝を達成。その後、同年6月下旬にイギリスで行われたグッドウッド・フェスティバルのヒルクライムでもEVのレコードタイムを樹立している。
そんなI.D. Rが次に目指すのはグリーンヘル(緑の地獄)とも呼ばれるスポーツカー開発の“聖地”ニュルブルクリンクでの電気自動車最速の称号だ。
「パイクスピークで新記録を作った今、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで電気自動車の最速タイムを更新することは大きな挑戦になる」と語るのはフォルクスワーゲンモータースポーツのスヴェン・スミッツ代表。
「ノルドシュライフェのラップ記録は、レーシングカーであれプロダクションカーであれ、すべてのクルマにとって大きな意味を持つものだからね」
I.D. Rの動力はふたつの電気モーターによって生み出され、その最高出力は500kW(約680馬力)に達する。また、車重はドライバー込みで1100kgとなっている。フォルクスワーゲンはこの新たなチャレンジに向けて、マシンに改良を施すともにニュルブルクリンクのコース特性に合わせた最適化を行うという。
最適化の具体案はエアロダイナミクスの変更だ。標高約2800メートルのスタート地点からフィニッシュラインのある4302メートルまで一気に駆け上がるパイクスピークでは、空気の薄い高地でもダウンフォースが得られるよう、マシンに巨大なリヤスポイラーや大型のカナードなどが装備される。
これに対してニュルブルクリンクは同じ山間部ではありながら、海抜320~617メートルとパイクスに比べれば低地であり、さらにコース終盤には約3kmに及ぶロングストレートが待ち受ける。
このためフォルクスワーゲンは今後さまざまなサーキットでテストを実施しながらマシンを改良し、19年夏頃にI.D. Rでのタイムアタックを計画しているという。ドライバーにはI.D. Rとともにパイクスピークを制したポルシェワークスドライバー、ロマン・デュマが起用される予定だ。
なお、19年1月現在ニュルブルクリンク北コースのEV最速タイムは、中国の新興EVメーカーでフォーミュラEに参戦しているNIO(旧NextEV)の『EP9』が記録した6分45秒90。1360馬力を誇るこのモンスターマシンのアタックドライバーは、日本でも活躍したピーター・ダンブレックが務めている。