改めて言うまでもなく、現在のトップチーム同士の戦いは1000分の1秒差を争い、マシンのパフォーマンスはそのタイム差と同様に限りなく拮抗している。F1マシンの性能の90%以上がエアロで決るとはいわれる現在ではあるが、残り10%の開発・性能を外せば、もはや競争にはなり得ない、それが近代F1の現実だ。
2018年は成績的にはメルセデスW09が他を圧倒したのは事実だが、マシン性能面で考えると、W09にこれまでのような他を圧倒するようなアドバンテージは感じられず、多くのサーキットでライバルのフェラーリSF71HやレッドブルRB14に対して苦戦を強いられてきた。
特にフェラーリSF71HとメルセデスW09は極めてパフォーマンスは僅差で、状況が違っていればチャンピオンシップ獲得さえ危なかったかもしれない程だった。
そのなかでも、1/1000秒を争う銀と赤のトップマシン2台はマシンヘの考え方、開発コンセプトは驚くほど違っていた。ここにリヤエンドの写真がある。右側がメルセデスW09で、左側がフェラーリSF71H。写真を黙視すると、すぐに2つの違いが見える。
ひとつはトップウィッシュボーンのアップライト側の付け根(赤丸)。そしてプルロッドの搭載位置(青丸)の圧倒的な違いだ。
左側のフェラーリはL字型のエクステンションブラケット(1)でピックアップポイントを思い切り車体側に寄せていて(3)、メルセデスは逆にホイール面(WL)いっぱいまで外側へと伸ばしている(4)。これはそのままアッパーウィッシュボーン(アッパーアーム)の長さの違いを現している。
そしてプルロッドの取り付けも、フェラーリは短いウィッシュボーンであるのに対し、メルセデスはアップライトのマウントブラケット(2)に直に取り付けられている。プルロッドはフェラーリが短く角度(α)も立っているが、メルセデスはかなり寝ているのが特徴的だ。
単純に考えればフェラーリはストロークを大きくメルセデスは小さく設定しているわけだが、この違いは両マシンのエアロコンセプトに起因していると言える。フェラーリはレーキ(前傾)角を、メルセデスはフラットフロアでのエアロでの追求した結果なのだろう。
また、ブレーキダクトフィン(5、6)もドライブシャフトセンター(DCL)を中心に上下に分かれて搭載されている。タイヤ周りとフロアディフューザーへのアプローチの違いが明確だ。
これほどコンセプトの違いがあっても、コース上で争うのは1/1000秒。これがF1テクノロジーの凄まじさと言うわけだ。