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松本穂香×伊藤健太郎W主演で新たな試み 冬の定番「JR SKISKI」にみる“スマホを意識したCMの形”

2019年01月20日 13:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 冬の定番CMとしてすっかり定着した「JR SKISKI」シリーズ。90年代にスタートし、途中何度かの休止を挟みながら2012年に本格的に復活。「青春は、純白だ。」という印象的なキャッチコピーとともに本田翼を起用したことを皮切りに、翌年から川口春奈、広瀬すず、平祐奈&山本舞香、桜井日奈子といった、その時々の人気若手女優を相次いで起用してきた。前シーズンはJRの誕生30周年ということに合わせて、30年前に流行した映画『私をスキーに連れてって』の映像を使ったリバイバルCMで注目を集めたが、今年は再び若者に向けたCMへと回帰。それと同時に新たなチャレンジに漕ぎ出したのだ。


参考:<a href=”https://www.realsound.jp/tech/2019/01/post-305955.html”>『今日から俺は !!』や『紅白』の影響も TikTok『ホット』『人気急上昇』楽曲を考察</a>


 今年イメージキャラクターとして白羽の矢が立ったのは、NHKの朝ドラ『ひよっこ』で注目を集め、『この世界の片隅に』(TBS系)やYouTubeドラマ『#アスアブ鈴木』など話題作に相次いで出演している松本穂香。さらに、男女W主演ということで『今日から俺は!!』(日本テレビ系)や映画『ういらぶ。』など2018年にブレイクを果たした伊藤健太郎も抜擢。このシリーズで男性俳優がイメージキャラクターとして就任するのは復活後初めてではあるが、“共演”としては過去に窪田正孝や柳俊太郎、村上虹郎、北村匠海となかなかの顔ぶれが揃っている。


 また、今年の最大の特徴としてあげられるのは、テレビCMを打たずにWebCMとして特化させたこと。実は2011年に一度、テレビCMを打たずにFacebookページを開設したキャンペーンが行われていた。それはおそらく、一番のターゲット層である大学生前後の若者がテレビから離れ、インターネットが主な情報収拾手段になっていたからだろう。しかしながら、狙いほど大きな効果を得られなかったのか、翌年からテレビCMを復活。前述した人気女優の起用や、SEKAI NO OWARIやback numberといった注目アーティストの楽曲も
相まって人気シリーズへと成長していったのだ。


 それから数年を経て、満を持してWeb特化へと漕ぎ出した背景には、言うまでもなくインターネットとテレビの垣根が本格的になくなったということがあるのだろう。パソコンはもちろんのこと、スマホで動画を観るという行為が当然なものとなり、特に若年層ではその傾向が著しい。


 実際、現在配信されている「JR SKISKI 2018-19 WEBムービー」を観てみると、スマホでの再生を意識した縦型の映像で、普通の若者たちがスマホのカメラで思い出を記録しているというようなナチュラルな映像に仕上がっている。スノーレジャーという日常から離れた空間そのものを、日常的なガジェットを介して映し出すことで、ドラマティックな演出を必要としない。これまでのCMの流儀と逆行した発想は、実に魅力的に映える。


 とりわけ映画やドラマでは幅広い演技を披露し、いずれも個性的なキャラクターを演じることを得意としている松本と伊藤の2人が、映像の中ではいたって普通の若者として自然体に映し出されていることは、スノーレジャーが身近なものだと思わせると同時に、2人の新たな表情を引き出す働きをしていると見え、イメージキャラクターとして充分すぎるほどの適性を発揮している。今後、このような若者向けの商品・商材から順を追って、CMというメディアはテレビから離れていくことになるのは間違いないだろう。 (文=久保田和馬)