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SHOWROOMのカラオケ機能は革命的? AKB48Gの配信と著作隣接権問題から考える

2019年01月19日 15:12  リアルサウンド

リアルサウンド

 SHOWROOMが、12月18日より新たにカラオケ機能をリリースした(参照:http://showroom.co.jp/news/2018/12-19.html)。通信カラオケDAMを展開する株式会社第一興商との提携で、初のライブ配信プラットフォームへのカラオケコンテンツ提供となる。


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 この機能を使えば、ライブ配信中に約8万曲の中から選曲し、カラオケを披露することができる。実際の機器同様に音量や歌声のリバーブも調整可能。SHOWROOMのトップページを開くと、「人気」「アイドル」のカテゴリに並び、「カラオケ」が配置されており、多くのユーザーがオンライブでカラオケ配信を行っている。SHOWROOM代表取締役の前田裕二氏も、「SHOWROOMでいつでもどこでもカラオケができるようになります!最高 第一興商50余年の歴史の中で初めて組もうと思った民生の相手だと言って頂き、爆速で協業が実現しました」とツイートしており、このことがいかにライブ配信における革命的な出来事かが分かるだろう。2016年にMixChannelが、カラオケ機能を実装した例は過去にもあるが、楽曲数においてSHOWROOMの比ではない。


 実際、SHOWROOMとカラオケ配信には、著作隣接権を巡るもどかしい歴史がある。例えば、ライブ配信中にスマートフォンからアーティストの楽曲を流したり、カラオケ店や事務所にあるカラオケ機器でカラオケ配信をするためには、全てレコード会社やカラオケ事業者の許諾が必要であった(現在も、SHOWROOMの「権利に関するガイドページ」には「音楽に関する権利」として記載がある)。ここでは、AKB48グループのライブ配信を例に挙げるが、以前よりゲーム機器のソフトでカラオケ配信を行っていた指原莉乃は、始める前にスタッフへ連絡し許諾を取るところまでも映していた。さらに言えば、AKB48グループには、「AKB48グループと坂道シリーズの楽曲を歌うことはOK」という縛りがあり、それはカラオケはもちろん、無伴奏で口ずさんだ場合にも適用される。無意識的にあるアーティストの曲を歌ってしまい「あれ……?」と“BAN”すれすれで、冷や汗をかくということもしばしばだ。


 そんなライブ配信の状況に一筋の光が射したのが、昨年6月よりスタートした番組「猫舌SHOWROOM」内の指原が担当する「指カラ-sashikara-」(以下、指カラ)。そのタイトル通り、指原が“秘密のカラオケボックス”を用意し、毎回何かしらの繋がりがあるメンバーを招待する番組だ。初回には、HKT48から宮脇咲良、村重杏奈、田中美久、矢吹奈子(現在、宮脇、矢吹はIZ*ONE専属)が出演。田中は一青窈「もらい泣き」を熱唱し、宮脇はももいろクローバー「ココ☆ナツ」を選曲し、メンバー4人ではしゃぎ回った。注目は、当時から画面端に表示されていた「カラオケ音源協力:第一興商 DAM」の文字で、今思えば12月の機能リリースに先駆けての番組だったようにも思える。


 現在も「指カラ」は人気番組としてAKB48グループメンバーを中心に継続しており、「カラオケ」機能連動イベントとしては「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」決勝進出者によるカラオケ配信、よしもと芸人限定「歌上手芸人決定戦」などが開催されている。アマチュアアカウントの場合は、限定イベントへの参加のみのカラオケ機能使用となるが、公式アカウントではイベントの参加に関わらず使用可能。アイドルだけでなく、芸人、シンガーソングライターなど、まだまだ無名のユーザーが夢を掴むために、日々しのぎを削っている。


 下北沢や新宿、渋谷……と今でも路上ライブを行うアーティストは多くおり、厳しいルールももちろんあるが、画面越しには伝わらない生音が確実にある。一方で、ライブ配信の長所は、気軽に視聴者を集められること、コメントで会話を楽しむことができることだ。視聴者数2~300だとしても、ライブハウスに換算すれば下北沢SHELTER、渋谷La.mamaのキャパシティ同様の人数を集めたことになる。物販で会話するのはハードルが高いが、画面越しでは緊張せずにコメントすることができる。


 現在、無数のライブ配信アプリが生まれており、多くのユーザーがデビューを目指し、画面の向こうの視聴者に向かって語りかけている。そんな状況で生まれたSHOWROOMのカラオケ機能。著作隣接権を気にせず歌えることは、ほかライブ配信に比べての大きな差別化である。夢追い人にとってのプラットフォームの一つであるSHOWROOMの土壌が、さらに充実したものになったのは確かだ。(渡辺彰浩)