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社会病理もひっそりとにじみ出る 『メゾン・ド・ポリス』安定したキャスティングと王道の安心感

2019年01月19日 06:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 メゾン・ド・ポリスのおじさんたちとチームを結成することになったひより(高畑充希)。それでもまだ“ひよっこ”刑事の彼女に充てられた事件は、自宅のトイレで死亡しているのが発見された独居老人。硫化水素が充満した密室で遺書も発見され、自殺として処理されそうになるものの、どこか違和感を覚えるひより。「自殺」「密室」このふたつのキーワードが刑事ドラマに登場するとなれば、それはすなわち「殺人事件」とイコールのようなものだ。


参考:あらゆる対比が不思議なバランスで成立 高畑充希『メゾン・ド・ポリス』はユニークなドラマに?


 1月18日に放送されたTBS系列金曜ドラマ『メゾン・ド・ポリス』第2話。すでに放送が始まっている今期の民放連ドラの中では、人気作の続編である日本テレビ系列の『家売るオンナの逆襲』と並び、初回視聴率12.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の好スタートとなった本作。その理由はやはり、安定したキャスティングと同時に王道かつオールドファッションな刑事ドラマの方程式に則ったストーリーテリングから生まれる安心感に他ならないだろう。


 先週の第1話の際にも触れた通り、現代的なテーマと古典的な空気感が程よく入り混じり、不思議なバランスを保って成り立っている本作。今回も「独居老人」と「生き甲斐」という現代的なキーワードから、PTA内での不倫とそれをエサにした恐喝が事件の引き金になるという実に明確な動機付け。またSNSが狭小なコミュニティーの噂の出どころになるなど、ありとあらゆる要素が詰め込まれていく。


 そんな中で興味深いのは、真犯人である森元妙子(白羽ゆり)が、ママ友たちからの羨望を集めようとSNS上に虚飾の投稿をしているくだりだ。夫と思しき人物と写っている写真に違和感を覚えた夏目(西島秀俊)は、その人物の瞳を拡大。その場所で撮られた写真ならば写るはずのない景色が写っていることを発見する。合成写真を投稿し幸せであるように見せかけていた森元が、問い詰められて告白する「フリー素材の知らない男」という、かなりのパワーワード。終盤で伊達(近藤正臣)が「虚構の生活」と表現するそんな投稿もまた、一種の“生き甲斐”になってしまっている社会病理がひっそりとにじみ出ている。


 ところで今回のラストシーンで、ひよりが夏目に語る「警察が自殺だって思ってても、自殺じゃないことってあるんですね」という言葉。第1話でも回想シーンで登場したひよりの父・尚人(水橋研二)のことだろうか。ホームページの説明では「大手ゼネコンに勤務していた。20年前、建設現場で転落死した」とだけ書かれている。本作が本当に王道中の王道の筋書きを突き進むのであれば、この転落事故が自殺で処理され、それに疑問を抱いたひよりが刑事になったという背景、そしてその加害者たる人物ないしは組織との対峙が、ドラマ全体のクライマックスとなることだろう。(久保田和馬)