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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『ミスター・ガラス』

2019年01月18日 17:32  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、意外にも骨折未経験のリアルサウンド映画部の島田が『ミスター・ガラス』をプッシュします。


参考:<a href=”https://www.realsound.jp/movie/2018/12/post-292631.html”>菊地成孔の『アリー/ スター誕生』評:完璧さのインフレーション</a>


・『ミスター・ガラス』


 そのどんでん返しの展開や奇妙なストーリーで「シャマラニスト」とも呼ばれる、熱狂的ファンを持つシャマラン監督の新作、しかも『アンブレイカブル』のその後を描くということで話題を呼んでいた本作。


 『アンブレイカブル』は非凡なIQと生涯で94回骨折した過去を持ち、スーパーヒーローに憧れるミスター・ガラスに、「お前はスーパーヒーローだ」と告げたられた不死身の男デヴィッド・ダンが恐怖と葛藤の中で真実を見つける姿を描いた。さらに本作では、同じくシャマラン監督作『スプリット』に登場した多重人格者・ケヴィンも加わり、シャマラニスト垂涎の作品となっている。


 俳優の豪華さも魅力の一つだ。サミュエル・L・ジャクソン、ジェームズ・マカヴォイ、ブルース・ウィリスの3人のエキセントリックな競演は決して観る人を飽きさせない。


 MCUシリーズ、DCシリーズなど「スーパーヒーロー」が活躍する映画はここ数年かなりの賑わいを見せている。しかし本作はそんな「ヒーロー」映画の様相を保ちながら、同時にその熱狂や狂騒にクレバーな視線を向けるダークさやサスペンス的展開が繰り広げられ、これぞシャマラン! と思わずニヤニヤしてしまう作風となっている。


 本作における舞台は、人里離れた精神病棟にほぼ限られており、分かりやすいスペクタクルをギリギリのところで回避する。それが故に、その世界観は他の「ヒーロー」映画にはないリアリティのあるものとなっている。


 もしかすると、シャマラン監督が続編である本作を作り上げた意図はそこに隠されているかもしれない。コミック・カルチャーは今までサブカルチャー、カルトであり、マニアックなものであった。だがMCUシリーズのブレイクなどに伴い、それは広くマスへと普及。CGを駆使し、スペクタクルに溢れる映画の数々……だが、そのプロダクションがリッチになり、ストーリーは分かりやすさが重視される故に、観客は「スーパーヒーロー」とはフィクションであるとある種の距離を覚える。シャマラン監督はミステリアスかつリアリティのある本作を投げかけることで、そのスーパーヒーローと鑑賞者の開いた距離を取り戻そうとしている……と感じるのは考え過ぎだろうか? (文=島田怜於)