トップへ

パトロンからの2000万円、横領と判明…知らなかった私、返さないとダメ?

2019年01月18日 10:12  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

男性が会社から横領して、私に貢いでいました。もらってしまった私には、どのような影響があるのでしょうかーー。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


【関連記事:夫のカバンから減っていく「避妊具」 個数チェックは浮気の証拠になる?】


相談者は、その男性を「パトロン」と呼びます。パトロンの男性は相談者に2000万円もつぎ込んだそうです。しかし相談者は「横領されたお金で支援されていたことは全く知りませんでした」と、戸惑っています。


投稿者は横領を知って男性との関係を絶ちました。今回、相談者には法的な問題が生じる可能性があるのでしょうか。近藤公人弁護士に聞きました。


●「男性自身が返還を求めることはできない」

ーー女性に対して、男性や会社側が返還を請求してくる可能性はあるのでしょうか


「パトロンの男性自身が女性に対し、不当利得返還請求することが考えられます。しかし、愛人関係を維持するための不法な原因で給付した場合には、返還を求めることはできません(民法708条)。つまり、男性自身が返還を求めることはできません」


ーー横領の被害者である会社側が、女性に返還を求めることはできるのでしょうか


「横領された金銭の返還を求めたいという会社側の感情論は理解できます。しかし残念ながら、会社が女性に対して直接、返還を求めることはできないでしょう。


民法では、他人の財産であることについて、全く知らず、過失もなく売買などの譲渡契約をした場合には、その物の所有権を取得するという規定(即時取得)があります。


プレゼントや資金の支援があった場合、これは、贈与に該当します。贈与も、譲渡契約ですので、女性が所有権を取得しますので、女性には返還義務は発生しません。


ちなみに、盗品等の場合には、即時取得の規定は適用ありませんが、今回は横領事件ですので、即時取得の規定が適用されます」


●過失があれば「返還義務が発生します」

ーー女性は、もらったままで大丈夫ということでしょうか


「いえ、そうではありません。女性に贈与時に過失があれば、返還義務が発生します。具体的にいえば、パトロンの職業や収入からいって2000万円もの貢ぎができないことがわかる場合には、過失を認定される可能性があります」


ーー過失が認定された場合には、返還しなければならない、ということですね。実際に、貢がれた側が返還している例はあるのでしょうか


「返還を命じる裁判例もあります。たとえば、横領事件で妻に返還請求を認めた事件として有名なのが、2001年に発覚した青森県住宅供給公社巨額横領事件、別名『アニータ事件』です。


この時は、夫が公社の資金14億円を横領していましたが、チリ人妻のアニータがチリにて購入したプール付きの豪華邸宅を差し押さえて横領金を回収しています。


チリの法律では、『婚姻中に妻が取得した財産は夫のものである』と定めていたことから、妻名義であっても、差し押さえ、損害賠償金が回収された事例であり、特殊な事例です」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
近藤 公人(こんどう・きみひと)弁護士
モットーは「依頼者の立場と利益を第一に」。滋賀県内では大きな法律事務所に所属し、中小企業の法務や、労働事件、家事事件など、多種多様な事件をこなしている。
事務所名:滋賀第一法律事務所
事務所URL:http://www.shigadaiichi.com/