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「医師も生身の人間」 過労死遺族ら、残業上限「年2000時間」案に反発

2019年01月17日 17:52  弁護士ドットコム

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厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」で、勤務医に年2000時間の時間外労働を認める案が出たことを受け、勤務医でつくる労働組合「全国医師ユニオン」と「東京過労死を考える家族の会」は1月17日、東京・霞が関の厚労省で会見し、反対声明を発表した。


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●年2000時間、誤ったメッセージを与える可能性

年2000時間の案は、あくまでも地域医療を確保するのにやむを得ない場合に限るというのが現状での考え方。月平均に換算すると160時間ほどまで認めることになり、過労死ラインとされる月平均80時間の2倍にあたる。


検討会での議論は今後も続くため、年2000時間の案が了承されたわけではないが、それでもユニオンなどには様々な懸念の声が現役医師や過労死遺族から寄せられているという。


ユニオン代表の植山直人氏(内科医)は「日本の医療は、医師不足を医師の過重労働で補ってきた。医師不足や医師の偏在は医療政策の失態であり、その責任は国がとるべきだ」と指摘。「何の改善策も取っていない医師不足の医療機関に今のままでも問題はないという誤ったメッセージを与える可能性がある」と述べた。


●どれだけ多くの医師が命を落としてきたか

また、東京過労死を考える家族の会で共同代表を務める中原のり子氏(薬剤師)は会見で、20年前に小児科医だった夫を、過労の末の自殺で失ったことを語った。


夫は医師不足の病院で働いており、「馬車馬のように働かされている」と話していたという。中原氏は「最期は、小児科医は誰にも感謝されないという言葉を残して自殺した」と当時を振り返った。


このほかにも、医師になる夢を実現して研修医になったのに過労で自殺したケースや度重なる宿直で連続40時間勤務も珍しくない病院で働き、突然死したケースが実際にあったことなどを紹介。そのうえで中原氏はこう訴えた。


「医師も生身の人間。疲れます。これまで医師の善意の使命感に支えられてきた。どれだけ多くの医師が命を落としてきたか、国をあげて感謝と反省をすることがまず先ではないか」


この日発表された反対声明は後日、根本匠厚労相に提出されるという。


(弁護士ドットコムニュース)