1月11~13日、千葉県の幕張メッセで行われた東京オートサロン2019。このイベントではモータースポーツ界にとっても多くの注目を集めるマシンが展示されたが、行けなかった人のためにも、写真で大きくご紹介しておこう。2台目は、市販車のGRスープラ登場で話題の一台と言える『GRスープラ スーパーGTコンセプト』だ。
17年ぶりに復活した市販のGRスープラは、デトロイトショーで公開されると多くの話題を巻き起こしている。発表会にはマスターテストドライバーでもある豊田章男社長はもちろん、WEC世界耐久選手権にTOYOTA GAZOO Racingから参戦するフェルナンド・アロンソも登場。全世界的に公開されるCMもWECのドライバーたちが登場するなど、モータースポーツのイメージをつけられてデビューすることになる。
すでにGRスープラには、2018年3月のジュネーブショーで公開されたWECのLM-GTE規定に合わせたGRスープラ・レーシングコンセプト、そして20年からNASCARエクスフィニティシリーズに参戦するスープラと、2種類のレーシングバージョンが存在するが、東京オートサロンでお披露目されたのは、2020年からGT500に投入されるGRスープラ スーパーGTコンセプト。今回の発表では、来季からの参戦が“明言”された。
ちなみに余談だが、もし2020年のGT500にGRスープラ、ニッサンGT-R、ホンダNSX-GTという3車がそろうと、スープラ、GT-R、NSXという名がすべてそろうのはJGTC全日本GT選手権時代の2003年以来となる。
さて、今回の東京オートサロンで展示されたGRスープラ スーパーGTコンセプトだが、現在のGT500で採用されている車両規定では、前後フェアリング、そして車軸中心を繋いだ“デザインライン”の上面は市販車のシルエットを使わなければならず、その下部は自由に開発することができる。
ただあくまで今回の車両はコンセプト。デザインライン下部は、2016年まで使用されていたレクサスRC Fのものなのは外観上間違いないだろう。リヤウイングは16年までは幅の狭いものだったが、ここだけ17年からのものを取り付けていると思われる。車内にはロールケージもあり、今にも走り出しそうな出来映えだが、16年までのRC Fに、GRスープラのボディをかぶせたコンセプトモデル……と推測される。
上面のボディについてはGRスープラの形状となっているが、こちらも発表された市販車のものと比べると大きく異なる。これはGT500で採用されるクラス1規定の特徴で、市販車のボディ形状によって有利、不利がないように、巧妙にディメンションを合わせなければならないのだ。実際現行のレクサスLC500やニッサンGT-R、ホンダNSXも市販車と並べると巧妙にサイズや形状が変化しているのが分かる。当然、GRスープラの特徴でもあるショートホイールベースも、このGT500では他車種と同じになる。
それでも、ボディからはGRスープラらしい特徴も見て取れる。印象的なノーズ、2シーターらしい小さなキャビンはGRスープラらしいものだ。目立つのはリヤウインドウ後端からリヤウイング下に向け伸びているリヤスポイラー。JAF-GT500規定にはリヤスポイラーについて「トランクリッド上面に車体前後方向中心線から左右それぞれ575mm、前車輪軸中心から3,725mm、フラットボトム底面から80mmの範囲に設置することができる」とされており、これまでの車種にもスポイラーはついているが、これほど大きいものは今までにない。キャビンが後方に向け絞り込まれるGRスープラならではだろう。
また、ダブルバブルルーフと呼ばれる両サイドが膨らんだ形状のルーフも特徴的。ちなみに、規定ではルーフにはドライバー救出サポート用のハッチを開けなければならないが、今回のGRスープラ スーパーGTコンセプトには確認できなかった。
いずれにしても、今回のGRスープラ スーパーGTコンセプトはあくまで“コンセプト”と判断した方がいいだろう。20年のデビューに向けては、新たな2020年規定に対応するほか、現行のレクサスLC500で培われ、さらに進化したデザインや空力が採用されるはずで、コンセプトモデルとは大きく変わってくるはずだ。今はこのモデルで、来季に向けた想像を膨らませるときだ。
「スープラのスーパーGT参戦復活を待ち望んでいただいているファンの皆様と、新たな伝説を共有できるよう、努力してまいります」とTOYOTA GAZOO RacingはGRスープラ スーパーGTコンセプトについて触れている。かつてJGTCで多くの名ドライバーたちがともに伝説を築いてきたスープラの名の復活は、まだプロローグと言えるだろう。