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Spotify、“直接音源をアップロードできる”新機能で音楽シーンに与える影響とは?

2019年01月14日 23:11  リアルサウンド

リアルサウンド

 昨年9月Spotifyは、“アーティストが直接音源をフリーでアップロードできる“という新機能をβ版として公開した(参照)。このβ版は、主にアメリカを拠点とした一部のインディーアーティスト限定で提供中。近い将来、正式な機能導入が見込まれている。また、同機能によってレーベルやディストリビューターを介さずに音源を配信できるということもあり、インディーアーティストからの期待も高まっている。


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 では、Spotifyのこうした動きは音楽シーンにどうような影響を与えるのだろうか。デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。


「レーベルやディストリビューターを通さずに直接Spotifyに楽曲データがアップロードできることで、アーティストはSpotifyと直接的なつながりを感じることでしょう。Spotifyは、アーティストとの関係を強固にするためにも、できるだけ仲介を減らしていきたい。また、同機能によって、インディーアーティストがグラミー賞を受賞したり、音楽チャートで1位を獲得するチャンスは増えると思いますし、インディーズへの注目度も高まるのではないでしょうか」


 では、すでに類似したサービスを行っているSoundCloudやBandcampといった音楽共有サービスは今後どうなっていくのだろうか。


「Spotifyは同機能をグローバル化させていくと思いますが、SoundCloudやBandcampも残り続けると思います。理由の1つとして、SoundCloudやBandcampは無料で聴ける曲が多いという点が挙げられます。特にSoundCloudは、プライベートでも曲を公開できるという機能もあります。一般公開する前に、レーベルに楽曲を聴いてもらったり、DJに音源を渡すことも可能。Spotifyは、あくまでもSoundCloudやBandcampのやり方を模範したという形なのだと思います。そのため、人によっては、SoundCloudやBandcampの方が相性がいいということも十分にあるでしょう」


 最後に、同氏はSpotifyの新機能への期待をこのように語った。


「Spotifyに直接アップロードできることで、許可なくサンプリングした楽曲が増えるのではないかという懸念はあります。しかし、今後Spotifyではそうした権利問題も整備されていくのではないでしょうか。今回の機能では、Spotifyは曲の著作権を事前に確認するため、アーティストに対してリリース5日前に楽曲を投稿してほしいと説明していますが、将来的にはより精度の高い独自の著作権管理システムを持つかもしれません。また、Spotifyがアップロード自由化に踏み込んだことは、インディーズのミュージシャンにとって勇気を与えることだと思います。今後、こうした機能が世界中に広がっていけたら嬉しいですね」


 期待が高まるSpotifyの新機能であるが、著作権問題など課題もまだまだありそうだ。しかし、サブスクリプションサービスに誰でも音源をアップロードできるようになれば、リスナーたちの音楽に対する造詣が深くなることは間違いないだろう。また、そうしたなかで、次世代を担う若手アーティストたちがどういった楽曲を生み出すのかも非常に興味深い。同機能が、日本でも導入される日を楽しみに待ちたい。(北村奈都樹)